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 第24回 プジョー207のBMWとの共同開発16バルブエンジン2種
 プジョー・ジャポン鰍ヘ、約8年ぶりに同社の基幹車種である206シリーズをフルモデルチェンジして207シリーズとして発売しました(写真1)。このプジョー207シリーズには、BMWグループとの共同開発された新型1.6Lエンジンが2種類搭載されています。207と207Cieloに搭載されている1.6L自然吸気(NA)直列4気筒DOHC16バルブエンジン(写真2)と207GTに搭載されている1.6Lターボチャージャー付き直噴式直列4気筒DOHC16バルブエンジン(写真3)です。

写真1.自然吸気エンジンを搭載したプジョー207Cieloの外観(5ドア)と直噴ターボチャージャー付きエンジンを搭載した207GT(3ドア)の外観。



写真2.自然吸気1.6LDOHC16バルブエンジンを搭載したエンジンルーム。全域連続可変型バルブタイミング&リフト機構、可変容量オイルポンプなどを導入している。

写真3.ツインスクロールターボチャージャー付き1.6L直噴式DOHC16バルブエンジンを搭載したエンジンルーム。電子スロットルも採用している。



 ●1.6L自然吸気EP6型エンジンの概要

 このエンジンは、力強く洗練されたトルク特性(図1)、静粛性、低燃費、軽量化、排出ガスのクリーン化など、ガソリンエンジンに求められる要素を格段に進化させたものです。堅牢なリブ構造を持つアルミ製エンジンブロック、全域連続可変型バルブタイミング&リフトシステム、可変容量オイルポンプなど、多くの最先端技術を導入しています。

 このエンジンのスペックは、総排気量1598t、最高出力88kW(120PS)/6000rpm、最大トルク160Nm(16.3sm)/4250rpmで、4速ATと組み合わされます。

 @全域連続可変型バルブタイミング&リフトシステム:エンジンの回転数や負荷に応じて吸気バルブの開閉タイミングとリフト量を連続的に変化させて吸気量を直接制御します。そして排気側の可変バルブタイミング機構に合わせて全回転域での理想的な燃焼を実現しています。すでに市販化されているBMWのバルブトロニックを応用したものです。これによりトルクが向上し、燃費や排出ガスのクリーンに大きな効果を発揮します。

 A可変容量オイルポンプ:クランクシャフトからチェーンを介して駆動されるオイルポンプには流量可変型を新たに採用して、エンジンの状態に応じて必要な量のオイルだけを供給するためパワーロスを防いでいます。従来型ポンプに比べ、160Wの消費電力を削減したので、6000rpm時で最大1.25kWの出力増加を実現して燃料消費率を約1%改善できたとしています。

 BON/OFF切換え式ウォータポンプ:暖機運転時やエンジンの負荷の低いときなど冷却水を循環させる必要がない場合にはポンプの作動を停止させるシステムです。暖機時間が短くなるので燃料消費を低減でき、かつ触媒暖機時間も短縮されるので排出ガスのクリーン化にも貢献します。

図1.自然吸気1.6LDOHC16バルブエンジンの性能曲線図。


 ●1.6Lターボチャージャー付き直噴式EP6DTエンジンの概要

 このエンジンは、自然吸気エンジンとほぼ共通の基本構造に加え、燃料を直接気筒内に噴射する直噴式(ダイレクトインジェクション)を採用し、1.6Lクラスのエンジンとしては、世界初のツインスクロールターボチャージャーを採用しています(写真4,5)。そのため自然吸気の2.0Lエンジンに匹敵するほどのパワーと低回転域での高いトルク特性による優れたドライバビリティを発揮します(図2)。また同時に低燃費と排出ガスのクリーン化も実現しています。

 特に1000rpm時からターボチャージャーが効きはじめて1400rpm時には最大値に達するトルク特性は、このクラスでは味わえなかった動力性能を生み出します。このエンジンは、5速MTと組み合わされ、GTタイプにのみ搭載されます。主なエンジンスペックは、総排気量1598t、最高出力110kW(150PS)/5800rpm、最大トルク240Nm(24.5sm)/1400〜3500rpmです。

 @直噴式(ダイレクトインジェクション)のメリット:このエンジンの最大のメリットは、各気筒の1回の燃焼に必要な燃料の量を正確に制御できることです。高圧燃料ポンプで最大120気圧に加圧された燃料は、シリンダー(気筒)内に直接噴射され、速やかに空気と混じりあって理想的な混合気になります(図3)。また通常の燃料噴射のように吸気ポートの壁面に付着した燃料の燃え残りもなくなるので燃焼効率が高くなって、高出力化と燃費の低減に優れた効果を発揮します。さらにガソリンの気化熱のよるシリンダー内の冷却効果が異常燃焼(ノッキング)を防ぐので、ターボチャージャー付きエンジンにもかかわらず10.5:1という高い圧縮比を達成したことも高出力化を推進しています。

 Aツインスクロールターボチャージャー:排気エネルギー圧力を利用してタービンを回して吸入空気を加圧することで出力を向上させるのがターボチャージャー付きエンジンです。そのターボチャージャーにツインスクロールタービンを採用しています。システム図を図4に示します。これは4気筒の第1とだい4気筒の排気経路を1本に、第2と第3気筒の排気経路を1本まとめて2本の経路を通じて排気をタービンに導きます。そして、それぞれからの等間隔の排気パルス(脈動)がタービンのブレード(羽根)を回して効率的に高過給圧を実現しています。このシステムは、わずか1000rpmから過給効果が立ち上がり、ターボチャージャー付きエンジンの欠点といわれるターボラグをほとんど解消しています。これらに加えて電子スロットルも採用しているので、スポーツカーを思わせるアクセルレスポンスを味わえます。


写真4.ツインスクロールターボチャージャー付き1.6Lエンジンの単体。


写真5.ツインスクロールターボチャージャーの分解図。


図2.ツインスクロールターボチャージャー付き1.6L直噴式エンジンの性能曲線図。非常に速いトルクの立ち上がりが見て取れる。


図3.直噴(ダイレクトインジェクション)式エンジンの構造図。


図4.ツインスクロールターボチャージャーシステムの構成図。