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第6回 ダイハツ「ハイゼットカーゴハイブリッド」
ダイハツ工業は、軽商用車では初めてとなるハイブリッド車「ハイゼットカーゴハイブリッド」を発売しました。当初は改造車扱いとし、近日中に型式認定を受ける予定で、そのため公式燃費は発表されていません。ダイハツでは、まず官公庁や地球環境に関心の高い企業を中心に拡販を目指すとしています。


 ●ハイゼットカーゴハイブリッドの車両概要

軽商用車「ハイゼットカーゴ」をベースに、1モーター方式のコンパクトなハイブリッドシステムを採用し、高い走行性能と優れた燃費・低排出ガス性能を両立しながら、ベース車同様に4名乗車、広々荷室といった高い商用機能を実現しています。そして、使用頻度が高い軽商用車のジャンルで、より効果的な環境対応とクリーンエネルギー車の普及を図ろうというものです。


 ●ハイブリッドシステムの概要

  このハイブリッドシステムは、薄型モーターを660tツインカムDVVT(ダイハツバリアブルバルブタイミング機構=可変バルブタイミング機構)付き3気筒12バルブエンジン(EF-VE型)と電子制御式4ATの間に配置した1モーター方式のコンパクトなシステムを採用しています(写真1,図1,2)。
  基本的には,ホンダのハイブリッドシステムのようにモーターを発進時や加速時のアシストに使用するタイプです。ただ使用する部品のバッテリやモーターなどは,系列のトヨタ車用のものをかなり流用しています。

         

         


 ●ハイブリッドシステムの作動

  エンジンでの走行を主体に、減速・制動・降坂時のエネルギーをモーターで回収して発進や加速時にアシストすることで、高い走行性能と低燃費を両立させています(図3)。さらにクルマが停止時には、エンジンを自動停止させるアイドリングストップシステムも採用しており、特に市街地での燃費を向上させています。制御内容を、少し詳しく説明します。

  エンジン始動時やアイドルストップからの再始動時には、図4のようにハイブリッドモーターを駆動することで、エンジンをクランキングしてエンジンを始動します。またハイブリッドバッテリの残量低下時やシステム故障時などでは、通常のスタータを用いてエンジンを始動します。
  発進時や加速時には、図5のように走行状態およびハイブリッドバッテリの状態に応じてハイブリッドモーターが駆動をアシストします。これでエンジン負荷が軽減され、燃費が向上します。ハイブリッドモーターのアシスト量によってコンビネーションメーター内のモーター駆動動作ゲージが点灯します(写真2)。
  減速時には、図6のようにハイブリッドモーターを発電機として作動させ、減速エネルギーを電気エネルギーとして回収(回生)してハイブリッドバッテリに充電します。回生量に応じてコンビネーションメーター内のモーター回生動作ゲージが点灯します。また回生量は ハイブリッドバッテリの充電状態,クルマの走行状態,ブレーキペダルの操作量に応じて制御します。

   

 ●主な構成部品の概要

  @ハイブリッドモーター:空冷式の交流同期電動機です(図7)。駆動(アシスト)および発電(回生)の働きを行なうほか、エンジンを始動する機能を持っています。エンジンとトランスミッションの間に配置され、ステータは3相巻線のステータコイルで構成され、モーターケースに固定されています。永久磁石を配したロータは、クランクシャフトとトルクコンバータに直結されています。ロータの回転を検出するための回転センサ(レゾルバ)と内部温度を検出するためのモーター温度センサが設けられてモーターの状態を掲出しています。
  Aハイブリッドバッテリ:ニッケル水素バッテリを後席下に搭載しています(図8)。7.2Vのバッテリモジュールを30個直列に接続してDC216Vの電圧を発生します。また電池ECU、システムメインリレー、電流センサなどをバッテリアセンブリ内に配置しています。万一バッテリモジュールから水素ガスが発生した場合に備えてバッテリモジュールの排気口から車外への排気ホースを設定しています。なお、整備時に高電圧を遮断するサービスプラグが設けられています。これを抜くことで、高電圧回路が遮断され、整備時の安全性を確保します。
  Bパワーコントロールユニット(PCU):荷室前方下(室外)に設置されており、インバータとDC-DCコンバータ、モーターECUを内蔵しています(図9)。インバータは、6個のトランジスタで3相ブリッジ回路を構成しています。この3相ブリッジ回路をモーターEGUで制御して直流電流と交流電流の交互の変換を実施して、モーターの駆動および発電を制御しています。またDC-DCコンバータは、システムで使用されているDC216VをDC12Vに降圧して補機バッテリに充電しています。





 ●その他

  市街地での燃費向上のためにアイドリングストップ機能を備えていますが、アイドリングストップには諸条件が成立することが必要で、ひとつでも条件を満たさないときはアイドリングストップは実施されません。
  また、ダイハツ工業独自の開発になる長寿命のインテリジェント触媒を採用して低排出ガス性能の向上を図っています。


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