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 第62回 スズキ・スイフトに搭載の新型K12B型エンジン

スズキ㈱は、世界に通用するコンパクトカーを目指して開発し、2004年11月に日本で発売を開始して以来、日本・欧州・インド・中国など世界8拠点で生産する世界戦略車のスイフトをフルモデルチェンジしました。しっかりしたハンドリングと高い走行性能、個性的でスポーティなデザイン、取り回しのしやすいコンパクトなサイズ、使い勝手のよさなどで好評を得て、世界124カ国で累計約180万台を販売してきています。

写真1.一目でスイフトと分かるシルエットは維持したまま、洗練されたデザインを採用した新型スズキ・スイフト。


新型スイフトは、軽量化と高剛性を両立した新しいプラットフォーム、吸排気VVT(連続可変バルブタイミング機構)を採用した新K12B型エンジン、副変速機付き新CVT(無段変速機)の採用などによって、スイフトの特徴である“気持ちのよい走り”に磨きをかけています。また23.0㎞/ℓ(2WD・CVT車)を実現して、全機種を環境対応車普及促進税制(エコカー減税)に適合させています(写真1)。

 ●K12Bエンジンの主な特徴

  操る楽しさを、さらに引き上げるために軽量でコンパクトな新開発の1242㏄直列4気筒DOHCエンジンを選択し、性能向上を追求しています。吸気側に加えて排気側にもVVT機構を採用して、低回転域から高回転域まで吸排気効率を向上し、徹底した低フリクション化と合わせ、エンジンの効率を高めています。その結果、最高出力67kW(91PS)/6000rpm,最大トルク118Nm(12.0㎏m)/4800rpmの性能を発揮し、リニアにトルクが立ち上がります。また大幅な燃費の向上を達成しています(写真2、図1)。
 エンジン開発に際して採用された主な技術は、次のとおりです。
 ①吸排気VVTの採用:吸気側および排気側に可変バルブタイミング機構を採用することによって吸排気効率を向上させています(詳しくは後述します)。
 ②背面平滑タイミングチェーンの採用:テンショナやガイドのフリクシ
  ョンを低減しています(図2)。
 ③テンショナ&ガイドの材質変更:摩擦係数の小さな材質に変更し
  てフリクションを低減しています。
 ④バルブ周りの軽量化:往復運動をするバルブまわりを軽量化する
  ことによって慣性力を低減して駆動ロスを低減しています。
 ⑤低張力ピストンリングの採用:シリンダを押す力を弱めてフリクショ
  ンを低減しています(図3)。
 ⑥樹脂化部品の採用:ヘッドカバーやラジエータシュラウドの樹脂す
  るなどによって大幅に軽量化しています(図4)。
そのほか、ホットフィルム式エアフローメータで直接吸入空気量を計算するマスフロー式の採用、A/Fセンサ(フロント)およびO2センサ(リア)の採用によって緻密に空燃比制御を行い排出ガスの安定化を図っています。なおCVT仕様のメータ内にエコドライブインジケータを追加しています。



 
 

 ●新採用された吸排気VVTシステム

ガソリン・エンジン車は、一般に低中速域など、あまり出力を必要としない走行時には、スロットルバルブ開度を小さくして吸入空気量を調整します。そのため吸気行程時のポンピンググロス(ピストン下降時の吸気抵抗)が大きくなります。吸排気VVTシステムは、エンジンの運転状態に応じて吸気および排気バルブタイミングを最適に連続可変することによって、燃費・出力・排出ガス性能を向上させるものです(図5)。
 また低中速域では、排気側カムシャフトを遅角させて内部EGRを増大させるとともに吸気側カムシャフトを遅角させてポンピングロスを低減させて燃費を向上させます。アイドリング域では、バルブオーバーラップを減少させることで燃焼を安定化させ、アイドリング回転数を低くさせて燃費を向上させます。なお高負荷域では、最適なバルブタイミングにすることによって吸気充填効率を向上させ、トルクが向上します。
 このシステムは、ECM(エンジンコントロールモジュール)、OCV(オイルコントロールバルブ。吸気&排気)、カムシャフトスプロケットアセンブリ(吸気&排気)、カムシャフト(吸気&排気)、クランクポジションセンサおよびカムポジションセンサ(吸気&排気)から構成されています。
 [吸排気VVTシステムの作動概要]
 ECMは、随時エンジン運転状態に応じた最適なバルブタイミング(進角量および遅角量)を決定し、OCV(図5の12)をコントロールするための制御信号を発信します。この制御信号は、OCVのスプールバルブ(図5の13)をスライドさせ、カムタイミングスプロケットアセンブリの進角室(図2の7)または遅角室(図5の6)への油路を切り換えます。この油路の切換えによって進角室および遅角室へ油圧が供給され、ロータ(図5の2)およびロータに締結されたカムシャフト(図5の3)が一体で回転します。
 ロータと一体のカムシャフトが回転することによってカムスプロケットハウジング(図5の1)との位相が変化してバルブタイミングが変化します。このバルブタイミング可変角は、吸気側・排気側ともクランクシャフト回転角度で50°です。