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第15回 ダイハツソニカの新CVT(無段変速機)
 ダイハツ工業鰍ナは、このほど軽自動車用CVT(無段変速機。Continuously Variable Transmission)を自社開発・生産して新型軽乗用車「ソニカ」に搭載しました(写真1)。
写真1 走りの質感を高めたソニカは爽快なドライブが楽しめる。

 ●CVTの特徴とメリット

 ご承知のとおり、CVT(無段変速機)は変速ギアを使わずに無段階での変速ができるようにしたトランスミッションです。二つのプーリー(滑車)にベルトを通してプーリーの径を変化させることで連続的な変速ができるベルト式が主流を占めています(図1)。
 このCVTの特徴は、常に理想的な変速比を保てるのでパワーロスが少なく、優れた燃費性能を発揮することができることです。また走行状態に合わせて最適な変速比へと無段階で変速できるので、変速ショックのないスムーズな走りを実現します。さらにAT(オートマチックトランスミッション)車のシフトアップやキックダウンに伴うタイムロスやエネルギーロスのない滑らかな加速ができます(図2)。

図1 ベルト式CVTの概念図。1対のプーリーの径を変化させることで変速する。
(すべての図は、クリックすると大きくなります)


図2 アクセル全開時のエンジン回転数の推移比較。AT車のような段がつかない。


 ●新型CVTの特徴

 新開発されたCVTの特徴は、なんといっても世界で初めて「インプットリダクション(入力減速&逆転)方式3軸ギアトレーン構造」を採用したことです。図3に従来型4軸式ギアトレーンを採用したCVTとの構造比較図を示します。
 このインプットリダクション方式とは、無段変速の前段階でリダクションギアよってエンジンからの入力回転を減速・逆転させることで、次のようなメリットを得ています(写真2)。
 @回転の遠心力でベルトが張り出して生じる伝導損失が減少し、動力伝達効率が向上します。
 A無段変速の後段階での減速が不要になるので部品点数が削減(4軸から3軸へ)できます。
 B無段変速部のエンジン軸上の等価慣性を低減できます。
 このようなメリットが発生しますので、従来のAT車との比較で燃費が約15%向上しました。ソニカでは、ターボエンジンとの組合せにもかかわらすクラストップレベルの10・15モード燃費23.0q/L(2WD車)を達成しています。また3軸としたことと世界最小金属ベルトの組合せでコンパクト化ができ、等価慣性の低減とベルトの組合せで加速がスムーズになっています。ダイハツの従来AT車に比較して加速性能は約10%向上しているとのことです。

図3 従来型CVTと新型CVTとの仕組みの違い。軸の数を1本減らせたのでコンパクト化を実現。


写真2 新型CVTのベルトおよびリダクションギア部のアップ。


 ●新型CVTの構造と作動

 新型CVTの構造と作動を、少しくわしく説明しましょう(図4)。
 構造として、インプットシャフト部にトルクコンバータとオイルポンプを配置し、前進・後退切換機構としてプラネタリギアを配置しています。またギアトレーンは、1対のプーリーと金属ベルトから構成される無段変速機構部/デファレンシャルドライブギア/デファレンシャルリングギア/デファレンシャル機構部などで構成されています。
 動力は、トルクコンバータ→インプットシャフト→プラネタリギア→プライマリプーリー→金属ベルト→セカンダリプーリー→デファレンシャルドライブギア→デファレンシャルリングギアの順に伝達されます。そして、変速は油圧を制御することで溝幅が変化するプーリーによって金属ベルトの巻き掛かり径を変化させて無段階に行います(図5)。
 図6にDレンジ時の動力伝達経路を示します。また図7にRレンジ時の動力伝達経路を示します。リダクションギア部のリバースクラッチの接続の有無で前進・後退が決定されていることが理解できるでしょう。
 そのほか、一部スポーツ系のグレードには、マニュアル感覚で7速のシフトチェンジが行えるアクティブシフトが採用されています。最減速から最増速までの変速比を分割した目標入力軸回転数を設定し、ドライバーのアップダウンシフト操作によって7段の変速比の選択ができます(図8)。なお減速時のダウンシフトは、車速に応じて自動変速制御を行います。ドライバーは、シフトレバーを右側のマニュアルモードに入れ、+側(アップ)、−側(ダウン)に操作することで、変速比を7段階に選択できて、よりダイレクト感のある走りが楽しめます。



図4 インプットリダクション方式3軸ギアトレーン構造の新型CVTの断面図。


図5 新型CVTの動力伝達経路。


図6 Dレンジ時の動力伝達経路。


図7 Rレンジ時の動力伝達経路。

図8 7速シフトマチック制御の目標入力回転数モデル図。