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 第70回 マツダのデミオに搭載されたスカイアクティブGエンジン

マツダ㈱は、本年度から発売する商品ラインナップに搭載する次世代技術の総称「SKYACTIV(スカイアクティブ)」の第1号である「スカイアクティブG」を搭載した新型デミオを6月30日から発売しました(写真1)。


写真1 スカイアクティブGを搭載したマツダデミオ。


 ●スカイアクティブとは?

 スカイアクティブとは、マツダの技術開発の長期ビジョンである「サスティナブルZoom-Zoom宣言」に基づいて「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」の高次元での両立をイメージした革新的な次世代技術の総称です。
クルマの基本性能であるベース技術を徹底的に改良したうえで、減速エネルギー回生システム、ハイブリッドシステムなどの電気デバイスを2015年までに段階的に導入する「ビルディングブロック戦略」を採用していて、このスカイアクティブも戦略に沿って展開されます。
主なスカイアクティブ技術は、次のとおりです。

1. 世界一の高圧縮比14.0を実現した次世代高効率直噴ガソリンエンジン=スカイアクティブG(今回デミオに採用)
2. 世界一の低圧縮比14.0を実現した次世代クリーンディーゼルエンジン=スカイアクティブD
3. 理想の変速機を追求した次世代高効率オートマチックトランスミッション=スカイアクティブ・ドライブ
4. 軽快なシフトフィールと大幅な軽量コンパクト化を実現した次世代マニュアルミッション

5.

高い剛性と最高レベルの衝突安全性を実現した次世代軽量高剛性ボディ

6.

正確なハンドリングと快適な乗り心地を高次元でバランスさせた次世代高性能軽量シャシ


 

 ●スカイアクティブGの特徴

 このたびデミオにスカイアクティブテクノロジーの第1弾として「スカイアクティブジ―13」と銘打って1.3ℓ直噴ガソリンエンジンが搭載され、マツダ独自のアイドリングストップ機構の「i-stop(アイストップ)」と組み合わされています(写真2)。その結果、10・15モード燃費は30.0㎞/ℓ(JC08モード25.0㎞/ℓ)の低燃費を実現しています。
 この新型エンジンの特徴を簡単に言えば、高圧縮比エンジンの課題であったノッキング(異常燃焼)を克服し、世界一の高圧縮比14.0を実現したことで、従来エンジン比約15%の燃費を改善し、低中速トルクを従来エンジン比約15%改善したことです(図1の性能曲線図参照)。

 

 


 ●技術的な狙いとコンセプト

1. 高圧縮比化のメリットと課題:圧縮 比を高くすれば熱効率は 大きく向上します。近年のガソリンエンジンの圧縮比は10~12程度であることが一般的です。理論的には圧縮比を10から15まで高めると、約9%の熱効率改善が期待できます。しかしながらガソリンエンジンの高圧縮比化が進まない理由としてノッキングが発生して出力が大幅に落ち込むことが挙げられます(図2)。
2. ノッキングの発生要因:燃料と空気の混合気が高温高圧にさらされることで、正常な燃焼が終了する前に自己着火を起こす異常燃焼のことをノッキングと言いますが、不快な高周波音を発生させます。圧縮比を高めると圧縮上死点付近の温度が高くなるためにノッキングが起きやすくなります。
3. ノッキング対策の着目点(残留ガスの低減):圧縮上死点温度を低減するためには、排気されずに燃焼室内に残る高温の残留ガスを低減することが効果的です(図3)。たとえば残留ガス量を8%から4%に半減すれば、圧縮比を3上げても圧縮上死点温度は同じという計算になります。スカイアクティブGでは、この残留ガスの低減効果に着目して超高圧縮比を実現しました。

 ●実際に採用された技術

1. ノッキング対策技術
残留ガスを大幅に低減する方法に、今回デミオには採用されていませんが「4-2-1排気システム」があります。排気経路が短いと、図4に示すように、3番気筒の排気バルブが開いた直後に発生する高圧の排気圧力波が排気行程を終えて吸気行程を迎えようとしている1番気筒に到達します。このため一度排出された排気ガスが、再び燃焼室内に押し戻されることで、高温の残留排気ガス量が増大します。短い排気管の場合、高圧波が他気筒へ短時間で到達するので低回転から高回転まで悪影響が続きます。長い4-2-1排気システムでは、高圧波が他気筒に伝わるのに時間がかかるので悪影響は極低回転域に限られ、ほぼ全回転速度域で残留ガスの低減を図ることができます。また実用域のトルク向上のため600㎜超の管長が必要でしたが、Loop(ループ)型排気管を採用することで省スペース化を図ることができました。この4-2-1排気システムの課題は、触媒までの距離が長いので排気ガスの温度が低下して触媒の早期活性化ができないことです。点火時期を遅らせることで排気ガス温度を上昇させることができますが、遅らせすぎると燃焼が不安定になります。このシステムは、排気量の大きいエンジンに採用される予定です。スカイアクティブGでは、始動後点火時期を大幅に遅らせてもエンジンが不安定にならない燃焼を実現しました。ピストン上面にキャビティを設け(写真3)、さらに燃料噴射を最適化して点火プラグ周りに成層混合気が生成されるようにしたことで実現させています。またピストンにキャビティを設けることで、初期の火炎がピストンに接触して冷却損失が発生する問題も解消できました。
さらにノッキングを回避するために燃焼期間を短縮することにも取り組んでいます。燃焼期間を短縮すれば、未燃混合気が高温状態にさらされる時間が短縮され、ノッキングが発生する前に正常燃焼を完了させることができます。具体的には、空気流動の強化、噴射圧力の強化、マルチホールインジェクタによる噴霧特性改善(写真4)などによって従来以上に均質で流動の強い混合気を生成しています。
2. 低温酸化反応の活用によるトルクの増大通常、圧縮比を上げるとノッキングが発生し、出力(トルク)は低下します。しかしながら、あるレベル以上に圧縮比を上げると低温酸化反応が発生してトルクの低下が起こりにくくなります。これはガソリンに含まれる分子内の結合が切れたときに生じるエネルギーによる発熱反応で、発熱分だけエンジン内部での仕事が増加するので効率向上に寄与します。スカイアクティブGでは、低温酸化反応を有効に活用するため中~高負荷領域の点火タイミングを上死点後に設定し、低温酸化反応で増加する仕事の分、トルクを増大させることができています。
3. 

軽量化と機械抵抗低減エンジンの新設計に伴って慣性重量や機械抵抗の徹底的な軽減を追求しています。往復回転系部品(ピストン、コンロッド、クランクシャフト)の小型軽量化は、レスポンスの向上に大きく寄与しています。以下に低減内用の具体例を示しておきます(図5)。
 ・ピストン&ピストンピンの軽量化=20%軽減
 ・コンロッドの軽量化=15%軽減
・ピストンリング張力の低減=37%低減
 ・クランクシャフトメインジャーナルの小型化=径6%低減、
  幅8%低減
 ・ローラーフィンガーフォロアの採用=動弁系摩擦力50%以上低減
 ・電子制御式可変油圧小型オイルポンプの採用=オイル圧送時損失約45%低減