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 第59回 フォルクスワーゲン・ポロに搭載の新型1.2LTSIエンジン

フォルクスワーゲングループジャパン㈱は、このほどコンパクトカー5代目「ポロ」に1.2L TSIエンジンを採用して発売を開始しました(写真1)。これに伴い従来設定されていた1.4L TSIエンジンの搭載車は廃止されました。

 




 ●TSIエンジンとは?

 大きなエンジンはパワーがあり、小さいエンジンは非力というのが、従来のガソリンエンジンの常識でした。その常識を覆すのが、TSIエンジンです。パワーを得ようと大排気量エンジンを搭載すると、必然的に燃費(CO2)が悪化します。高性能と燃費を両立させようとしたのが、このTSIエンジンなのです。
 直噴エンジンにターボチャージャ(過給)を組み合わせて、「最小の燃料で、最大のパワーを」追求したエンジンです。直噴は、シリンダ内に直接燃料を噴射するシステムで、燃料の供給量と噴射タイミングの微細なコントロールができます。また過給は、排気エネルギーを利用したターボチャージャやクランクシャフトからベルトで駆動するスーパーチャージャを用いて空気を強制的に燃焼室に送り込んで充填効率を向上させます。さらに直噴エンジンは、燃料がシリンダ内で気化する際に熱を奪うので過給によって上昇した吸入空気の温度を下げるため、高い圧縮比に設定することができます。
 TSIエンジンは、この直噴+過給システムで、ガソリンエンジンの弱点である低速域でのトルクを30~50%向上させ、日常の運転で2000rpm以下でもストレスなく走らせることができます。その結果、エンジンを30%以上、小排気量化(ダウンサイジング)することに成功しています。低速トルクの向上とダウンサイジングのよる機械抵抗の低減によって、同等のパワーを持つ従来型エンジンに比べ20~30%の燃費向上を果たしています。

 

 
 

 ●1.2L TSIエンジンの特徴

 フォルクスワーゲンでは、最初に1.4L TSIツインチャージャエンジンで、TSIエンジンシリーズの開発・採用を始め、この1.2L TSIエンジンでダウンサイジングのコンセプトを実現しました(写真2。ゴルフにも搭載予定。さらに1.0Lも開発中とか)。
 このエンジンは、100PSクラスのエンジンとして、従来の1.6L DOHC自然吸気エンジン(102PS)の後継エンジンに位置付けられます(図)。次のような特徴を持って開発されました。そしてすでにポロに搭載されていた1.4L TSIシングルチャージャエンジンと同等以上の性能を1.2Lエンジンで実現しました。

軽量化とフリクションロスの低減
   1.2L TSIエンジンは、1.4L TSIエンジンに比べ24.5㎏も軽量化されました。ねずみ鋳鉄製ライナを持つ新開発のアルミダイキャスト製シリンダブロックが14.5㎏の軽量化を実現(写真3)。さらにメインベアリングの直径を42㎜に小型化したクランクシャフト(-2㎏。写真4)、シリンダヘッド(-3.5㎏)、上部がプラスチック、下部が鋳造マグネシウム製の2ピース構造となったタイミングケース(-2㎏)なども軽量化に貢献しています。
 ボア×ストローク(内径×行程)は、71.0×75.6㎜で、1.4Lエンジンとの比較ではボアのみ縮小されています。ピストンは、軽量かつ低フリクション対応を採用しており、2バルブSOHC化で動弁系が簡素化・軽量化されてフリクションが大幅に低減しています。その結果として、オイル潤滑の負荷も減り、オイルポンプが小型化されて、ポンプの駆動力も半減しています。

燃焼の改善
   2バルブSOHCで最適な燃焼を実現するために独自に開発したシミュレーション技術で、最適なスワール形成と吸気の流入特性が解析され、燃焼室形状やピストンリセス、吸気ポートが設計されました(写真5)。その結果、採用されたマスキングタイプの吸気バルブシートは、低速域でのスワール生成を促進し、シリンダ壁に固着するウォールフィルムを低減します。6穴のインジェクタからは最大150バールの圧力で、アイドリングから3000rpmのスロットル全開領域まで2段階噴射が行われ、均質な混合気の形成や冷間時の触媒の迅速な加熱に貢献しています。
 なお圧縮比は、1.4L TSIエンジンと同じ10.1:1で、1550rpmでのトルクは1.6Lエンジンに比べ46%も向上しています。

過給(ターボチャージャ)システム
   基本的には1.4L TSIエンジンと同様のコンセプトで、水冷式インタークーラは吸気マニホールドに一体化されたタイプを採用しています。
最大の変更点は、ウエストゲートの作動を機械式から電子制御式にしたことで、より短時間で過給圧を立ち上げるほか、ウエストゲートの位置を微細にコントロールできるので過給圧を一定に保持することができます(写真6)。それによって部分負荷時の燃費向上に貢献しています。このウエストゲートは、スロットルバルブ上流と吸気マニホールド内にある2個の過給圧センサからの信号で、電動アクチュエータによって操作されます。
 最大過給圧は1.9バール(絶対圧)で、1550rpm~4100rpmの広い領域で、最大トルク175Nmを発生します。なお排気バルブは、ナトリウムが封入されており、950℃までの耐熱性能を持っています。

 

 
 
 
 
 
 

 ●乾式デュアルクラッチ付き7速DSGとの組合せでエコカー対象車に

 1.2L TSIエンジンをポロに搭載するのにあたっては、日本国内の10・15モード燃費値や排出ガス規制への適合も重要な開発条件となっていました。そのために日本専用のECUが開発され、燃費は20.0㎞/L(CO2排出量116g/㎞)を達成し、排出ガスも「平成17年排出ガス基準75%低減レベル(四つ星)」となり、エコカー減税対象車となっています。これはフォルクスワーゲン車としては、4番目のモデルとなります。