新採用されたターボチャージャーは、コンパクトで軽量に設計されています(写真3)。慣性質量の軽減によって反応が極めて俊敏なターボチャージャーは、狭いバルブ挟み角、可変バルブタイミング機構などとともにスムーズでトルクフルなエンジン特性に貢献しています。また排気ガスの流れを最適化した一体型エキゾーストマニホールドと入念に設計されたタービンによって、高回転時でもロスの少ない過給ができるようになっています。吸気側のコンプレッサハウジングには、反応時間が短くスロットル開度の急な変化にも対応する電子制御式ブローオフバルブを一体化しています。なおターボチャージャーの回転数は、最高22万rpmに達し、過給圧は最大で1.8bar(絶対圧)にまで高められます。
ワーゲン初の水冷式インタークーラーは、このエンジンの革新的なテクノロジーのひとつにあげられます(写真4)。インテークマニホールドと一体化したユニークなインタークーラーによって吸気システムの容積を大幅に削減しています。空冷式ツインチャージャーエンジンの11Lに対して4.8Lまで減少しています。これによって、ターボチャージャーは素早く過給圧を高められるようになり、低回転域の優れたレスポンスを実現しています。
新エンジンの冷却系統と過給(吸気)系統の状況を写真5に示します。ターボチャージャーによって圧縮され高温となった吸気は、水冷式のインタークーラーによって冷却され、冷却後の吸気は高負荷時でも外気プラス25℃に抑えられます。インタークーラーとターボチャージャーには専用の冷却システムが採用され、吸気から熱を奪ったクーラントは、循環ポンプによって過給システム専用のラジエータに送られます。また従来エンジン同様にシリンダヘッドとシリンダブロックで異なる冷却回路を持つデュアルサーキット方式を採用しています。
コモンレール式燃料噴射システムは、新世代の燃料ポンプ、新開発の高圧噴射インジェクタなどを採用し、最大噴射圧は110barとなっています。6個のインジェクションジェットを持つマルチホール高圧インジェクタ(図2)は、新エンジンに採用するに当たって噴射形状の最適化を図り、よりクリーンな排出ガスの達成に寄与しています。
また従来使用されていたインテークポートのタンブルフラップは廃止され、形状が変更されたインテークポートによって、フラップを使用することなく高レベルの渦流(タンブル流)を発生できるようになりました。そのため幅広い回転域で、より迅速で効率的な燃焼を実現するとともに高い経済性とスムーズなエンジン特性を得ています。
さらに新エンジンでは、フリクションロスの低減や重量の軽量化を推進しています。特に軽量化については、各部品の重量をグラム単位で削減し(カムシャフトは1本当たり304g、シリンダヘッドは150g)、トータルで14㎏もの重量削減に成功しています。 |