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 第54回 三菱アイ・ミーブ(i-MiEV)

三菱自動車工業㈱は“クルマ社会の、次の扉を開くパイオニア”として、量産型の新世代電気自動車アイ・ミーブ(i-MiEV)を法人ユーザーや自治体などを中心にメインテナンスリース(車両費用に加え、税金、保険費用、整備費用の一部などの車両維持管理費が含まれるリース)を基本に販売していましたが、個人向け本格販売を2010年4月から開始する計画で、購入受付が開始されています。



 このアイ・ミーブは、リアミッドシップレイアウトの軽乗用車アイのロングホイールベースを活かし、大容量の駆動用バッテリを床下に、パワーユニットをラゲッジルーム下に搭載して、ベース車と同一の居住スペースとラゲッジスペースを確保しています(図1)。


 ●主な商品特徴

走行中の炭酸ガス(CO2)の排出が0のゼロエミッション車で、発電時のCO2排出量を含めたWell to wheel(燃料の生産、供給から自動車の走行までの全過程)でもベース車のアイのターボエンジン車に比べて約3分の1となっています。
100%電気で走ります。そのため走行に必要なコストは電気代となります。電力会社の料金プランによっては夜間時間帯による充電で電気代を抑えることができます(別途電力会社へ申し込む)。
静かでキビキビ快適に走ります。騒音・振動源のエンジンを搭載していないので、静粛性に優れていますが、このクルマではモーター音、駆動系騒音、ロードノイズを重点的に改善して高い静粛性を実現しています。また応答性に優れ、低速から高いトルクを発生する電気モーターの特性を活かしてベース車のアイのターボエンジン車を上回るレスポンスのよい力強い走りも実現しています。さらに駆動用バッテリを床下に搭載していますので、重心高は低くなっています。そのため旋回中の車体ロール角が減少し、良好な操縦安定性を確保しています。
日常ユースに1充電で十分な走行距離(10・15モードで160㎞)を実現しています。実際の航続距離は冷暖房の作動状況や走行パターンによって影響されますが、軽自動車としての日常ユースに十分な航続可能距離を達成しています(平日は約40㎞未満、休日で約60㎞未満が平均走行距離だという)。

自宅でも外出先でも充電できる3充電システムを採用しています(普通充電(写真1,2):200Vで7時間、100Vで14時間=満充電。急速充電(写真3,4):三相200Vで約30分=80%)。満充電になれば自動的に充電は停止されます。





 

 ●主要コンポーネント

 アイ・ミーブは、駆動用バッテリ、同期型モーター、トランスミッション、車載充電器、車載充電器一体型DC-DCコンバータ、インバータから構成されています(図2)。






駆動用バッテリ:1セルが3.7V/50Ahで4個または8個の電池セルを直列接続したモジュールをつなぎ、合計88セル直列構成の大容量(総電力量16kWh)のリチウムイオン電池を採用しています(写真5,6)。なおリチウムイオン電池は、1セルあたりの電圧がハイブリッドカーに採用されているニッケル水素電池の1.2V、鉛電池の2.0Vに比べて高く、ニッケル水素電池の約2倍、鉛電池の約3~4倍のエネルギー密度があります。また充放電時の継ぎ足しを繰り返すことによる放電電圧の低下や容量の低下がありません。このバッテリは、モーター駆動のほか、空調システムへの電力供給や補機用バッテリへの充電も行います(写真7)。さらに安全性を考慮してセル自体はもちろん、バッテリパックや取り囲むフレーム類など、多重で強固な安全構造を採用して保護しています。

永久磁石式同期モーター(写真8):通常のモーター用磁石のフェライト磁石に比べ、各段に大きな磁力を持つネオジム磁石を使うことで小型高性能化を実現できます。アイ・ミーブに搭載されたモーターは、最高回転数8500rpm、最高出力は47kW/3000~6000rpmで、モーター特有の低回転域から高いトルクを発生し、最大トルクは180Nm/0~2000rpmです(ターボエンジンの約2倍)。またターボエンジンに比べて、全長は約10㎝短く、重量は約30㎏軽くなっています。エンジンブレーキに相当する回生時には、モーターが減速トルクを発生して回生ブレーキ機能が働きます。このときモーターは発電機として機能し、回収した電気を駆動用バッテリに充電します。なおモーターの冷却は水冷式を採用し、インバータや車載充電器&DC-DCコンバータの冷却も行います。

トランスミッション:1段固定の減速機構とし、専用に開発されました(写真9、図3)。これはモーター特有の低回転域から高トルクを発生する特性によって複雑な変速機構が不要なためです。そのためシンプルな構造で小型軽量化を実現しています。また後退時はモーターを反転させればよいのでリバース機構も廃止しています。

車載充電器&DC-DCコンバータ:普通充電用として小型軽量の車載充電器を搭載しています。なおこの充電器は駆動用バッテリから制御系や灯火類・オーディオなどの一般的な電装品に電力を供給する補機用バッテリ(12V)を充電するためのDC-DCコンバータと一体構造になっています(写真10、図4)。
インバータ:駆動用バッテリとモーターの間に介在してモーター駆動やエネルギー改正を制御します。モーターは三相交流で運転しますので、インバータでバッテリからの直流電流を交流電流に変換するとともにドライバーのアクセル操作に応じて電流・電圧の値を調節してモーターの運転を制御します(写真11、図5)。また回生ブレーキでの充電時も交流を直流に変換する交流/直流変換器として働きます。
コンビネーションメーター:板面照明に白色LED(発光ダイオード)を採用して、爽やかなイメージと視認性を両立した専用メーターパネルを採用しています。アナログ式タコメーターの代わりに消費電力およびエネルギーの回生の状況を視覚的に表示するパワーメーターを設置しています(図6)。針がグリーンのECOゾーンを示す状態で運転すると、消費電力を抑えることができ、アクセルOFF時はブルーのChargeゾーンを示すことでエネルギーの回生を実感できます。またドライバーのサポートを目的にパワーメーター左側に駆動用バッテリ残量計(図7)、同じく右側に航続可能距離表示を設けています。

セレクタレバー:本来の優れた走りを楽しめるモード、エコドライブモード、回生ブレーキを強く働かせた走行モードの3モードが選択できます。

 

 

 ●そのほか

 電動コンプレッサによる冷房システム、電気ヒーターで加熱した温水を循環させる暖房システムを採用しています。
また安全性向上のために高電圧システムをボディ骨格内側に搭載し、駆動用バッテリを井桁フレームで保護して全方位からの衝突衝撃に備えています。

 

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