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第21回 日産スカイラインの4輪アクティブステア(4WAS)
 日産自動車鰍ェ昨年末に発売した「スカイライン」には、従来のスーパーハイキャスに変わり、「4輪アクティブステア(4WAS)」機構が採用されました。これは日産独自の世界初のシステムで、「350GT」にメーカーオプションとして採用されています。

12代目のスカイライン350GTにメーカーオプションで世界初の4輪アクティブステア(4WAS)が採用された。


 ●4輪アクティブステアの主な特徴

 このシステムは、ステアリング操作に対する前後のタイヤの切れ角を車速に応じて自動的に調整し、低中速では思いどおりの、高速では安定した滑らかで無駄のない走りを実現しています。そのため、街中やワインディングでクルマがキビキビ動くので運転しやすく、またクルマが安定するので高速道路でレーンチェンジする場合にも安心して運転でき、さらにハンドルの入力に対して応答がよく遅れなく動くので運転が上手になったように感じます。

 ●4輪アクティブステアの構成部品

 図1は、4輪アクティブステアの構成部品配置図で、図2はシステム構成図です。

 構成部品と役割は、次のとおりです。

 @4WASフロントコントローラ(写真1)は、各センサの信号によって4WASフロントアクチュエータを制御しています。万一電気系統および機械系統に異常が発生した場合、フェイルセーフ機能によって前輪はステアリングホイール回転分の切れ角となり、後輪の舵角は停止します。また高負荷状態および過熱状態が続いた場合やフロントコントローラに入力信号が入力しない場合(バッテリ電源が一時的な異常時)は、保護機能で一時的に4WASシステムを停止状態にします。なお4WAS通信線で4WASフロントコントローラと4WASメインコントローラは、最適な4WASシステムの制御を行うために、双方ともに送受信を行っています。

 A4WASフロントアアクチュエータ(図3、写真2)は、前輪舵角を駆動しています。ステアリングホイールを操舵すると4WASフロントアクチュエータもともに回転します。これは4WASフロントロックソレノイドバルブ(ロック機構)、前輪舵角センサ、4WASフロントモータ、ギアシャフト、スパイラルケーブルから構成されています。4WASフロントロックソレノイドバルブは、4WASフロントコントローラで制御され、4WASフロントアクチュエータをロックまたは非ロック状態にします。アクチュエータに強い力(回転方向)が加わった場合、ロック機構部(ホルダ)が力を吸収してロック状態にします。前輪舵角センサは、フロントモータの回転角を検出し、フロントモータはフロントコントローラからの指令値で回転数を制御しています。ギアシャフトは、フロントモータの出力軸で、スパイラルケーブルはフロントモータの動力線と各信号線です。

 B4WASメインコントローラ(写真3)は、各センサの信号で4WASリアアクチュエータと車速感応式電子制御パワーステアリング(油圧を電動ポンプで供給する方式。以下EPS)のソレノイドバルブを制御しています。万一電気系統や機械系統に異常が発生した場合、フェイルセーフで前輪はステアリングホイール分の切れ角となって後輪の操舵は停止します。フェイルセーフ機能時にステアリングの操舵力を維持するために4WASメインコントローラでEPSソレノイドバルブの作動電圧値を制御します(車速信号の異常を検出した場合はエンジン回転信号でEPSシステムを制御する)。またメインコントローラに入力信号が入力しない場合(バッテリ電源が一時的な異常時)保護機能で一時的に4WASシステムを停止状態にします。なお4WAS通信線でフロントコントローラとメインコントローラで最適な4WASシステムの制御を行うために双方ともに送受信を行っています。

 C4WASリアアクチュエータ(図4、写真4)は、後輪舵角を駆動しています。非可逆効率性能を持つハイポイドギアで路面外力に対する後輪のトー剛性の確保を行うとともにシステム故障時に中立を保持します。これはハイポイドギアのほかに、オフセットシャフト、リアモータ、後輪舵角センサなどで構成されています。

図1:4輪アクティブステアシステム(4WAS)の構成部品配置図。


図2:4輪アクティブステア(4WAS)システムの構成図。
(図をクリックすると大きくなります。)


写真1:フロントアクチュエータを制御する4WASフロントコントローラ。


図3:4WASフロントアクチュエータの構造図。


写真2:4WASフロントアクチュエータ単体。


写真3:後輪を制御する4WASメインコントローラ。


図4:4WASリアアクチュエータの構造図。


写真4:4WASリアアクチュエータ単体。


 ●アクティブステアの作動

 車速やステアリングの操舵量に応じて自動的に前後輪を操舵させます。最適な前輪舵角および後輪舵角を制御することで、運転者のステアリングホイールの操作(操舵角)に対して意図したとおりクルマが動きます。車速に応じてステアリングギア比(4WASフロントアクチュエータ)を変え、ステアリングホイールの操作(操舵角)の負荷を図5のように軽減します。

 [低速時]
 住宅地や駐車場での取り回しのような低速(10q/h〜40q/h)時には、少ないステアリングホイールの操作(操舵角)で、図6のように前輪がより大きく切れるので、取り回しが楽になります。

[中速時]
 市街地や幹線道路での走行などの中速(40q/h〜80q/h)時には、少ないステアリング操作で、図7のように前輪が大きく切れ、さらに後輪が同じ方向に切れるので、安定して思った方向にキビキビ曲がります(車のヨーレイトと横加速度の応答性が高まり横滑り角が低減する)。

 [高速時]
 高速道路などの高速(80q/h〜)には、車速が上がるにつれ、図8のようにステアリングホイール操作に対する前輪の切れ角が抑えられ、さらに後輪も前輪と同じ方向に切れるので、レーンチェンジなどでもクルマがぶれることもなく安定した走行ができます。

図5:4輪アクティブステアの効果を示す図。


図6:低速時の4WASの作動状態。


図7:中速時の4WASの作動状態。


図8:高速時の4WASの作動状態。