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第78回 ワゴンRに採用された低燃費技術

軽ワゴン低燃費№1新世代エコカーを開発コンセプトに、さらに便利で楽しいクルマを目指した「新型ワゴンRシリーズ」が発売されました(写真1)。


写真1 軽ワゴン低燃費№1新世代エコカーのスズキワゴンR。



 この低燃費化技術は、燃料消費を抑制して燃費向上に貢献する技術の写真2 38kW/63Nmの性能を発揮し、28.8㎞/?の低燃費を実現したR06Aエンジン。減速時エネルギー回生機構ENE-CHARGE(以下エネチャージ)と蓄冷材を通した冷風を室内に送るECO-COOL(以下エコクール)の2技術。この技術にエンジン停止速度の見直しや適切なタイミングでのエンジン再始動など、さらに制御を進化させたアイドリングストップ機能を組み合わせることで、加速性、快適性を高めながら低燃費を実現したものです。その結果、ワゴンRのNA(自然吸気)エンジン(写真2)搭載車の2WD車で28.8㎞/?(JC08モード燃費)の軽ワゴン№1の低燃費を実現しています。



 ●エネチャージの特徴
写真3 高効率・高出力の新型オルタネータを搭載したR06Aエンジンのカットモデル。  既存のアイドリングストップ車専用の鉛バッテリに加え、リチウムイオンバッテリ(写真3)と高効率・高出力のオルタネータ(写真4)を併用した独自の減速エネルギー回生機構システムで、リチウムイオンバッテリに蓄えた電気をメーターやストップランプ,燃料噴射装置などクルマの走行に必要な電装品の電力に利用します。
 リチウムイオンバッテリは、効率よく充電できるので、より多くの電気を蓄えることができます。また助手席の下に収納できる軽量小型な設計としています。
 オルタネータは、従来型の約2倍の発電能力を持つ高出力で、写真4 補助電源として採用されたリチウムイオンバッテリ(助手席下に搭載)。必要な電力の大部分を減速中に集中して発電して二つのバッテリに効率よく充電します。通常走行中は,二つのバッテリに充電した電力を電装品に供給するのでオルタネータの常時発電が最小限に抑えられ、発電させるためのエンジンの負担を軽減して燃料消費量を抑制するとともに加速も軽やかになります。







 ●エネチャージシステムの制御
 ①無発電走行時(発進/走行/加速):リチウムイオンバッテリ(補助電源モジュール)および鉛バッテリの充電状態が良好な場合、コンピュータ(ECM)はオルタネータ(ジェネレータ)の発電を停止し、リチウムイオンバッテリからエンジン電装品、ボディ電装品の各装置に電力を供給し、鉛バッテリはヘッドランプなどの高負荷電装品に電力を供給します。リチウムイオンバッテリを電源として併用することで鉛バッテリの電力消費が抑えられオルタネータが無発電の状態での走行を可能にしています。図1 アイドリングストップによるエンジン自動停止時/エンジン自動再始動時のエネチャージシステムの制御。
 ②アイドリングストップ(ENG-A-STOP)システムによるエンジン自動停止時/エンジン自動再始動時(図1):リチウムイオンバッテリからエンジン電装品、ボディ電装品の各装置に電力を供給し、鉛バッテリはスタータ、ヘッドランプなどの高負荷電装品に電力を供給します。エンジン自動停止時は、リチウムイオンバッテリを電源として併用することで鉛バッテリの電力消費を抑え、エンジン自動再始動時はスタータと電源を別にすることでスタータおよびその他高負荷電装品以外の電装品電源電圧がスタータを駆動することによって低下するのを防止します。
 ③減速(回生)時:コンピュータはオルタネータを発電させます。オルタネータの発電は、減速時(フューエルカット時)に行われるため燃料消費することなくリチウムイオンバッテリへの充電が行われます。アイドリングストップのコントローラ内部では、リチウムイオンバッテリの充電状態が規定値以上になった場合に充電回路をOFFすることで、リチウムイオンバッテリへの充電を停止する制御を実行します。
図2 減速回生時/充電量不足時のエネチャージシステムの制御。 ④充電量不足時:リチウムイオンバッテリに充電量不足を検出した場合、アイドリングストップコントローラ~バッテリ充電要求信号を送信します。アイドリングストップコントローラは、バッテリ充電要求信号を受信または鉛バッテリに充電不足を検出すると、その情報をCAN通信でエンジンコンピュータに送信します。エンジンコンピュータは、オルタネータに発電制御信号を送信し、オルタネータを発電させます。なお、リチウムイオンバッテリの充電状態が規定値以上になった場合に充電回路をOFFすることで、リチウムイオンバッテリへの充電を停止する制御を実行します(図2)。

 ●エコクールの特徴
 アイドリングストップ中、エアコンが停止して送風状態になった場合、蓄冷材を通した冷風を室内に送ることで車室内の温度上昇を抑制する機構で、エアコン空調ユニット内のエバポレータ(冷媒の気化によって冷却を行うエアコン部品)の中に短時間で凍る蓄冷材を採用しています(写真5、図3)。

図3 蓄冷材を封入したエバポレータの構造写真5 蓄冷材を封入したエバポレータのカットモデル。

 アイドリングストップ時は、エンジン停止によってエアコンコンプレッサが作動しないので、エアコンは送風のみとなってアイドリングストップ中の室内温度が上昇すると、エンジンを再始動しエアコンコンプレッサを作動させます。蓄冷エバポレータ搭載のエアコンユニットは、非搭載のエアコンユニットと比較して室内温度の急激な上昇を抑制することで、アイドリングストップ時間の延長と燃費の向上を図っています(図4)。

図4 エコクールの効果。蓄冷材封入エバポレータ搭載車と非搭載車の温度比較。