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 第34回 トヨタクラウンのドライバーモニター付きプリクラッシュセーフティシステム
 トヨタのクラウンは、1955年の誕生以来半世紀以上にわたり日本の高級車をリードする伝統のブランドとして高い評価を得てきました。そのクラウンが、13代目として「安心」「信頼」という伝統の資質を受け継ぎながら、先進の技術を積極的に取り入れて、フルモデルチェンジされました(写真1)。

特に先進の安全技術の採用が目立っていますので、その一部を2~3回にわたって紹介します。

写真1.トヨタクラウンは日本の高級車をリードしてきたが、今回13代目のフルモデルチェンジを受けた。写真はロイヤルサルーン。


 ●進化したプリクラッシュセーフティシステムの概要

 クラウンに採用されたプリクラッシュセーフティシステムは、前方対応型と前方+後方対応型の2種類で、車種グレードによって使い分けられています。

 ①前方対応型プリクラッシュセーフティシステム
 ミリ波レーダーによって、前走車、路上障害物、対向車などを検知し、衝突が避けられないと判断された場合、被害軽減を図るミリ波レーダー方式のプリクラッシュセーフティシステムを採用しています。

 衝突を予知した場合、ドライバーに警報を行い、ブレーキ操作を促すとともにブレーキの踏み込みと同時にプリクラッシュブレーキアシストを機能させて衝突速度を低減します。万一ドライバーのブレーキ操作がない場合でもプリクラッシュブレーキで衝突速度の低減を図ります。またプリクラッシュシートベルトの早期巻取りによって乗員の初期拘束性能を高めるとともにサスペンション制御(AVS)で制動時のノーズダイブを抑えます(図1)。

 ②前方+後方対応型プリクラッシュセーフティシステム
 ミリ波レーダー(前方)とレーンレコグニションカメラセンサで自車両前方の車両や障害物との衝突を予知して衝突の可能性があるときは表示とブザーによる警報を発します。衝突が不可避の場合は、AVS制御、ブレーキアシスト制御、シートベルトの巻き取り、およびブレーキ制御などを行うことで、衝突した際の衝撃を軽減します(図2)。さらにストップランプを点灯させることによって後続車にブレーキが操作されたことを知らせます。また緊急ブレーキ操作があった場合および車両の横滑りを検知した場合にもシートベルトの巻き取りを行うことで衝突時の衝撃を軽減します。

 前方+後方対応型プリクラッシュセーフティシステムでは、車両前方のモニターに加え、ドライバーの状態を見守る新開発のドライバーモニターカメラ(写真2)を採用したので、ドライバーの顔向きに加え、眼の開閉状態まで検知できるようになりました。ドライバーが適正な運転状態ではなく、障害物との衝突の危険をドライバーモニターコンピュータが判断した場合、表示とブザーによる警報を行います。さらに、その状態が続くと警報ブレーキを行います。

 前方+後方対応型プリクラッシュセーフティシステムでは、リアバンパーカバー裏側のロアバックパネルに設置されたミリ波レーダー(リア)によって後方車両の接近を検出し、追突される可能性が高いと判断した場合、ハザードウォーニングランプを点滅させ、後方車両に注意を促がします。その後、さらに後方車両が接近して追突される可能性が非常に高いと判断した場合、フロントシートヘッドレスト(運転席、助手席)に内蔵されたセンサで頭部位置を検出して、追突される前にプリクラッシュインテリジェントヘッドレストを最適な位置まで移動させて追突時のむち打ち傷害を軽減します(図3)。










(これより下の図・写真は、クリックすると大きくなります。)


図1.前方対応型プリクラッシュセーフティシステムの作動概要。



図2.前方+後方対応型プリクラッシュセーフティシステムの前方対応作動概要。



写真2.ステアリングコラムカバー上の設置されたドライバーモニターカメラ。



図3.前方+後方対応型プリクラッシュセーフティシステムの後方対応作動概要。


 ●前方+後方対応型プリクラッシュセーフティシステムの構成部品

 図4に前方+後方対応型プリクラッシュセーフティシステムの構成部品の配置図を示します。主な構成部品を解説しておきます。

 ①ミリ波レーダー(フロント):ミリ波帯の電波を前方に放射し、先行車などが存在した場合、その車両からの反射波を受信します。その受信波の周波数変化および電子スキャンによって自車走行車線上の先行車・対向車の有無、先行車・対向車との距離・相対速度などを演算し、そのデーターをドライビングサポートコンピュータに出力しています。なお取付け位置は、フロントグリルカバー裏側のラジエータアッパーサポート部です。

 ②レーンレコグニションカメラセンサ:車両前方の映像を取り込み、その画像データーをドライビングサポートコンピュータに送信します。

 ③ドライバーモニターカメラ:コラムカバー上部に近赤外線CCDカメラを配置しています。内部には近赤外線LEDを内蔵しており、昼夜を問わず認識できるものとしています(図5)。ドライバーの顔に反射した反射光は、可視光線が透過しにくい素材でできた外装受光面を通ることで近赤外線が主体となりカメラへ到達します。図6は、ドライバーモニターカメラの構造です。

 ④ドライバーモニターコンピュータ:ドライバーモニターカメラの画像からドライバーの顔向き度を算出します(顔向き判定機能)。そのデーターをもとにドライバーの鼻孔を検出して瞼の探索範囲を設定したのち上下瞼を検出します。上下瞼の情報から眼の開閉度を求め、その結果をドライビングサポートコンピュータへ出力し、この眼の開閉度を基準にドライバーの現在の眼の開閉度状態を判断します(眼の開閉度検知機能)。図7は、その一連の流れです。

 ⑤ミリ波レーダー(リア):ミリ波帯の電波を後方に放射し、後続車などが存在した場合に、その車両からの反射波を受信します。その受信波の周波数変化および電子スキャンによって自車走行車線上の後続車の有無、後続車との距離・相対速度などを演算し、そのデーターをドライビングサポートコンピュータに出力しています。

 ⑥プリクラッシュインテリジェントヘッドレスト:プリクラッシュインテリジェントヘッドレストコンピュータ、頭部位置検出センサ、リンク機構、モーターなどから構成されています。作動時には、ヘッドレストと頭部の距離を頭部位置検出センサによって検出し、ヘッドレストの移動量を調整します(図8)。頭部位置検出センサには静電容量センサを採用し、頭部とセンサの電極間の距離で変化する静電容量を検出しています。

図4.前方+後方対応型プリクラッシュセーフティシステムの構成部品配置図。


図5.ステアリングコラムカバー上に設置されたドライバーモニターカメラは近赤外線LEDを使用している。


図6.ドライバーモニターカメラの構造。


図7.ドライバーモニターコンピュータはドライバーの顔向き度と眼の開閉度をドライバーサポートコンピュータに出力する。


図8.プリクラッシュインテリジェントヘッドレストの作動概要。