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 第49回 トヨタプリウスに搭載された新開発1.8Lエンジン

1997年に世界初の量産ハイブリッド乗用車として発売されたプリウスは、世界ですでに125万台の累計販売台数を記録しています。
3代目プリウスは、圧倒的な環境性能と走る楽しさを、より高いレベルで両立させることを目指して開発されています。


 

写真1.空力理論に基づいてデザインされた三代目トヨタプリウス。見た目には2代目に酷似しているが、さらに空力性能が向上している。

 ハイブリッドシステムの約90%を新開発し、形式的には2代目プリウスと同じリダクション機構付きTHSⅡです。世界トップレベルの空力性能などクルマ全体でのエネルギー効率向上との相乗効果で、世界トップの燃費性能38.0㎞/L(10・15モード燃費)とエンジンは1.8Lの排気量ながら2.4Lエンジンなみの動力性能を発揮します(写真1)。

 ●新採用された1.8Lエンジンの特徴

 新開発された1.8L(2ZR-FXE)エンジンを採用することで、高速走行時のエンジン回転数を低減して高速燃費を向上させるとともに、ゆとりある出力(最高出力73kW/5200rpm)とトルク(最大トルク142Nm/4000rpm)で上質な走りを実現しています(写真2、3、図1、2)。

     
         
     

 エンジン内のポンピングロスと摩擦を大幅に低減する高膨張比(アトキンソン)サイクルエンジンや燃焼効率を向上させるクールEGRシステム、ローラーロッカーアームを採用したほか、従来は捨てていた排気熱をヒーターやエンジンの暖機に利用する排気熱再循環システムを搭載しています。またバッテリの電力で駆動するトヨタ初の電動ウォータポンプを採用し、緻密な冷却水流量の制御と駆動ベルトの電動化でフリクションロスを低減しています。

アトキンソンサイクルエンジンは、燃焼室容積を小さくして膨張比を高め、爆発圧力が十分に低くなってから排気することで、爆発エネルギーを余すことなく取り出します。またインテークマニホールドに押し戻される空気によって吸気管負圧が低くなり、部分負荷時にはスロットルバルブ開度が大きく取れるため、吸気損失の低減も図れます(図3)。
クールEGRシステムは、排気ガスをEGRクーラーで冷却し、その後吸気経路に再循環させることで、ポンピング損失、エンジン冷却損失を低減しています。また排気温度を下げることによって全域理論空燃比を実現して燃費向上とエミッション低減に貢献しています(写真4、図4)。EGRバルブの駆動には、ステッピングモーターを採用し、小型軽量化を図り、モーターでEGRバルブを開閉することでEGR量を調整します。またEGRバルブ手前に水冷式のEGRクーラーを採用してEGRガスの熱を下げてEGR効率を向上させています。さらにステンレス製とすることで、軽量化・耐蝕性・高温下での信頼性を確保しています。
エンジンはDOHC狭角4弁式で、バルブロッカーアームにローラーロッカーアームを採用しています(図5)。バルブの挟み角を29度に狭角化することで、燃焼室をSV比(燃焼室表面積に対する燃焼室容積。少ないほど冷却損失が減る)に優れたコンパクトな形状として斜めスキッシュを採用しています。ロッカーアームをベアリング一体型とし、ローラーをニードルローラーベアリングで支持することで摺動部分のフリクションを大幅に低減しています。またこの潤滑にはオイルデリバリパイプ式を採用して、カムシャフト上部から確実に潤滑できるようにして信頼性を確保しています。なお細径のロングリーチ点火プラグを採用していますので、シリンダヘッドの燃焼室上部のウォータジャケットを確保し、ノック限界を向上させています。
電動ウォータポンプは、エンジン冷却水を必要なときに必要な量のみ循環させ、無駄を省くことができるように採用されたものです(写真5、図6)。同時に補機を駆動するベルトが不要になったためベルトレス化を実現しています。当然のようにフリクション損失の低減をもたらしたうえ、メインテナンスフリー化も実現しています。
排気熱再循環システムは、従来捨てていた排気熱をエンジン冷却水を再循環することでヒーターやエンジンの暖機性能を向上させます。電動ウォータポンプとの組合せで無駄のない熱マネージメントを実現し、冬季の燃費を向上させるとともにヒーター性能の向上にも貢献します。