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 第69回 フォルクスワーゲン(VW)トゥアレグのハイブリッドシステム

フォルクスワーゲン(以下VW)の本格的プレミアムSUV「トゥアレグ」に同ブランドとしては、初めて従来のV8エンジン搭載の性能を4気筒なみの低燃費で実現した「ハイブリッド」モデルが追加発売されました(写真1)。




写真1 フォルクスワーゲンの本格的プレミアムSUVに初めて追加されたハイブリッド仕様車。


 ●ハイブリッドシステムの特徴

 トゥアレグハイブリッドは、優れたオフロード性能と高い登坂能力を実現し、ロングドライブや高速走行における効率性に優れているパラレルハイブリッドシステムを選んでいます。このハイブリッドシステムには、スーパーチャージャで過給された3ℓ直噴V6エンジン(写真2。最高出力245kW/5500-6500rpm、最大トルク440Nm/3000-5250rpm)を搭載し、8AT、4WDシステムおよびエンジンとトランスミッションの間に挟まれたハイブリッドモジュール(写真3)で構成されています(写真4)。当然アイドリングストップ機能やブレーキエネルギー回生機能も含まれています。
 10・15モード燃費は13.8㎞/ℓで、先代トゥアレグV8エンジン搭載車(6.6㎞/ℓ)とは比較にならない数値となっています。
 このシステムは、最上級のパワーユニットとして、従来型の8気筒エンジンなみのパフォーマンスを4気筒なみの低燃費で実現し、VWのダウンサイジング戦略を継続することにつながっています。


 ●各構成部品の特徴

1. ガソリンエンジン:8気筒なみのパワーとトルクを発揮し、単体でも優れた燃費効率を特徴とするインタークーラー付き3ℓ直噴V6スーパーチャージャエンジンで、過給機は90度バンク内に設置され、エンジンによって直接ベルト駆動されています。コモンレール式によって150バールでガソリンが燃焼室へと直接噴射されますが、圧縮比は10.5と高く効率化が図られています。さらに各部のフリクションロスを低減することなどで、燃料消費を抑えています。
2. モーター:エンジンとトランスミッションの間に組み込まれたハイブリッドモジュールは、34.3kWを発揮する電気モーターと乾式油圧クラッチで構成されています。直径400㎜、全長145㎜で重量は55㎏に抑えられ、走行中にエンジンの出力が不要になればデカップリングクラッチが作動し、モーターから切り離されます。エンジンの出力が必要になれば、エンジンが始動してクラッチがつながります。この制御は、緻密に行われ快適性を損なうことはありません。
3. バッテリ:ラゲッジスペースの床下には、堅牢な保護ケースで守られたニッケル水素バッテリが搭載されています(写真5)。トヨタやホンダのハイブリッド車にも使用されており、今日もっとも信頼性が高いとして採用されました。合計240個の独立したセルからなり、288Vを発生します。車内換気システムに組み込まれた補助ダクトの追加ファン2個で、高電圧バッテリを理想的な温度に維持しています。バッテリ重量は67㎏、ケースと冷却システムを含めたシステム重量は79㎏です。
4. パワーエレクトロニクス:特別な高負荷対応ケーブルでニッケル水素バッテリや電気モーターとつながるパワーエレクトロニクスは、エンジンコンパートメント内の車体助手側に置かれています。インバータは、バッテリとモーター間のコントロールユニットとして機能し、DC/DCコンバータはエアコンなどの車内用電力を供給します。なおモーター用にはDC/ACコンバータが設置されています。これらの冷却にはインタークーラー内の冷却水が用いられています。
5. 補助システム:エアコンなどの補助システムを有効に機能させるために、エアコンの冷却コンプレッサは電動で、パワーステアリングも専用の電動モーターから供給されるエネルギーで油圧ポンプを作動させています。ブレーキのサーボユニットも真空電気ポンプで作動し、ABSやESPの機能を確実に保つように緻密に制御されています。なお12Vバッテリは搭載していません。
●ハイブリッドシステムの走行モード(写真6)
このハイブリッドシステムは、4つの走行モードを持っています。
1. EV(電気自動車)走行モード:50㎞/hまでエミッションフリーのEV走行ができます。バッテリ容量など条件さえ整っていれば、そのまま最大2㎞まで走行できます。ダッシュボードのE-MODEスイッチを使えば、ドライバーの意志でEV走行を選ぶことができます。ディスプレイ上に分かりやすいエネルギーフローが表示されます。
2. ガソリンエンジン走行モード:通常の走行時や加速中はエンジンが主役。多くの状況では、モーターの出力は駆動力として使用されず、主に車内用の電力消費や一部は容量の減ったバッテリへの充電に使われます。
3. ブーストモード:高負荷の加速中には、エンジンと電気モーターの出力が、ともに駆動力として使われます。キックダウン時やシフトモードがSの状態で、アクセルペダルをいっぱい踏み込むと、短い間ですが全システム出力が発揮されます。このときは、大排気量V8エンジンなみのパワフルさを誇り、燃費は抑えられています。
4. コースティング走行モード:ドライバーがアクセルペダルから右足を離した際、エンジンはクラッチを切ることでドライブトレーンから切り離され、160㎞/hまでの速度域であれば、エンジン抵抗を受けずに滑らかなコースティング走行ができます。このとき電気モーターはジェネレータ(発電機)として働き、室内装備への電力供給を行います。ブレーキング時には、回生ブレーキシステムとしてバッテリへの充電を行います。
5.

アイドリングストップ(Start/Stop)システム:信号待ちなどで停止した場合は、エンジンも電気モーターも作動しません。ドライバーがブレーキペダルから足を離した瞬間にエンジンが再始動します。加速時には、さまざまな走行シーンに応じて、乾式クラッチを通じてエンジンとバッテリが密接に作用し合って市街地走行で25%もの燃料を節約します。