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 第29回 三菱ランサーエボリューション]のツインスクロールターボエンジン
 このほどフルモデルチェンジされた三菱ランサーエボリューション]は、三菱を代表する高性能4WDセダンです(写真1)。基本的には、最近発売されたギャランフォルティスの高性能版と考えられます。“誰もが気持ちよく安心して「高い次元の走り」を楽しめる新世代ハイパフォーマンス4WDセダン”を商品コンセプトとして開発されています。
 すべてが一新されたといってよいほど、多くの新技術が採用されていますが、特に新開発のエンジン、新開発の6速自動マニュアルトランスミッションに二つの自動クラッチを組み合わせたツインクラッチSST、4輪の駆動力・制動力を独立にコントロールして“意のままの操縦性と卓越した安定性”を実現する車両運動統合制御システムS-AWCが注目されます。

写真1.三菱ランサーエボリューション]のエクステリアはエアロダイナミックスを追求した高次元の走りをイメージしている。


 ●新開発の2.0リッター4B11 MIVECツインスクロールターボエンジン

 2.0リッターエンジン(4B11型)は、ギャランフォルティスの搭載された自然吸気(NA)DOHC16バルブ4気筒MIVEC(マイベック)エンジンをベースに、高性能なツインスクロールターボチャージャを組み合わせたターボエンジンです(写真2)。従来の4G63型ターボエンジンに比べ、全域での高出力化(最高出力は206kW(280PS)/6500rpm)、高トルク化(最大トルクは422Nm(43.0kgm)/3500rpm)を果たすとともにレスポンスの向上も達成しています(図1)。その結果、駆動系のギア比の見直しも含め、優れた動力性能を実現しています。
 このエンジンの最大の特徴は、アルミダイキャスト製シリンダブロックを採用したことです(図2)。従来の鋳鉄製シリンダブロックに比べ、エンジン単体で12.5kgもの軽量化を達成しています。
 またエンジンの吸排気系のレイアウトを車体前方に吸気側、後方に排気系を配置する方式に変更しています(写真3)。これによりエンジンの下に排気管を通す必要がなくなったため、エンジンの車載位置を従来型より10mm下げることができるようになったので、重心高が低下し走行安定性の向上に貢献しています(図3)。
 以下に少し詳しく紹介します。

写真2.ランサーエボリューション]のエンジンルーム。直列4気筒4B11 MIVEC DOHC+ツインスクロールターボエンジンを搭載している。


図1.4B11 MIVECエンジンのエンジン性能曲線図。206kW/6500rpm、422Nm/3500rpmの性能を発揮する。
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図2.アルミニウム合金製シリンダブロックの分解図。軽量化を図り、クランクシャフトジャーナルは5ベアリング方式を採用している。
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写真3.4B11 MIVECエンジンを後方から見た写真。後方排気システムを採用し、ターボチャージャが装着されていることがわかる。


図3.新型4B11エンジンと旧型4G63型エンジンのエンジンレイアウト比較。エンジン高が10o下降している。
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 ●アルミ製シリンダブロック

 このアルミダイキャスト製シリンダブロックには鋳鉄製のスリーブが鋳込まれ、内径×行程(ボア×ストローク)は86.0m×86.0mに設定しています。またブロックには非共振型ノックセンサを埋め込んであるので、従来の共振型に比べ、より正確なノックコントロールを実現しています。
 ピストンには、モータースポーツでも有名なマーレー社製のフルフローティングピストンを採用しています(図4)。このピストンは、材料強度が非常に高く、モータースポーツユースなどでの高負荷にも耐えられるものとしています。

図4.特殊アルミニウム合金製のマーレー社製フルフローティングピストンを採用して高負荷に耐えられるものとしている。
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 ●シリンダヘッド

 これもアルミダイキャスト製です(図5)。これにMIVEC(連続可変バルブタイミング)機構を吸排気両方のカムシャフトに採用しています(図6)。バルブ駆動はカムダイレクトドライブ式としたので(図7)、従来のロッカーアーム式に対して構造の簡素化ができ1kg以上の軽量化を果たしています。吸排気系のMIVEC機構は、従来の吸気側だけの機構に比べ、エンジン回転数、エンジン負荷に応じた最適のバルブタイミング設定ができるようになり、広い回転域でのエンジンの高出力化と低燃費に貢献しています。カム駆動は、タイミングチェーン式を採用したので、バランサシャフトが省かれることで、軽量化ができフリクションも低減しています(図8)。
 各シリンダには、独立した点火コイルを設置し、強い点火性能を確保しています。また点火プラグにはM12のロングリーチイリジウムプラグを採用したので、冷却水路の拡大できました。そのため冷却性能が向上し、安定した燃焼が確保でき、信頼性も向上しています。
 シリンダブロックとヘッドは、分離冷却方式でウォータジャケットを独立させ、個別に冷却して信頼性を高め、ウォータポンプに遠心式シュラウド一体樹脂インペラ付きポンプを採用しています。

図5.シリンダヘッドも軽量・冷却効果の高いアルミニウム合金製を採用。燃焼室はペントルーフ型センタプラグ方式としながらバルブ挟角を小さくしてコンパクト化を図っている。
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図6.MIVEC(三菱イノベイティブバルブタイミングエレクトロニックコントロールシステム)の部品構成図。吸気および排気バルブの開閉タイミングを運転状態に応じて連続的に変化させて常に最適に制御することで、全域でトルクと出力の向上を図る。
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図7.バルブメカニズム。駆動方式は、カムダイレクトドライブ式としてロッカーアーム式より簡素化・軽量化した。
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図8.カム駆動はタイミングチェーン方式で、バランスシャフトは廃止されている。軽量化とフリクションを低減している。
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 ●吸排気系

 吸気側で等長ショートポートのサージタンク一体型のアルミインテークマニホールドを新開発し、上流に電子スロットルバルブを配しています(図9)。一方排気側ではステンレス製エキゾーストマニホールド(図10)を配し、下流にチタン+アルミのターボチャージャ(図11)を設置しています。ターボチャージャは、コンプレッサホイール形状を最適化してレスポンス向上を実現しています。
 ターボチャージャから送り出される圧縮エアは、インタークーラーで効率よく冷却され、インテークマニホールドに送られますが、その間もロスのないようレイアウトの見直しが行われています。さらに下流には、背圧を大幅に低減したエキゾーストパイプがレイアウトされます。後方排気レイアウトの採用で排気管長を大幅に短縮することができます。
 触媒には、高性能なメタル触媒を採用し、メインマフラーは車体最後部に横置きされ、左右にテールパイプを2本配した新設計のものにしてメインマフラー容量は21リッターとなりました(図12)。
 後方排気レイアウトは、特に始動時の触媒の早期活性化に貢献するので浄化作用を促進します。これにより高性能車で、かつEGRを廃止しながら平成17年基準排出ガス50%低減レベル(三ツ星)を達成しています。これは新しいエンジンマネージメントシステムが最適な燃焼コントロールを実現している証拠といえます。また補機でも効率を考慮して高効率オルタネータを採用し、燃費を約2%向上させています。このような工夫により10・15モード燃費は、ツインクラッチSST仕様で10.0km/リッター、5速MT仕様で9.9km/リッターを実現しています。

図9.等長ショートポートアルミインテークマニホールド。サージタンクを一体化している。


図10.ステンレス製エキゾーストマニホールド。


図11.チタン+アルミ合金製タービンホイールとアルミ合金製コンプレッサホイールを採用したツインスクロールターボチャージャ。


図12.排気(エキゾースト)系のレイアウト。メインマフラーは最後部に横置きされている。
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