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第14回 トヨタエスティマハイブリッドシステム
 トヨタ自動車鰍ヘ、このほど世界初のハイブリッドミニバン「エスティマハイブリッド」をフルモデルチェンジしました。

 従来のTHS-C(ハイブリッドシステムにCVTを組み合わせたシステム)+E−Fourから基本的にはハリアー(クルーガーV)ハイブリッドと同じTHS-U+E−Fourシステムに変更されました(図1)
図1.エスティマハイブリッドシステムの新旧比較図。新型は基本的にはハリアーハイブリッドと同じで、エンジンが異なるだけ。
(すべての図は、クリックすると拡大します。)

 ●トヨタのハイブリッドシステムの復習

 すでに第1回にハリアーハイブリッドを解説しましたので、ここでは復習のつもりでご覧ください。トヨタのハイブリッドシステムは、@エンジンの動力機械的に車輪に伝えて走行するモード、Aエンジンの動力で発電を行いモーターで走行するモード、Bエンジンを停止させてモーターのみで電気自動車として走行するモードを走行状態に応じてもっとも効率がよくなるように制御します。これによって、既存のガソリンエンジン車の約2倍の燃費向上と低エミッションを実現し、電気自動車のような航続距離の制約もなく外部充電も不要というシステムです。
 THS-Uでは、HVバッテリとモーターおよびジェネレータ間の電圧を増圧変換する昇圧コンバータを採用したため、モーター、ジェネレータを高電圧(245V→650V)で駆動することができるようになりました。これで小電流での電力供給による電気損失を抑えられ、かつモーターの高出力化も実現しています。
 またハイブリッド車の4WDシステムE−Fourは、リアユニットの駆動にフロントのモーターで発電した電力を使用するもので、さまざまな走行状態において最適な前後駆動トルク配分を行います。

 ●エスティマハイブリッドの特徴

 前輪の駆動にTHS-Uを、後輪の駆動に電気式4WDシステムE−Fourを採用しています(写真1、図2)。駆動用電圧を上昇させて使用する昇圧システムの採用によって、前後モーターとも高出力・高効率を実現し、エンジンと効率的に協調させることで、日常生活におけるさまざまな走行状況で、高い燃費性能(20.0q/l。10・15モード燃費)と動力性能、安定したトラクション性能を確保しています。


写真1.エスティマハイブリッドは、バンパー・グリル・エンブレムおよび前後スポイラーを専用デザインとして個性を表現している。

図2.エスティマハイブリッドのシステム構成部品配置図。HVバッテリの搭載位置が大きく異なる。


 エンジンは、ハイブリッド車用に開発された2.4l直列4気筒ガソリンエンジン(2AZ-FXE型)で、アトキンソンサイクルを応用した高膨張比サイクルを採用して熱効率を高め、低燃費化を図っています(写真2、図3)。


写真2.エスティマハイブリッドのエンジンルーム。右上の白く見えているのがコンパクト化されたパワーコントロールユニット。

図3.エスティマハイブリッドにはアトキンソンサイクルを応用した高膨張比サイクルを採用した2.4lエンジンが採用されている。


 そのほか、@低エミッション、A軽量コンパクト、B低騒音・低振動、C高信頼性、Dサービス性などの特徴を持っています。
このシステムの他システムとの大きな相違は、ミニバンという室内空間を活かすためHVバッテリの配置位置を変更していることです。エスティマのガソリン車では前席運転席と助手席間はウォークスルーができるようになっていますが、このハイブリッドではこの間にセンターコンソールを設け、中にHVバッテリモジュールを2段積みにして収納しています(写真3、図4)。そのため2列目以後のシートアレンジなどの多用途性は標準ガソリン車と変わりません。センターコンソールには、HVバッテリモジュール以外に、DC-DC(システムメインリレーやレジスタを含む)、電池監視ユニット、ジャンクションブロックおよびクーリングファンを格納しています。また高電圧回路の遮断を行うサービスプラグも設定し、さらにサービス性を考慮してバッテリモジュールを上下1段ずつ分散して取り外せるようにしてあります。


写真3.センターコンソールにはHVバッテリパックが内蔵されている。前席のウォークスルーは犠牲になったが、2列3列のシートアレンジは標準車のまま利便性が高い。

図4.センターコンソール内に内蔵されているHVバッテリパック。


 ●エスティマハイブリッドの作動

 ハイブリッドシステムの作動は、第1回のハリアーハイブリッドの作動とエンジンがV6から直4に変わるだけで相違はありません。参考のために図5に一覧として示します。
図5.エスティマハイブリッドの作動


 ●その他の特徴

 @センターメーター内にもエネルギーモニターを配置(写真4、写真5)。従来のトヨタのハイブリッド車には、ナビゲーションシステムと共有したエネルギーモニターが採用されていました。このエスティマハイブリッドでも同様にナビゲーションシステムと共有していますが(写真6)、ナビ自体を使用している場合には見ることができない不便さがありました。そこでこのエスティマハイブリッドでは、センターメーター内でも監視することができるようにしました。
 A初めて排気再循環システムを採用しています。これは従来捨てられていた排気ガスの熱エネルギーをヒーターやエンジンの暖機に再利用して、冷間時の暖房性能の向上や燃費の向上を図るものです(図6)。

写真4.エスティマハイブリッドの運転席まわり。センターメーターにはハイブリッドシステムの作動状況が表示される。

写真5.センターメーターの拡大図。ハイブリッドシステムのエネルギーモニターを内蔵している。ナビはナビとして活用できる。

写真6.ナビゲーションディスプレイにも従来どおりエネルギーモニターを表示できる。

図6.捨てられていた排気熱を利用した再循環システムを初めて採用。寒冷時のヒーターやエンジン暖機に効果的なシステム。