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 第36回  トヨタクラウンのナイトビジョンシステム
トヨタのクラウンは、日本の高級車をリードする伝統のブランドとして高い評価を得てきました。そのクラウンにも時代の安全性能向上の要望に応えた数々のシステムが設定されています。そのなかから今回はハイブリッド車に設定された歩行者検知機能付きナイトビューを紹介します(写真1)。


 ● ナイトビューシステムの概要

図1.歩行者検知機能付きナイトビューの基本的な原理と表示法。

 これは基本的にはアメリカ車のキャデラックドゥビルに搭載されたナイトビジョンシステムと同じ考えで開発された、夜間走行時のドライバーの視覚を支援するものです。

 車両前方の見えにくい歩行者、障害物、道路状況を映像化してドライバーに提供します。このナイトビューは、ヘッドランプアセンブリ(近赤外線投光器)から人の眼に感じない領域の近赤外線を照射し、対象物に反射した近赤外線をカメラが受光して映像信号に変換する車載用暗視装置です。

 またこの新型ナイトビューでは、近赤外線カメラシステムとしては初めて歩行者を検知する機能を搭載し、検知した歩行者の存在と位置をナイトビュー映像上に表示し、ドライバーに注意を促がします(図1)。


 ● ナイトビュー構成部品

 ①ナイトビューECU:ナイトビューカメラから受信した映像を基に歩行者を検知し、各種車両情報でナイトビューの作動を制御します。またカメラからの映像信号に歩行者検知枠、歩行者検知作動インジケータを追加してコンビネーションメーターに出力します。さらにナイトビュー表示要求信号をコンビネーションメーターへ、可視光線カットフィルタ駆動信号をヘッドランプアセンブリに出力します。

 ②コンビネーションメーター:ナイトビューECUから表示要求信号を受信すると、メーター表示が変化してメーター中央にナイトビュー映像を表示します。さらに映像信号に注意喚起枠を追加します。

 ③ナイトビュースイッチ:ナイトビューのON/OFFスイッチ信号をナイトビューECUに出力します(図2)。

 ④レオスタットスイッチ:カラーTFT液晶ディスプレイの輝度を調整します(図2)。

 ⑤ヘッドランプアセンブリ(近赤外線投光器):ハイビーム/近赤外線投光器切換え用のソレノイドおよび可視光線カットフィルタが組み込まれており、ナイトビュー作動時に近赤外線投光器として機能します(図3)。また可視光線カットフィルタを駆動して、フィルタの位置信号をナイトビューECUに出力します。

 ⑥ナイトビューカメラ:車両前方の光を受光して近赤外線領域の光を映像信号としてナイトビューECUに出力します(図4)。

 ⑦メインボディECU:ヘッドランプ点灯指示信号をヘッドランプアセンブリに出力します。またヘッドランプ点灯状態信号とライトコントロールセンサの照度信号をナイトビューECUに出力します。

 ⑧エンジンコントロールコンピュータ:シフトポジション信号をナイトビューECUに出力します。

 ⑨ドライビングサポートコンピュータ:ワイパー作動信号と車速信号をナイトビューECUに出力します。

 ⑩パワーマネジメントコントロールコンピュータ:V1バス~V2バス間のデーターを中継します。


図2.ナイトビュースイッチの位置と配置。



図3.ヘッドランプのハイビーム時の状態と近赤外線投光器作動時の状態。



図4.ナイトビューカメラの取付け位置と外観。近赤外線投光器・ヘッドランプの反射光と周囲の光を取り込んで、光の強さを白黒の濃淡で映像信号に変換し、その信号をナイトビューECUに送信する。






 ● 歩行者検知機能付きナイトビューの機能

このナイトビューは、ナイトビューカメラからの映像に歩行者検知機能・注意喚起機能を追加して新しく開発されたファイングラフィックメーターと呼ばれるコンビネーションメーター内に表示されます。主に郊外の比較的暗い道路環境で車両前方約15°以内、距離は約40~100mの間で車速に応じて範囲を変化させながら歩行者を検知します(図5)。なお、歩行者の身長などにより検知範囲が異なる場合があります。

 ①歩行者検知機能

 歩行者検知機能とは、ナイトビュー映像に検出された歩行者位置を強調枠表示することでドライバーに車両前方の歩行者に対する認知を支援する機能です。ナイトビューの作動中に歩行者検知機能は作動しているかどうかを知らせるインジケータを表示します(図6)。

 ②注意喚起機能

 注意喚起機能とは、ナイトビュー映像に歩行者検知枠・注意喚起枠を点灯・点滅させることで、ドライバーの視覚に注意を促がす機能です。歩行者検知枠は、ナイトビューが歩行者を検知した場合に点灯し、その歩行者が検知されなくなるまで歩行者に追従して表示されます。また注意喚起枠は、歩行者が一人も検知されていない状態で新たに歩行者が検知された場合に表示されます。3回の点滅を繰り返した後、映像内に歩行者が検知されなくなるまで点灯を継続します(図7)。

 ③ナイトビューの作動条件

 ナイトビューは、夜間にナイトビュースイッチをONすることで作動します。またシフトポジションがR(後退)のときはバックガイドミニターとの混同を避けるため画面は表示されません。

 ナイトビュー作動条件は、ヘッドランプON、ナイトビュースイッチON、IG ONで、薄暗い状態で車速が約15~約60㎞/hのときには近赤外線投光器は点灯しますが、歩行者検知機能は動作しません。また暗い状態で車速が約15~約60㎞/hのときには近赤外線投光器は点灯して歩行者検知機能が動作します。

 なお車速が約60㎞/hを超える場合は、薄暗い状態および暗い状態でも近赤外線投光器は点灯しますが、歩行者検知機能は動作しません。

 ④ナイトビューの表示画面

 ナイトビューは、コンビネーションメーターのカラーTFT液晶ディスプレイに、図8のように表示されます。また、歩行者検知は、図9のような処理を行って歩行者を検知します。


図5.ナイトビューの歩行者検知範囲。歩行者の身長の違いなどで異なる場合がある。



図6.歩行者検知機能として強調枠表示や作動インジケータを表示する。



図7.ナイトビューの注意喚起機能。カーブ走行中などタイミングによっては注意喚起枠が点灯していても歩行者検知枠が表示されないことがある。



図8.ファイングラフィックメーターの表示例。ナイトビュー表示も、その一種。



図9.ナイトビューの歩行者を検知する場合の流れ。