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第17回 日産VQ35HR/VQ25HRエンジン
日産自動車鰍ヘ、このほど力強い走りとトップレベルの高い環境性能を両立させ、高回転まで吹け上がるFR専用の新世代V型6気筒エンジンの「3.5L VQ35HR」 および 「2.5L  VQ25HR」 を新開発しました(写真1、2)。このエンジンは、近々発売が予定されている新型スカイラインに搭載されます。
(すべての図・写真はクリックすると大きくなります。)

写真1.新型VQ35HRエンジンのカットモデル正面。油圧式CVTC吸気側および電磁式CVTC排気側を設定。

写真2.新型VQ35HRエンジンのカットモデル後面。ストレート吸気ポート、左右対称ツイン吸気システム、等長エキゾーストマニホールドなどを採用。


 ●V型6気筒VQエンジンの変遷

 1988年軽快に吹け上がることに焦点を絞ったフェザー(FEATHER)コンセプトエンジンが先行開発され、初代VQエンジンは、鳥の羽のように軽やかに軽く滑らかに吹け上がるエンジンとして誕生しました。その後新技術を投入して、常に時代をリードしながら進化してきました。この間米国ワーズ社の10ベストエンジンに唯一12年連続で選出されるなど、世界でも高い評価を得てきました。


 ●現行VQエンジンからの変更点

 新型エンジンに採用された部品の約80%以上は、現行エンジンから変変更されています。

 主な変更点は、次のとおりです。シリンダブロック高さアップ、シリンダヘッド変更、ストレート吸気ポート採用、チェーンカバー剛性アップ、油圧式CVTC吸気側設定、電磁式CVTC排気側設定、オイルポンプロータ変更、オイルパンアッパー&ロア剛性アップ、クランクピン径アップ、冷却水流れ改善、ツインノックセンサ採用、左右対称ツイン吸気システム採用、エンジンカバー吸音材採用、ロッカカバー剛性アップ、非対称ピストンスカート採用、等長エキゾーストマニホールド採用、高着火性イリジウムプラグ採用、コンロッド長延長、水素フリーDLCバルブリフタ採用、バルブスプリングバネ力アップ、クランクジャーナル径アップ、ピストンリングPVD処理実施、ラダーフレーム設定、スパークプラグM12化、圧縮比アップなどです。


 ●新型VQエンジンの特徴

 新開発V型6気筒エンジンは、時代をリードする「軽く滑らかに吹け上がるエンジン」を目指し、開発は主要寸法の見直しからスタートしています。VQエンジンのDNAを継承したうえで、高回転・際立ったアクセルレスポンスを意味するHR(High Response、High Revolution)を付加して命名されました。
 
以下に新型エンジンが目指した性能のいくつかを紹介します。

 @軽快で気持ちのよい走りの実現
 このために高回転まで吹け上がるエンジンを目指し、最高回転数を7500rpmまでに高めることに成功しました(図1参照)。これは高回転時のフリクション低減、振動抑制を図ることで達成していますが、よりスムーズなピストン運動(フリクション低減)の実現とシリンダブロックにラダーフレームを追加(剛性アップによるクランクシャフトの振動抑制。写真3)を行っています。

 よりスムーズなピストン運動を実現するために、コンロッド長を延長し(写真4)、ピストンの倒れを小さくしてフリクションを低減しています(図2)。また非対称ピストンスカート形状として、面圧の小さい側のスカート幅を小さくしてフリクションを低減しています。

 A気持ちのよい加速音の実現
 このために加速とともにリニアに伸びていくクリアな加速音と濁った音を低減しています。また左右完全対称吸排気システムを採用することで、クリアで高回転での迫力あるサウンドを実現しています。

 Bクラストップレベルの高出力の実現
 このために吸気・排気・燃焼効率を向上(吸気抵抗18%低減、VTCの吸気+排気両側採用、排気損失の抑制)しています。吸気抵抗の低減のためには、左右対称のツイン吸気システムを採用し、かつストレート吸気ポートを採用して、十分な空気を効率よく吸い込むようにしています(写真5。スロットルバルブも左右に独立して設けている)。

 またCVTC(Continuously Variable valve Timing Control。連続可変バルブタイミングコントロール)を吸気および排気両側に採用することによって、自由度の高いバルブタイミングの設定ができるようになり、低回転から高回転の全域で燃焼効率を向上させています。排気損失の抑制のためには、等長エキゾーストマニホールド(写真6)および左右対称排気システムを採用しています。

 VQ35HRエンジン搭載車の動力性能は、パワフルな出足に加え、7500rpmまでストレスなく長く持続して伸びていく加速感が味わえるように設定しています。なお現行エンジン搭載車に比べて、0−100q/hのタイムは1秒以上速いという社内データーが記録されています。

 C実用燃費の向上
 40項目以上に及ぶ燃費向上アイテムを採用し、実用燃費を10%向上させています。燃費向上対策としてのエンジン関係の主なアイテムは、非対称ピストンスカートの採用(写真7)、軸受け鏡面仕上げ、油圧式CVTC吸気側設定、電磁式CVTC排気側設定、ピストンリングPVD処理、ツインノックセンサ採用、冷却水流れ改善、32ビットマイコン制御、圧縮比アップ(VQ35HRで10.6。現行10.3)、スパークプラグM12化、高着火イリジウムプラグ(写真8)、長放電イグニションコイル、水素フリーDLCバルブリフタ、バルブスプリングバネ力アップ、クランクジャーナル径アップ、微粒化フューエルインジェクタなどのアイテムが上げられます。なかでも世界初の水素フリーDLC(Diamond Like Carbon)コーティングバルブリフタは、カムとバルブリフタ間のフリクションを40%低減します。

 Dクラス最高水準の排気規制対応
 エンジン始動直後の炭化水素(HC)対策のために触媒の早期活性化などを図っています。超低ヒートマス担体触媒を採用して触媒活性時間を短縮(350〜400℃で活性化)しており、また早期活性化型A/F(空燃比)センサ制御システムを採用して始動直後から理論空燃比制御ができるようにしています。そのほか、エンジンから排出されるエミッションを低減するためには、微粒化インジェクタや高着火性イリジウムスパークプラグなどが貢献しています。

1.現行VQ35DEと新型VQ35HRエンジンの出力比較。


図2.フリクションを低減するためにコンロットを延長してピストンの倒れを縮小。


写真3.新型VQ35HRエンジンのラダーフレーム付きシリンダブロック。


写真4.新型コンロッド(左)と現行コンロッド(右)。コンロッド長を延長してピストンの倒れを縮小。


写真5.吸気抵抗を低減するためにストレート吸気ポートを採用。


写真6.新型等長エキゾーストマニホールド(下)と現行エキゾーストマニホールド(上)。


写真7.新型ピストン(左)と現行ピストン(右)。非対称ピストンスカートで面圧の小さい側の幅を縮小。


写真8.新型イリジウム電極スパークプラグ(左)と現行白金電極スパークプラグ(右)。