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 第27回 トヨタノア/ヴォクシーのバルブマチック搭載2Lエンジン
 このほど発売されたトヨタの5ナンバーのベストセールミニバン「ノア/ヴォクシー」に新開発の2Lガソリンエンジンが搭載されました。搭載されたエンジンは2種で、いずれも環境性能と走りを両立させています。

写真1.バルブマチックを搭載した3ZR−FAEエンジン。ヘッド部分だけが3ZR−FEエンジンと異なる。


 @新開発の2L3ZR−FEエンジンは、カローラシリーズに搭載されている1.8L2ZR−FEエンジンのストロークを延ばして2Lにしたエンジンです(内径×行程=80.5×88.3o→80.5×97.6o)。このエンジンには、吸気と排気のバルブタイミングを最適にコントロールするデュアルVVT−i(吸・排気連続可変バルブタイミング機構)を採用しています(技術トレンド第19回参照)。そのため燃費・環境性能および加速性能を両立しています。
 A新開発の2L3ZR−FAEエンジンは、上記の3ZR−FEエンジンに吸気バルブのリフト量を連続的に変化させ、全運転域で最適に制御するシステム「バルブマチック(VALVEMATIC)」を採用しています。これにより低燃費と力強い加速をもたらすパワーやアクセル操作に対する応答性が向上しています(写真1)。


 ●バルブマチック付き3ZR−FAEエンジンの概要

  吸・排気のバルブタイミングをコントロールするデュアルVVT−iと連続可変バルブリフト機構を組み合わせたバルブマチックを搭載しています。これらを協調制御することで吸気側のバルブタイミングとバルブリフト量の両方を制御することで、大幅な性能向上・低燃費化しています。また可変吸気システム(ACIS)を内蔵したサージタンク一体型吸気管を採用し、その内部に吸気抵抗の少ないロータリ式バルブを採用して、バルブの切換えで低中回転域では吸気管長を長く、高回転域では吸気管長を短く制御して中高速域でのトルク向上を図っています。なお3ZR−FEエンジンと3ZR−FAEエンジンの最高出力と最大トルクは、2WD車で106kW(143PS)/5600rpmと194Nm(19.8sm)/3900rpmに対し、116kW(158PS)/6200rpmと196Nm(20.0sm)/4400rpmとなっています。トルクは目立ちませんが、出力では10kWアップと大幅な性能向上を果たしています。


 ●主要構成部品とその機能

 図1に、このシステムの主要構成部品の配置を示します。
 バルブマチックは、アクチュエータ部およびバルブマチック機構部から構成されています。エンジンコントロールコンピュータからの信号によってアクチュエータがインテークカムシャフト横に搭載されたバルブマチック機構を作動させ、バルブリフト量および作用角を制御します。なお十分なブレーキ制御負圧を確保するためにバキュームポンプを搭載しています。

 @アクチュエータ(写真2):アクチュエータ一体型EDU、ブラシレスモーターおよび差動ローラー変換部などから構成されています。図2にアクチュエータ断面図を示します。アクチュエータは内部にエンジンオイルを循環させてギアの潤滑を行い、扁平ブラシレスモーターにネオジウム磁石を採用して小型化を図っています。EDUからの駆動信号でモーター部が回転運動し、差動ローラー変換部で回転運動を直線運動に変換してバルブマチック機構部を作動させます。アクチュエータの変換部の動きは図3に示すように、モーターからの回転運動がナットを回転させ、ナットがプラネタリギアからピニオン、サンギアおよびリングギアを回転させることによってサンシャフトを直線運動させます。

 Aバルブマチック機構部(写真3):図4のようにアクチュエータの動きを伝えるコントロ−ルシャフト、吸気カムシャフトの動きを伝えるローラーアームおよびカム面を持つ摺動アームなどから構成されています。アクチュエータからの直線運動をコントロールシャフトが揺動アーム内のスライダーに伝えると、ローラーアームがロストパッドの力で押されているため、スライダーの動きは直線運動から回転運動に変換されます。スライダーが揺動アームを回転させ、揺動アームのカム部を連続的に可変させることによってバルブリフト量および作用角を連続可変させます。

図1.バルブマチックの構成部品配置図。アクチュエータ部とバルブマチック機構部から構成されている。図1
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写真2.アクチュエータ部のカット。


図2.アクチュエータの断面図。EDUからの駆動信号でモーター部が回転し、差動ローラー変化部で回転運動を直線運動に変換してバルブマチック機構部を作動させる。
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写真3.バルブマチック機構部(バルブリフト機構)のアップ。


図4.バルブマチック機構部の詳細図。
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 ●バルブマチックの作動

 バルブリフト量および作用角は、アクチュエータによるバルブマチック機構の駆動で制御します。またデュアルVVT−i(写真4)との協調制御で軽負荷時にバルブの早閉じを実現して燃費の向上を図っています。アクセル開度とエンジン回転数でエンジンコントロールコンピュータが目標吸入空気量を決定し、アクチュエータ内のEDUが目標バルブリフト量および作用角を決定します。

 @始動時制御:吸気バルブを下死点で閉じて吸入空気の充填効率を向上させます。
 Aファーストアイドル制御:バルブのオーバーラップによってエミッション(排出ガス浄化)性能を向上させます。
 B暖機前制御:バルブリフト量および作用角を可変して吸入空気の充填効率を向上させます。
 C暖機後制御・低負荷時:バルブマチック制御でバルブリフト量およびバルブタイミングの制御を行い、スロットルバルブを通常のスロットルバルブ制御より開き、吸気管内の負圧を小さくすることでポンピングロスを低減します。
 D暖機後制御・高負荷時:デュアルVVT−iと協調制御を行い、インテークバルブの遅閉じによって実圧縮を低下して点火時期を進角することで、吸入空気の充填効率を向上させて排気温度を低減し、かつ燃費を向上させます。
 E停止時制御:エンジン停止を遅延させ、次回の始動準備を行います。

 なおアクチュエータによってカム面を持つ揺動アームの初期位相を連続的に変化させますが、カム面の使用範囲を連続的に変化させることになります。これによってバルブリフト量および作用角を連続的に可変させます。

 @小リフト時(軽負荷運転時。図5):アクチュエータがコントロールシャフトを引くことよって揺動アームがアクチュエータ側から見て反時計回りに回転し、ローラーロッカーアームを押す量が減ることでバルブリフト量が減少します。
 A大リフト時(高負荷運転時。図6):アクチュエータがコントロールシャフトを押すことによって揺動アームがアクチュエータ側から見て時計回りに回転し、ローラーロッカーアームを押す量が増えることでバルブリフト量が増加します。

写真4.デュアルVVT−iのコントローラ部。



図5.小リフト時(軽負荷時)のバルブマチックの状況。
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図6.大リフト時(高負荷時)のバルブマチックの状況。
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 ●バルブマチックの効果

 吸気バルブと排気バルブの進角・遅角によって図7のような効果が得られます。
図7.バルブマチックの効果(吸気バルブと排気バルブの進角・遅角がもたらす影響)。
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