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 第44回  日産エクストレイルのクリーンディーゼルエンジン

日産自動車のエクストレイル「20GT」は、日本の厳しい排出ガス規制「ポスト新長期規制」に適合したクリーンディーゼルエンジン搭載車であり、高い環境性能とハイパフォーマンス、そして優れた経済性を実現しています。

 

写真1.日産のクリーンディーゼルエンジンを搭載したエクストレイル20GT。

 日産自動車㈱が地球環境のために優先度の高い課題として掲げたCO2(二酸化炭素)の削減を、具体的に示したのが「日産エクストレイル20GT(写真1)」に搭載された「クリーンディーゼルM9Rエンジン」です(写真2)。
これは平成21年から施行される日本の厳しい排出ガス規制「ポスト新長期規制」(排出ガス中のNOx(窒素酸化物)とPM(粒子状物質)の基準値が「新長期規制」のほぼ半分に設定。(図1)に世界で初めて対応したエンジンです。

 

 ● クリーンディーゼルM9Rエンジンの特徴

 このエンジンは、ルノーとのアライアンスのなかで共同開発された最高出力127kW(173PS)、最大トルク350Nm(36.7㎏m)の性能を持つエンジンです(6MT,4WD)。その特徴をまとめると、①クリーン(環境にやさしい)、②ハイパフォーマンス、③エコノミー(財布にやさしい)の3点に絞ることができます。
 ①クリーン(環境にやさしい)
今までのディーゼルエンジンの最大の欠点であった排気性能を格段に向上させ、PM、NOxを大幅に削減して「ポスト新長期規制」を他社に先駆けてクリアしました。また優れた燃費によって(10・15モード燃費15.5㎞/L)、CO2排出量(g/㎞)を同出力のガソリン(2.5L MT)の約20%削減しています。さらに使用燃料の軽油は製造時のCO2排出量がガソリンに比べて約46%少ないこともあって、総合的には約27%CO2を削減でき、環境にやさしいエンジンとなっています。
 ②ハイパフォーマンス
前述したエンジンスペックは、3.5L V6のVQ35HRガソリンエンジンの最高出力230kW(313PS)/最大トルク358Nm(36.5㎏)と比較してもトルクにおいては上回っています。このトルクフルな特性を生かして高速巡航時は6速のまま追い越しも楽に行え、リニアに息の長い加速性能を発揮します。また登坂路においても余裕を持って加速します。
 ③エコノミー
エクストレイルのガソリンQR25DE+CVTに対して10・15モードで31%燃費がよく(60㎞定地燃費23.4㎞/L)、しかも燃料代が安いのでランニングコストに優れています。年間1万㎞以上走ればガソリン車より得になります。
  そのほかディーゼル車とは思えないほど優れた静粛性と振動の少なさが挙げられます。エンジン関係では、燃焼音や振動を抑える技術(バランスシャフト装着など)を導入していますが(写真3)、車体の高剛性化やボディの遮音・制振強化を行ってガソリン車なみの静粛性を実現しています。


 


 ● M9Rエンジンへの投入技術

 このエンジンは、最先端の技術を採用した人と環境にやさしいディーゼルエンジンです(写真4、図2)。
 ①コモンレールシステム
1600気圧の超高圧で燃料を微粒化 して燃焼室内に均等に噴射することで、空気と均一に混ざりやすくして燃焼効率を向上させて黒煙の発生を抑えます。

②ピエゾ式インジェクタ
燃料噴射を分割して行えるので、噴射 のタイミングと噴射量の精度を向上させ燃焼圧力の上昇を制御して燃焼音の抑制に貢献します。
  ③ダブルスワールポート
燃焼室内に高速の渦を作り出し、空 気と燃料を効率よく混合することで燃焼を促し、PMの発生を抑えます(写真5)。


 ④DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)
燃焼によって発生した黒煙を捕集し た後,高温の排出ガスで自動的に酸化させて黒煙を主成分とするPMを99%以上除去します(写真6)。

 

 ● ポスト新長期規制をクリアするために

 日本の規制をクリアするために、リーンNOxトラップ触媒と高精度のエンジン制御を採用しています。
  ①リーンNOxトラップ触媒(写真7、図 3)
環境負荷物質のNOxを無害なN2(窒 素)とH2O(水)とCO2へ浄化する触媒を新開発して採用しています。


②高精度のエンジン制御
後処理の能 力を最大限に引き出すためにEGRバルブ、電子制御スロットル、1600気圧のコモンレールシステム、可変ノズルターボチャージャ(写真8)を協調制御して空燃比を緻密にコントロールしています。