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 第25回 レクサスLS600hのAWDハイブリッドシステム
  レクサス(トヨタ自動車梶jは、レクサスブランドに最高級車として、ハイブリッドセダン「LS600h/LS600hL」を発売しました(写真1、2)。これは次世代の高級車に求められる卓越した基本性能と高度な環境性能を高いレベルで両立したものです。具体的には、新開発のV8・5.0Lエンジンと高出力モーターを新開発のフルタイムAWD(All Wheel Drive)システムを組み合わせた世界初のハイブリッドシステムを採用しています(写真3)。
 これにより従来のガソリン車とは一線を画すハイブリッド車ならではの高い応答性、滑らかで力強い加速感と6L車に匹敵する動力性能を実現しています。

写真1.レクサスLS600hの外観。LS460と大きな変更はないが、さりげなくHYBRIDのロゴが入っている。



写真2.レクサスLS600hLの外観。見た目では分からない程度(120o)ストレッチされた。ホイールベースがその分伸び、後席のレッグスペースもその分伸びている。

写真3.V8 5.0Lエンジンとハイブリッドトランスミッション。


 ●V8・5.0L2US-FSE型エンジンの概要

 このエンジンは、ハイブリッド用に開発されたものですが、第18回で紹介したレクサスLS460に搭載された1UR-FSE型エンジン(V8・4.6L)をロングストローク(6.5o)化したもので、基本的なエンジン構造などは共通です。最先端技術の吸気側VVT-iEを採用した吸・排気連続可変バルブタイミング機構(Dual VVT-i)やD-4S(筒内直接噴射装置)などを採用しているほか、レクサスの最高峰にふさわしい動力性能(最高出力290kW/6400rpm、最大トルク520Nm/4000rpm)を確保しています(図1)。
 環境性能では、VVT-iEの作動角度を最適化するなど、細部にわたり燃費性能を突き詰め、排出ガスについても燃焼改善、触媒性能向上で低エミッションを実現しています。
 また各部品への高い入力負荷に備えて、骨格をはじめ形状を新設計し、高剛性化を図るとともに軽量化を実現しています。さらにハイブリッドの特性に合わせた専用のチューニングが施されています。たとえば、モーターと組み合わされるハイブリッドでは、エンジンの停止・再始動が自動的に行われるので、シリンダの筒内圧が高い状態のまま再始動するとエンジンが大きく振動してしまいます。これを防ぐためにVVT-iEの吸気バルブタイミングを遅らせる制御をして圧縮率を下げ、エンジン始動時の振動を低減しています。またエンジン回転中もVVT-iEのカム位置制御や筒内直接噴射の均一化によって大幅に振動を低減した走行中のノイズ発生を抑えています。このほか、エンジンの振動・騒音を低減するためにクランクプーリにトーショナルダンパーとベンティングダンパーを備えたデュアルマスタイプを採用していますし、マウント自体も振動・騒音レベルを低減させるために最適化しています。
 なおVVT-iEやD-4Sの詳細については、自動車技術トレンド第16回を参照してください。

図1.V8 5.0Lエンジン性能曲線図。
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 ●ハイブリッドトランスミッションの概要

 これはハイブリッドシステム用として新開発されたもので(L110F型)、トランスファー(LF1A型)との結合でAWD化され、2段変速式リダクション機構の採用(GS450hと同じ。自動車技術トレンド第11回参照)で、小型・軽量化を実現し、高い動力性能と低燃費を高次元で両立させた電気式無段変速機です(図2)。
 このトランスミッションも騒音を抑えるため、ギアの歯面形状を最適形状とし、歯面や噛み合わせを精密に仕上げ、歯面を徹底的に研磨して精度を向上させています。また最新の音響解析技術を応用して騒音発生源に専用の防音カバーを設定してノイズの低減を図っています。
 ハイブリッドトランスミッションは、モーター&ジェネレータ、動力分割機構、2段変速式リダクション機構から構成されています(これらの詳細も第11回参照)。ただしモーター性能は、GS450hに比べて最高出力で18kW増しの165kW、最大トルクで25Nm増しの300Nmとなって、大幅な性能向上を実現しています。
 そのほかハイブリッドシステムを構成するパワーコントロールユニット(可変電圧システム。写真4)、Ni-MH(ニッケル水素)バッテリ、回生協調ブレーキも、それぞれに進歩を遂げています。すなわち、パワーコントロールユニットは直流と交流を相互に変換するパワー半導体モジュールの冷却を新構造の両面冷却方式として冷却性能を向上させ小型・高密度化しています。またバッテリは、車室内空気とリアクーラーの冷気を活用した冷却制御で、冷却性能を向上させるとともに小型・高密度化してリアシート後方の荷室スペースに配置しています。さらにこのハイブリッドシステムはAWDを採用しているため、前後輪で回生ブレーキをかけ、油圧ブレーキとの協調制御を行って高い回生効率と、より安定した制動力を確保しています。


図2.ハイブリッドトランスミッションとトランスファーの断面図。電気式無段変速機とトルセンLSD内蔵のトランスファーの組合せ。
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写真4.小型化されたパワーコントロールユニットのカットモデル。


 ●フルタムAWDシステムの概要

 新開発のフルタイムAWDシステムを採用しており、前後輪に動力を配分するトランスファー(写真5、図3)とトランスファーに内蔵されるセンターディファレンシャルに走行条件に応じて最適な駆動力を自動的かつ瞬時に前後輪に配分する新開発のトルセンLSD(図4)を採用しています。このトルセンLSDは、通常走行時に前後の駆動力配分を後輪寄りの40:60とし、走行状況に応じて50:50または30:70の駆動力配分を瞬時に選択します。
 このフルタイムAWDによる優れた走行安定性とAWDに特有のアンダーステアを感じさせない自然なハンドリング特性とVDIM(アクティブステアリング統合制御)を組み合わせることで、より高い予防安全性能と車両安定性を発揮して、あらゆる路面状況においてスムーズな発進・加速・旋回性能と安定感のある走りを実現しています。
 なおトランスミッションのシフト操作で運転状況に応じて8段階のエンジンブレーキ力が選択でき、またアクセルの踏込みに対して、より高い応答性が得られるシーケンシャルシフトを設定しています。これによりドライバーの好みや走行状況に応じて3つの走行モード(ノーマル/パワー/スノー)が選択できるモードセレクトも採用しています。

写真5.トランスファーのカットモデル。


図3.トランスファーの構造図。オイルポンプも一体化されている。
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図4.トルセンLSDの構造と断面図。