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 第61回 日産マーチに搭載の新型HR12DEエンジンと副変速機付きエクストロニックCVT

日産自動車㈱は,新しいスタイルを提案する新型コンパクトクロスオーバー「ジューク」を発売しました(写真1)。同車は,ノートなどに搭載されているHR15DEエンジンに量産エンジンとしては世界初のデュアルインジェクタ採用などの大幅な改良を施し,副変速機付き新世代エストロニックCVTと組み合わせたパワートレイを採用して,高剛性サスペンションとあいまって,意のままにクルマが反応する運動性能と走行安定性,快適な乗り心地を実現しています。

写真1.フレンドリーなDNAを受け継ぎ、さらに運転のしやすさと楽しさを加えた新型ニッサン・マーチ。




 ●HR12DEエンジンの特徴

  軽量でコンパクトな新開発の1198㏄直列3気筒DOHCエンジンで、最高出力58kW(79PS)/6000rpm,最大トルク106Nm(10.8㎏m)/4400rpmの性能を発揮します。低燃費の実現と中低速の力強いトルクで、日常の扱いやすさを向上させています(写真2)。
 エンジン開発の技術は、燃焼効率を向上させることとフリクションを低減することに重点が置かれ、燃費向上を図っています。
1. 深底ピストンの採用:燃焼室のタンブル流を保存し、燃焼を安定さ   せることによりEGR量を増大することができるようになり燃費を向上しています。
2. 真円ボア加工の採用:燃焼室ボア(内径)の真円度を向上することでフリクションを低減しています。

3.

電子制御スロットルチャンバの採用:スムーズな発進アシストによって実用燃費を向上しています。
4. 大量EGRの採用:定速走行領域でのEGR量を多くすることで燃費を向上しています。
5. 3気筒化の採用:エンジンを3気筒化することで、エンジン全体のフリクションを低減し、燃費向上を実現しています。
6. オフセットクランクの採用:クランクシャフトとピストンの中心をオフセットすることでフリクションを低減しています。
7. 低フリクションオイルポンプの採用:フリクションロスの少ないチェーン駆動方式を採用しています。
  そのほか、静粛性向上のためにアフターバランサを採用して、アイドリング時の車室内への振動を低減しています。エンジンの振動のイメージを図1に示します。この振動を抑えるために図2のようにクランクプーリやドライブプレートにアンバランスマスを設け、エンジンが発する縦方向の振動を横方向の振動へ変換するアフターバランサシステムを採用しています。

 
 

 ●アイドリングストップの採用

 停車中でもエンジンが回っていると、ガソリンが消費され続けます。アイドリングストップは、信号待ちなどで停車したらエンジンを自動停止させ、ガソリンを節約するものです。
 マーチのアイドリングストップシステムは、アイドリングストップを積極的に作動させる設定になっており、常に車両の状態をモニターしています(図3)。アイドリングストップの作動に適した条件になると、メーターパネルのAUTOインジケータが点灯します。
 また勾配角±6%程度までアイドリングストップが作動します。再始動時にも車両後退抑制機能で安心して発進できます。この車両後退抑制機能は、新世代エクストロニックCVTを利用し、CVT内部で回転を一時的にロックし、再始動時に緩やかに解除させるものです。なおアイドリングストップ中は、エアコンは送風に切り換りますが、冷暖房を優先する場合はOFFスイッチで作動を停止できます。
 メーター内のディスプレィにドライブ中のアイドリングストップの積算作動時間と燃料節約量を表示しますので、エコドライブの目安として使用できます(図4)。このアイドリングストップシステム搭載車は、PURE DRIVEのステッカーが貼付され、エコカーであることを主張します。
 そのほか、アイドリングストップ中にドライバーがステアリングを進行方向に切り始めると、エンジンが再始動します。そのためドライバーの意図に沿ったスムーズな発進ができます。またブレーキの緩め方によってもアイドリングストップを制御しており、ペダルから完全に足を離す前にエンジンが再始動したり、多少の踏力の変動ではアイドリングストップを維持したりするなど、車両が適切な判断を行うことで違和感のない自然な運転ができます。
 図5にアイドリングストップシステムの概略図を示しますが、多くの関連ユニットを協調制御することで、自然に止まり、自然に発進するアイドリングストップを実現しています。

 

 
 

 ●新世代エクストロニックCVT

 従来のベルト式無段変速機に副変速機(2段変速)を加えることで、変速比幅を大幅に拡大するとともに小型軽量化、高効率化を実現しています(写真3)。
 主な特徴は、次のとおりです。

1. 従来のCVTに対して変速比幅は約20%拡大。
2. 従来のCVTに対して重量を約13%低減、全長を10%小型化。

3.

電子制御スロットルチャンバの採用:スムーズな発進アシストによって実用燃費を向上しています。
4. アイドリングストップの発進性向上に貢献。
5. 坂道でのアイドリングストップ時に車両の後退を抑制。
 図6に副変速機付き新型エクストロニックCVTの構造図を示しておきます。