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 第74回 スズキアルトエコのエンジン改良技術

スズキ㈱は、軽乗用車「アルト」をベースにガソリンエンジン車トップの低燃費(2011年11月現在)30.2㎞/ℓ(JC08モード走行燃費)達成した「アルトエコ」を発売しました(写真1)。



 新型MRワゴンから採用されているR06Aエンジンの改良と副変速機付きCVT(無段変速機)の見直しなどによるフリクション(摩擦抵抗)低減で燃費性能を向上させています(写真2)。
 また停車時に加え、停車直前の減速時からエンジンを停止する新アイドリングストップシステムを採用して、アイドリングストップ中でもハンドル操作することで再始動ができるようにするなどの使い勝手も向上させています。
 さらに車高を15㎜下げたうえ、形状を変更したフロントバンパーの採用で空気抵抗を低減させ、他の部品も見直して車体の軽量化と走行抵抗の低減を進め、標準車に対して30%以上の燃費向上を達成しています。


 

 ●エンジンの改良点

 MRワゴンに搭載された直列3気筒2カム4バルブR06Aエンジン(ボア62.0×ストローク68.2㎜、総排気量658㏄)を採用し、燃費性能を最大限に引き出すためにフリクションロスを低減するための対策を施し、燃費性能を向上させながらレスポンスのよい軽快な走りも実現しています。
 1.シリンダヘッドカバーを樹脂製として軽量化を図っています。
 2.M10ロングリーチ形状の点火プラグを採用してシリンダヘッドの冷却水通路の表面積を拡大して冷却性を向上しています(図1)。
 3.バルブトレインを軽量動弁システムとして、シムレスタペットおよび小型リテーナを採用し、バルブスプリングの荷重を低く設定することでカムシャフトの駆動トルク低減を図っています(図2)。
 4.タイミングチェーンにサイレントチェーンを採用して騒音低減を図ったほか、タイミングチェーンテンショナアジャスタのスプリング荷重を下げてチェーンの張力を下げてフリクションを低減し、さらにタイミングチェーンテンショナアジャスタのボデーにプランジャ固定用のストッパ穴を設けてカムシャフト脱着時の整備性を向上させています(図3)。
 5.シリンダブロックはオフセットクランク構造および樹脂製ウォータジャケットスぺーサを採用してフリクションを低減し、ディープスカート構造として高剛性のアルミ製オイルパンと組み合わせることでトランスミッションとの締結剛性の向上を図っています。
 6.クランクシャフトは、高剛性の鍛造炭素鋼製で4軸受式とし、クランクピンおよびクランクジャーナルは細軸とするとともに面粗度を向上させてフリクションを低減しています。また№1クランクと№3クランクにオフセットしたバランサウエイトを設けて振動および騒音を低減したうえ、クランクシャフトベアリングをアッパー、ロアとも狭い幅にし、内面にマイクログルーブ仕上げを施してフリクションを低減しています(図4)。
 7.オイルポンプのローターの外径を小さく設定することでフリクション低減および軽量化を図っています。
 8.ピストンにアルミ合金製ショートスカート型を採用し、ピストン下部に波型パターン状の樹脂コーティングおよび条痕仕上げを施してオイル保持性を向上させてフリクション低減を図っています(図5)。またピストンリングのファーストリングをバレルフェース型として初期なじみ性を向上するとともに外周にDCL(ダイアモンドライクカーボン)処理を施してフリクション低減を図り、セカンドリングはテーパーアンダカット型として油かき落とし性を向上させ、オイルリングはレール外周にDLC処理を施してフリクション低減を図っています。またピストンピンは、コネクティングロッド小端部との嵌合を圧入とするセミフローティングタイプを採用し、コネクティングロッドキャップのボルトは塑性域締めとしてボルト軸力の安定化を図っています(図6)。
 9.燃料ポンプコントローラを採用してポンプの電力消費を抑え燃費向上を図ったほか、吸排気VVT(連続可変バルブタイミング機構)やホットフィルム式エアフローメータで直接吸入空気量を計算するマスフロー方式を採用したり、電流センサ&バッテリ温度センサを採用してジェネレータ発電制御の判断要素とすることで燃費の向上を図っています。

 

 

 

 ●新アイドリングストップシステムの採用

 新アイドリングストップシステムは、停車時だけでなく停車直前の減速時からエンジンを停止する「減速時アイドリングストップ」機能を追加してアイドリングストップ領域を拡大して燃料消費を抑えている(図7)。またハンドル操作をしている状態ではアイドリングストップは行なわず、エンジン停止時にハンドルを操作するとエンジンは再始動する。

 その作動の概略は、次のとおりです。
 1.減速時は、Dレンジで走行中にブレーキを踏んで減速したとき、速度が9㎞/h以下になると自動でエンジンを停止します。
 2.停車時は、Dレンジのままブレーキを踏んでいる間はエンジン停止を継続(最大2分間)します。
 3.発進時は、ブレーキペダルから足を離すと約0.5秒後に自動でエンジンを再始動し、アクセルONでスムーズに発進します。
 なお、このアイドリングストップシステムには、新型スタータモーター(写真3)が採用されています(ダイハツミライースも同様)。赤信号で停車しようと減速し、停車する前に青信号となって再加速するなど、減速時アイドリングストップ中にエンジンの再始動が必要となる場合がありますが、このとき、タイミングによってはエンジン回転が完全に停止していないため、スタータモーターのギアと噛み合わず、通常はエンジンの再始動ができません。新機構のタンデムソレノイドスタータを採用することで、エンジン回転が完全停止前でもスタータモーターのギアを噛み合わせてエンジンを再始動できるようになったため、スムーズな再始動ができるようになりました。

 そのほか、小電力燃料ポンプシステムの採用のほか、リアコンビネーション&ハイマウントストップランプをLED(発光ダイオード)化することで消費電力を低減できたため、オルタネータの発電量を抑えてエンジン負荷を低減しています。