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 第28回 マツダデミオのミラーサイクルエンジン
 このほどフルモデルチェンジされたマツダの小型乗用車「デミオ」(写真1)は、個性的なデザインと日常での使い勝手を高めるパッケージ・機能性を備えています。同社独自の走りの楽しさを引き継ぎながら、クラストップレベルの燃費性能、安全性・快適性を高い次元でバランスすることを目指して開発されています。すべて新設計されたボディ、シャシによって前モデル比で車重を約100kg軽量化しています。
 また新開発された自然吸気(NA)1.3リッターミラーサイクルエンジン(ZJ-VEM型)とCVT(自動無段変速機)を組み合わせた13C-Vグレードでは、10・15モード燃費23.0q/リッター(国土交通省審査値)を実現して前モデル比で約20%燃費を改善しています。さらにデミオ全車が平成17年基準排出ガス75%低減レベル認定を取得しています。

写真1.フルモデルチェンジしたマツダデミオは個性的なデザインも売り物になっている。


 ●新開発のミラーサイクルエンジン(写真2)

 熱効率を高めて燃費を向上させるには、吸入した混合気を爆発させて、より大きく膨張させれば(膨張比を大きくする)よいのですが、一般的なエンジンでは膨張比=圧縮比なので(図1)、膨張比を大きくすれば圧縮比も大きくなります。しかし、圧縮比を大きくすると異常燃焼(ノッキング)が発生します。これを防ぐためには、圧縮比を小さく抑えながら膨張比だけを大きくできればよく、結果として高い熱効率が得られます。

 ミラーサイクルエンジンは、この難問を解決するエンジンです。吸気バルブの閉じるタイミングを遅くし、圧縮行程の途中から圧縮が始まるようにし、実際の圧縮比を抑えることで、圧縮比<膨張比を可能にしています。ただ低速時のトルクが不足するという欠点があります。13年前のユーノス800に採用されたときは、過給機(スーパーチャージャー)と組み合わせて低速トルク不足を補っていました(図2)。今回は、車体の軽量化とエンジンの力を効率よく使えるCVTとの組合せで、この欠点をカバーしたと開発者は語っていました。


写真2.ミラーサイクルエンジンのカットモデル。


図1.圧縮比と膨張比の関係。
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図2.ユーノス800に採用された当時のミラーサイクルエンジンの断面図。
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 ●ミラーサイクルエンジンに採用されている主な技術(図3)

 @膨張比のアップと吸気バルブ遅閉じ:ピストントップランド形状を変更して、標準の1.3リッター(オットーサイクル)エンジンの圧縮比10:1に対して膨張比を11:1に拡大しています。さらに吸気側カムシャフトのカムプロフィールを変更して吸気バルブのタイミングを遅閉じ(ABDC59°→80°)としてノッキングを抑えながら熱効率を高めるとともにポンピングロスを低減しています。これによって定常・加速走行時とも低燃費を実現しています。ミラーサイクルを採用したエンジンの性能は、最高出力66kW(90PS)/6000rpm、最大トルク120Nm(12.2sm)/4000rpmを発揮しています(図4)。これは標準のオットーサイクルを採用した1.3リッターエンジンにわずかに劣る程度です。

 AS-VT(シーケンシャルバルブタイミング)の使用域拡大:S-VT(連続可変バルブタイミング機構)の作動域を高回転域まで拡大し、S-VT位相角を拡大することで圧縮比の縮小に伴うトルクの低下を最小限に抑えています。

 BCVTとの協調制御:エンジンとCVTの各コントロールユニットが相互通信を行い、常に最適なエンジン運転状態/CVTのシフトパターンをコントロールすることによって燃費とパフォーマンスを高次元でバランスさせています。

図3.ミラーサイクルエンジンを特徴づける膨張比アップしくみと吸気バルブ遅閉じのしくみ。
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図4.デミオのミラーサイクルエンジンの性能曲線図。
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 ●マツダでは初採用のCVTの特徴

 デミオでは、マツダで初めてCVT採用グレードを設定しました(写真3)。エンジンとの協調制御で、プーリー比を走行状況に応じて無段階にコントロールすることで、燃費の向上とリニアな加速フィールを両立しています。アクセル開度が小さい定常走行時や緩やかな加速時などには、プーリー比を高速化してエンジン回転数を下げ、燃料消費を抑えます。一方アクセル開度の大きな加速時には、プーリー比を低速化してエンジン回転数を上げ、大きな駆動力を確保しています(図5)。さらに低速のファイナルギアの採用で、力強くゆとりある加速フィールを発揮します。
写真3.デミオに採用されたCVTのカットモデル。


図5.デミオにマツダで始めて採用されたCVTのしくみ。
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 ●CVTの各種制御内容

 @エンジンとの協調制御:アクセルペダルの踏込み量や車速、路面勾配、外気温、エンジン補機類の状態に応じて、電子スロットル、A-VT、CVTのプーリー比をコントロールします。エンジンの燃焼効率を最適な状態に保って優れた燃費を実現しながら、ドライバーの意志にリニアに応答する加速フィールを発揮します。また、急加速時などのすばやいアクセル操作によって、加速ショックの発生が予想されると、電子スロットルを制御してアクセル操作時のレスポンッスを損なうことなくショックを低減します。
 Aニュートラルアイドル制御:信号待ちなどでDレンジのまま停車している場合には、CVTを自動的にニュートラル状態に近づけるとともに、エンジン回転数を低く抑え、エンジンの負荷を軽減して燃費の向上を図っています。

 B登降坂制御:アクセル開度と車速から上り坂では3段階、下り坂では2段階の勾配判定を行い、シフトパターンを自動的に変更してエンジン回転数を高回転で維持します。これによって再加速時の駆動力/エンジンブレーキ力が確保され、Dレンジに入れたままでのイージードライブを演出しています。

 Cオートパワー制御:頻繁なアクセル操作や加減速が行われている場合は、自動的に走り志向のシフトパターンに変更し、ドライバーの意志にかなった走行フィールを発揮します。

 以上のようにCVTは、きめ細かい制御ができるので、ミラーサイクルエンジンの復活に貢献したといえるのです。