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 第60回 ニッサンジュークに搭載の新型HR15DEエンジン

日産自動車㈱は,新しいスタイルを提案する新型コンパクトクロスオーバー「ジューク」を発売しました(写真1)。同車は,ノートなどに搭載されているHR15DEエンジンに量産エンジンとしては世界初のデュアルインジェクタ採用などの大幅な改良を施し,副変速機付き新世代エストロニックCVTと組み合わせたパワートレイを採用して,高剛性サスペンションとあいまって,意のままにクルマが反応する運動性能と走行安定性,快適な乗り心地を実現しています。




 ●HR15DEエンジンの改良点

 最高出力80kW(109PS)/6000rpm,最大トルク146Nm(15.1㎏m)/4400rpmと,優れた動力性能と経済性(10・15モード燃費18.2㎞/ℓ=2WD車)で定評のあった1498㏄直列DOHC4気筒のHR15DEエンジンを大幅に改良して,さらなる低燃費の実現と中低速トルクを強化して扱いやすさを向上させています。
 デュアルインジェクタを採用したのをはじめ,吸気側だけでなく排気側にも可変バルブタイミング機構(CVTC)を採用しています。
[デュアルインジェクタ]
 1シリンダあたり2本のインジェクタを設けています(図1)。このインジェクタは、ボディをスリム化し燃料噴射孔径を小径化したもので、1気筒あたり2本配置して小粒化された燃料を広角に噴射することで燃焼安定性の向上を図っています(図2)。
[可変バルブタイミング機構(CVTC)]
 ①インテーク(吸気側)バルブタイミング制御:インテークバルブの作動角を一定のまま、油圧によってカムの位相を連続的に制御します。ECM(エンジンコントロールモジュール)は、クランクシャフトポジション、カムシャフトポジション、エンジン回転数、水温、油温などの信号を受信して、走行条件に応じてインテークバルブタイミングコントロールソレノイドバルブにON/OFFデューティ信号を送信します。これによってインテークバルブの開閉時期を制御し、中低速域におけるエンジントルクと高速域における主力を増大させます(図3)。
 ②エキゾースト(排気側)バルブタイミング制御:エキゾーストバルブの作動角を一定のまま、油圧によってカムの位相を連続的に制御します。ECMは、クランクシャフトポジション、カムシャフトポジション、エンジン回転数、水温、油温などの信号を受信して、走行条件に応じてエキゾーストバルブタイミングコントロールソレノイドバルブにON/OFFデューティ信号を送信します。これによって、エキゾーストバルブの開閉時期を制御して、高速域におけるエンジントルクと出力を増加させます(図4)。
 そのほか,インテークマニホールドの径と長さの変更,エキゾーストマニホールドの径の拡大,六角メッシュの触媒セルの採用,ピストンの燃焼室形状の変更,インテークポートの形状調整によるタンブル流の発生促進,バルブリフタにDLCコーティングを採用,ピストンオイルジェットの採用などの改良が施されています(写真2、図5)。
 その結果,最高出力84kW(114PS)/6000rpm,最大トルク150Nm(15.3㎏m)/4000rpmと,性能を向上させたほか,10・15モード燃費19.0㎞/ℓ(2WD車。JCO8モード走行燃費17.2㎞/ℓ)を実現して「平成22年度燃費基準+15%」を達成したうえ,「平成17年排出ガス基準+75%低減レベル」認定も取得しています。

 
 
 
 
 
 

 ●デュアルインジェクタとCVTCによる効果

 デュアルインジェクタ(写真3)方式は,燃料噴射を1気筒あたり2本のインジェクタで行って燃焼効率を安定させます。インジェクタをスリムにすることで吸気バルブ近くに気筒あたり2本配置できるようにし,より広角に燃料を噴射するようにしています。さらに燃料噴射孔を小径化することで,噴射する燃料粒径を小さくして燃焼安定性を向上させています。
またバルブの開閉タイミングを最適に制御する可変バルブタイミング機構(CVTC。写真4)を組み合わせることで,アイドリング時,通常運転時ともに熱効率の向上や吸気抵抗の低減を図って燃費向上を実現しています。
①アイドリング時:吸気バルブの閉じる時期を圧縮行程後に大きく遅らせて,圧縮時の負荷を低減させています(図6)。
②通常運転時:吸気・排気バルブの開くタイミングをオーバーラップさせて,排出ガスを吸気側に戻して吸気抵抗を低減させています(図7)。
今後日産のコンパクトカー用エンジンとして、普及していくはずです。