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 第58回 メルセデスベンツEクラスに搭載の新型ディーゼルエンジンの概要

メルセデスベンツ日本㈱は、このほどメルセデスベンツEクラスに、最先端テクノロジーで世界でもっとも厳しいといわれる日本の排出ガス規制をクリアした最新クリーンディーゼルエンジンを搭載した「E350 BlueTEC(ブルーテック)」(セダン/ステーションワゴン)を追加して発売しました(写真1、2)。

写真1.メルセデスベンツE350BlueTECセダンの外観

写真2.メルセデスベンツE350BlueTECステーションワゴンの外観。




 ●ベンツE350 BlueTECシリーズの特徴

 3リットルV6直噴ターボディーゼルエンジンを搭載し、電子制御7速オートマチックトランスミッション(7G-TRONIC)との組合せで、5リットルクラスのガソリンエンジンに匹敵する力強い動力性能(最高出力155kW[211PS]/3400rpm、最大トルク540Nm[55.1㎏m]/1600-2400rpm)と優れた静粛性と2リットルクラスのガソリンエンジンなみの燃費経済性(10・15モード燃費:13.2㎞/L、JCO8モード走行燃費:12.4㎞/L。いずれもセダン)を実現しています(写真3)。また排出ガス処理システムとしてBlueTECを採用して、排出ガス中の有害物質を大幅に低減し、日本の「ポスト新長期規制」と欧州排出ガス基準の「EURO6(2014年9月施行)」に適合しています。さらに「平成17年度燃費基準+20%」達成および「平成27年度燃費基準」もクリアしており、輸入車初の環境対応車としてクリーンディーゼルエコカー免税(自動車取得税と重量税を100%免税)の認定を取得しています。さらに新車購入補助金対象の認定も取得しているので、セダンで最大約67万円、ワゴンで最大約68万円の優遇措置が得られています。

 

 
 

 ●メルセデスベンツの乗用車用ディーゼルエンジンの歴史

1936年に世界初のディーゼル乗用車を発売して以来、一貫してディーゼルエンジン技術の改善と高度化を進めてきています。たとえば1977年のベンツ300SDに搭載した乗用車用ターボディーゼルエンジンや1985年のアメリカカリフォルニア州向けに搭載した粒子状物質除去フィルタ(DPF)、1997年には4バルブディーゼルエンジンを開発、同年に採用されたコモンレール直噴ディーゼルエンジン(CDI)、2003年のメインテナンスフリーのDPFなど、数多くの画期的なディーゼルエンジン技術を実現してきています。
 日本においても、長年にわたりディーゼルモデルを販売してきており、ディーゼル排出ガス規制が厳しくなった2006年に先代Eクラスに新世代ディーゼルエンジンを搭載した「E320CDI」を投入し、優れた燃費経済性とクリーンな排出ガスを実現しながらディーゼルのイメージを払拭する力強い動力性能でユーザーからも高い評価を得ていました。特に自動車技術の専門家団体の特定非営利活動法人(NPO)RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)の2007年次カーオブザイヤー=インポートとテクノロジーオブザイヤーを受賞しています。


 
 

 ●BlueTECの内容

 新型E350BlueTECに搭載されるエンジンは、3リットルV6直噴ターボディーゼルエンジンですが、先代のE320CDI同様ピエゾインジェクタを用いたコモンレール・ダイレクト・インジェクションやVNT(バリアブル・ノズル・タービン)ターボチャージャなどの最新テクノロジーを採用しています。
 環境適合性の面では、世界でもっともクリーンなディーゼル排出ガス処理システム「BlueTEC」を採用し、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction:選択型触媒還元)で排出ガス中の窒素酸化物(NOx)を約69%低減するとともに、最新の粒子状物質除去フィルタ(DPF)で粒子状物質(PM)を約21%低減、燃焼効率の向上によってCO2(二酸化炭素)排出量も約7.2%低減しています(先代E320CDIとの比較。写真4)。
 BlueTECは、排出ガスに尿素水溶液「AdBlue(アドブルー)」を噴射することによって化学反応(環元作用)を発生させ、有害な窒素酸化物(NOx)を大幅に削減する尿素SCRを採用しています(図)。
 専用タンク(写真5、6)に保存されるAdBlueは、高温の排気ガスに噴射されるとSCR触媒コンバータ内のセラミックモノリスと化学反応を起こすのに必要なアンモニアに変換されます(写真7)。アンモニアを加えられた窒素酸化物は、化学的な触媒反応で窒素と水に分解されます。この窒素と水は、いずれも自然界に存在する無害な物質で一切環境の負荷とはなりません。したがって、有害な窒素酸化物を先代E320CDIに比べて約69%も低減します。また綿密な燃焼制御と最新の自己再生型DPFで、粒子状物質(PM)を約21%低減しています。
 なおAdBlueの消費量は、1000㎞あたり約1リットル、タンク容量は24.5リットルです。そのためメルセデス指定点検時(1年ごともしくは1万㎞ごと)に全国のメルセデスベンツ正規販売店で補充・交換されるので、残量確認など日常のメインテナンスは不要です(3年間走行距離無制限の無料修理・無料メインテナンスと24時間ツーリングサポートのメルセデスケアが適用される)。
 このクリーンディーゼルエンジン搭載のE350BlueTECの導入で、メルセデスベンツは小排気量のガソリン直噴ターボエンジン(CGI)、ハイブリッドと3種類の環境対応パワートレインを用意している唯一の自動車ブランドとなっています。


 
 
 
 


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