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 第43回  ホンダライフの運転席用連続容量変化タイプi-SRSエアバッグ

本田技研工業㈱は、このほどフルモデルチェンジした軽乗用車「ライフ」に、世界で初めてエアバッグの容量を連続変化させ、さらに排気制御をすることで、運転者への高い保護性能と低衝撃性を、より高次元で両立した運転席用i-SRSエアバッグシステム<連続容量変化タイプ>を新開発して搭載しました(写真1)。

 


 

 ● エアバッグシステム技術開発の歴史

 ホンダでは、1987年に国産車初のエアバッグシステムを独自に開発して以来、乗員の保護性能と低衝撃性という相反するテーマを高い次元で両立するという不変の課題に取り組み続け、さまざまな技術を生み出してきました。1990年には、助手席用エアバッグシステムに独自のトップマウント方式を開発し、1998年には世界初の2段式インフレータを開発、1998年にはサイドエアバッグシステムに世界初の助手席乗員姿勢検知機能を開発しています。さらに2002年には、サイドカーテンエアバッグに広く、厚く、速い独自の展開方式を開発しました。
そして、今回エアバッグの新しい展開、ガスの排気手法を開発して、優れた乗員保護性能と低衝撃性を合わせ持つ運転席用i-SRSエアバッグシステムをライフに搭載しました。

 


 


 ● エアバッグの乗員保護性能特性のイメージ

 万一の衝突時には、エアバッグは0.1秒以下で、すべての役目を果たさなければなりません。そして、エアバッグシステムの保護性能と低衝撃性は、相反する関係にあります。たとえば、小柄なドライバーは必然的にステアリングに近いシートポジションになるためエアバッグをいち早く膨らませ、保護性能を素早く発揮させなければなりません。しかし、乗員がそのエアバッグで衝撃を受ける可能性が高まります。一方、ステアリングから遠くに着座する長身のドライバーには、できるだけ長く乗員保護性能を維持することが必要です。
 このような種々の体格や衝突の状況に幅広く対応するためには、より「迅速」に、より「低衝撃」で展開し、保護性能をより長く「持続」させることが必要です。このような条件を満たしたのが、ライフに採用された運転席用i-SRSエアバッグ(連続容量変化タイプ)です(図1)。

 

 ● 連続容量変化タイプ運転者席用エアバッグの構造と作動

 乗員保護性能と低衝撃性を高い次元で両立させるために、エアバッグ自体に従来のエアバッグにはなかった「うず巻き状の縫製」と「排気制御弁」を設定しています(図2,3)。
 うず巻き状の縫製は、規定内圧に達すると、ガスの圧力でうず巻き状の縫製の糸を内側から外側へ向かって切りながら一定の内圧で容量を拡大します。また排気制御弁は、規定のタイミングまで排気を止めています。
 このエアバッグの展開状態を従来エアバッグと比較した様子を写真2に示します。
 うず巻き状の縫製によって、展開初期は小容量のエアバッグを形成するので短時間で乗員保護性能を発揮します。また一定の内圧で連続的に容量を拡大し、排気制御弁が途中で開き設定タイミングまでガスを廃棄させないので、長時間膨らみ乗員保護性能を長く維持します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 ● 連続容量変化タイプ運転者席用エアバッグの構造と作動

 ①迅速:エアバッグ本体にうず巻き状の縫製を施すことで少ない容量で保護面が形成できるので、より短時間で優れた乗員保護性能を発揮します(図4)。
 ②低衝撃:展開時の飛び出しを縫い目が抑えて衝撃力を低減します。また展開初期から設定タイミングまで排気制御弁で排気口を閉じることによってガスを効率よく使えるので、インフレータの出力を低く抑えることができ衝撃力の低減に寄与しています(図5)。
 ③持続:ガスの圧力で、うず巻き状の縫製の糸を内側から外側へ向かって切りながら一定の内圧で連続的に容量を拡大します。さらに展開初期から設定タイミングまでガスを排気させないので、エアバッグ内部の圧力が維持されて保護性能が長く持続します(図6)。
 なお、このエアバッグは、縫製の方法が変わり、排気制御弁を追加するだけなのでコスト的にも有利です。ホンダでは順次他車にも採用していく予定です。