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 第63回 三菱パジェロに搭載のクリーンディーゼル4M41型エンジン

 三菱自動車工業㈱は、オールラウンドSUVのパジェロ(写真1)に搭載している3.2Lコモンレール式ディーゼルエンジンを改良して、ポスト新長期規制に適合したクリーンディーゼルとしました(写真2)。ポスト新長期規制は、新長期規制(平成17年規制)に比べてNOx(窒素酸化物)を40~65%、PM(粒子状物質)を53~64%低減させる世界最高水準の厳しい規制で、乗用車の新型車は2009年10月1日から、継続生産車と輸入車は2010年9月1日から適用されます。
 継続生産車であるパジェロは、この2010年9月1日までに対応したということになります。
 この結果、エコカー減税(免税)の対象になり、クリーンディーゼル自動車導入費補助金(上限額20万円)が2010年度中は受けられます。



 ●クリーンディーゼル4M41型エンジンの主な特徴

 3.2Lのコモンレール式ディーゼルエンジンの吸気ポートの形状、燃焼室形状、圧縮比(17→16)、噴射ノズル(高応答化。噴射孔数増6→8、噴孔径縮小)などを一新し、エンジンの制御の最適化(噴射パターン最適化+高精度EGR制御)で燃焼室から排出されるNOxを低減しています(写真2)。また排気系に備えたNOxトラップ触媒の改良とあわせ、NOx排出量をポスト新長期規制値の0.08g/㎞以下に抑えています。
 同時に燃費と出力/トルクの向上を図っています。燃費は、エンジン本体の改良に加え、エンジンやトランスミッションの制御を最適化し、さらに減速エネルギー回生システム(高効率発電制御)の採用などで、一部グレードでは+0.7㎞/ℓの10.2㎞/ℓ、その他のグレードでは+0.6㎞/ℓの10.6㎞/ℓに燃費が向上しました(10・15モード燃費国土交通省審査値)。この燃費は2015年度燃費基準を達成しています。
 出力/トルクは、エンジン本体の改良に加え、ターボチャージャの高効率化などで、最高出力140kW/3500
rpm(従来モデル125kW/3800rpm)、最大トルク441Nm/2000rpm(従来モデル370Nm/2000rpm)に向上しました。

 
 

 ●システム細部の改良点など

 クリーンディーゼルエンジン4M41型のシステム図を図1に示しますが、三菱自動車工業㈱ではDI-Dシステムと呼んでいます。これはダイレクト・インジェクション・ディーゼルの略です。

1. コモンレール式燃料噴射システム:燃焼を高精度でコントロールするシステムで、燃料を高圧化して供給する高圧燃料ポンプ、高圧燃料を蓄えるコモンレール(蓄圧容器)、電子制御噴射ノズル(燃料噴射装置)、その他センサ類およびこれらを制御するコンピュータで構成されています(写真3)。最大1800気圧という超高圧で霧状に噴射された燃料は、均一に燃えるので不完全燃焼が原因となるPMの発生を抑制し、排出ガスの清浄化に寄与しています。また複数回の緻密な噴射コントロールで急激な燃焼を抑えることでNOxや騒音の発生も抑制しています。そのためエンジンの回転数などによらない噴射圧力コントロールで、排出ガスのクリーン化、低騒音化、低燃費化、高出力化を実現しています。
2. ターボチャージャ:トルクフルなレスポンスを実現しており、タービンに備えた可変ノズルべーンをエンジンの低回転時には閉じ、高回転時には開くことで排出ガスの流れを制御してエンジンの全作動範囲で最適な過給を実現しています(写真4)。そのため高トルクを確保するほか、燃費低減やPMの抑制にも貢献しています。
3. NOxトラップ触媒:有害なNOx(窒素酸化物)を無害な窒素に変換するもので、排出ガス中のNOxを触媒に吸蔵させ、蓄積したNOxが飽和量に近づくと、排気燃料添加インジェクタで燃料を供給して吸蔵したNOxを無害なN2(窒素)などに還元します(写真5)。
4. DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ):燃焼行程で発生したPMの排出を防ぐものです。まずセラミックフィルタでPMを捕集し、PMが一定量堆積すると、排気燃料添加インジェクタの燃料噴射制御で排出ガスを昇温して堆積したPMを燃焼させて除去します。このDPFのクリーニング処理は、走行中に適時自動的に実行しますので、かつてのディーゼルエンジンで大気汚染の大きな原因とされたPMを、ほとんど排出しません(写真6)。
5. 酸化触媒:NOxトラップ触媒とDPFを挟んで2個装着されており、最終酸化触媒はHC(炭化水素)を吸蔵する能力をも持っているためにHCも、ほとんど排出しません(写真7)。