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 第77回 スバルレガシーに搭載の水平対向2L直噴エンジン

2010年に市場に投入されたスバルの新世代ボクサーエンジン(水平対向FB型)をベースに、ダウンサイジングの要望に応えて、従来の2.5Lターボエンジン以上の出力・環境性能を実現した直噴、ツインスクロールターボ、低フリクション、高出力対応技術などを融合させた2L(FA20DIT型)エンジン(写真1)がレガシィシリーズに搭載されました。


写真1 スバルレガシィに搭載された新開発の2LターボエンジンFA20DIT。



 この直噴エンジンは、従来型2.5Lターボエンジンに変わる、上質で新次元の走りを提供することを開発コンセプトにしたもので、マルチ噴射に代わり直噴(筒内直接噴射)方式を採用し、シングルスクロールターボからツインスクロールターボに変更されています。またバルブ機構は直打式DOH16バルブからロッカアーム式DOHC16バルブへ変更され、さらにタイミングベルトからタイミングチェーンに変更されています。圧縮比も9.5から10.6に高められています。これらにより最高出力は221kW(300PS)/5600rpmで、最大トルクは400Nm/2000~4800rpmとなっており、従来の2.5Lターボエンジンの最高出力210kW(285PS)/6000rpm、最大トルク350Nm/2000~5600rpm以上の性能を発揮します。そのうえJC08モード走行燃費は12.4㎞/ℓ(4WD車)と10.2㎞/ℓ(4WD車)の2.5Lエンジンを上回っています。
 これらの性能を発揮させるために採用された技術は、次のとおりです。
直噴燃焼を採用するための技術
 各運転領域に応じて理想的な燃焼を生み出すために、マルチホールインジェクタを採用し、直接点火プラグまわりの混合気を生成するスプレーガイド方式として専用設計されています。噴霧パターンは、ファストアイドルから全負荷領域まで最適化した混合気設定とし、効率的な混合気生成のために分割噴射を採用しています。また燃料噴射制御を3モード(低騒音、ノーマル、フェール)持つことで運転領域に応じた燃料噴射制御ができるようにしています(写真2)。
 高圧燃料ポンプは、左バンクに配置され、左右バンクへは並列で燃料を分配しインジェクタに供給します。この高圧燃料ポンプは、吸気カムで駆動し、燃圧15MPaをポンプ吐出量で制御します。また静粛性を考えて制御下限燃圧4MPaとしています。なお燃圧センサは右バンクに配置して、目標とする燃料脈動になるようにギャラリ容量、オリフィス径を最適設計しています(写真3)。
 燃焼室の吸気ポートは、燃焼効率の向上を図るためにタンブル指向の形状を採用し、ピストン冠面、燃焼室もタンブルを維持できるような形状として、始動・ファストアイドル時の成層燃焼および低回転から高回転までの高負荷運転時の均質燃焼を両立させ、排出ガス・出力性能を両立させています(写真4)。

  燃費性能向上のための技術
 直噴ターボの採用による基本燃焼性能の向上に加えてエンジンのフリクション低減を図って燃費を向上させています。
 吸気マニホールドやシリンダヘッド吸気ポートに直噴エンジンに最適なタンブル流が得られる形状を採用したほか、TGV(タンブル流生成バルブ)を採用して、バルブの閉時の分割面積を最適化し燃費効果を最大限に引き出しています(写真5)。
 またターボエンジンとして十分なEGR量を導入するために大容量EGRバルブ、冷却フィン内蔵EGRクーラを採用しています。これによって、各気筒へEGR分配量を最適化することでEGR導入率を大幅に向上させ、ポンピングロス・燃焼温度を低減して燃費性能を向上させています。同時にEGRガスの導入経路・導入位置を最適化することでEGR大量導入と樹脂吸気マニホールドの耐熱性との両立を図っています(写真6)。
 そのほかのフリクションロス低減技術として、ピストンコーティング2層構造固体潤滑皮膜化、ピストン系部品の軽量化、クランクオイルシールのテフロンコーティング、補機ベルトのサーペンタインレイアウトの見直し&オルタネータプーリにOAD(ワンウェイクラッチ+回転変動減衰機能付きプーリ)の採用、エンジンオイルの低粘度化などが施されています。

排出ガス性能向上のための技術
 排出ガス性能を向上させるために、直噴化による触媒昇温性能の向上、下置きターボレイアウトによる熱容量抑制、触媒容量アップによる耐久性向上などに取り組んでいます。
 下置きターボレイアウトは、従来の2.5Lエンジンを同様、触媒までの熱容量を削減させたものに、直噴化によりファストアイドル時の触媒昇温性能を飛躍的に上げ、ツインスクロールターボ化(熱容量+15%)や触媒粗密化(圧損低減)しながら昇温性能+40%を達成しています。同時に排気系レイアウト最適化で浄化性能と耐久性を両立させたうえ、従来2.5Lエンジン比触媒貴金属使用量を40%削減しています。

出力性能向上のための技術
 2.0Lでも従来の2.5Lターボエンジンを凌駕するために、制御系、吸排気系、冷却系などを進化させて出力性能を向上させています。
 制御系では、直噴の点火要求性能を達成させるために点火コイルの内部構造から全面見直しし、構成部品削減や全樹脂ボディを採用して軽量化28%を実現しながら高エネルギー化27%を実現しています。またノックセンサの位置を最適化するとともに左右バンクに、それぞれに配置してノック検出精度を向上させています。
吸排気系では、ターボ上流のダクトから吸気マニホールド間を新設計して圧力損失低減を実現し、ABV(エアバイパスバルブ)はターボ最高回転向上に伴い、耐圧力性能を向上したうえ、振動騒音対策としてダイアフラム特性も最適化しています。
 ターボチャージャは、低速域でのレスポンスと最高出力向上の両立を狙って専用のツインスクロールターボ(写真7)を新設計しています。タービン側をツインスクロール化しながら最高出力を向上させるためにウエストゲートバルブのチューニングによる圧損低減、タービン最高回転数の+15%向上とコンプレッサ大型化によってダウンサイジングしながらも従来型2.5Lターボエンジンよりも出力を向上させています。
 また排気マニホールドは、各部のレイアウトを最適化することでパイプ径を拡大し、さらに流体解析を活用して集合部形状や触媒ガス当たりを最適化して圧力損失を低減させています。
そのほか、冷却性能を強化して出力向上につなげています。