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第78回 ワゴンRに採用された低燃費技術

三菱自動車工業㈱のミッドサイズのSUV「新型アウトランダー」に、追加されたSUV初となるプラグインハイブリッド電気自動車(以下PHEV)です。これは「アイム―ブ」で培った電気自動車(以下EV)技術、「ランサーエボリューション」で鍛えた4WD技術および「パジェロ」で築いたSUVのノウハウを結集した“自分で発電する電気自動車”です(写真1)。

写真1 SUVとしては初のプラグインハイブリッド電気自動車の三菱アウトランダーPHEV。


 EVの優れた環境性能や静粛性、4WDによる走行安定性や走り、SUVならではのユーティリティを融合したもので、次のような特徴を持っています。
 ①日常は環境に優しいEV走行、遠出はモーター主体のハイブリッド走行
 ②ツインモーター4WDによる優れた走行性能
 ③最大1500Wの電気が取り出せる100V AC電源やエンジンで発電して停車中・走行中に充電できるバッテリチャージモードなど、大容量バッテリによるユニークな機能

●PHEVのシステム構成
写真2アウトランダーPHEV構成部品配置。  アウトランダーPHEVは、次のコンポーネントから構成され、それぞれを統合制御して低燃費・快適・安心な走行を実現しています(写真2,図1)。










図1アウトランダーPHEVのシステム構成図。 ①駆動用バッテリ:16.0kWh仕様のアイミーブ用バッテリをベースにPHEVシステム用として開発したバッテリを採用しています。これは80個のセルを直列に接続して、総電圧300V、総電力量12kWhの大容量駆動用バッテリを構成し、強固なフレーム構造で囲まれたバッテリパック内に収められています。
 ②モーター:これもアイミーブのモーターをベースに小型・軽量・高出力化した、最高出力60kW、最大トルク137Nm(フロント)/195Nm(リア)の永久磁石式同期型モーターを、フロントとリアに1基ずつ搭載して発進時から大きなトルクを発生し、力強い走りを実現しています。
 ③エンジン:2.0ℓ直列4気筒ガソリンエンジン(4B11型)を搭載してシリーズ走行時では発電専用とし、パラレル走行時では、主に駆動用として用いられます。エンジンの効率のよい領域で運転されますが、パラレル走行時での燃費向上のためにエンジン回転数に応じて吸気バルブの開閉タイミングを連続的に可変するMIVEC(マイベック)機構を採用しています。またエンジン作動時でもEV走行時と同様の優れた静粛性を維持するため排気音の低減やエンジンルーム内の遮音性を向上させています。
写真3 アウトランダーPHEVのエンジンルーム内の構成部品配置。  ④ジェネレータ:シリーズ/パラレル走行時やバッテリチャージ/セーブモードで、エンジンの動力で発電し駆動用バッテリに充電します(写真3)。
 ⑤トランスアクスル:フロント/リアのトランスアクスルには、複雑な変速機構を必要としないモーターの特性を生かしてシンプルな1段固定式減速機構を組み込んでいますので変速ショックのないスムーズな走りができます。またフロント用にはクラッチを内蔵し、高速走行時はエンジンを主体として走行するパラレル走行に切換えを行います。
 ⑥ツインモーター4WD:4WD制御技術やノウハウをベースに前輪はモーターおよびエンジン、後輪はモーターで、それぞれ独立して駆動させます。プロペラシャフトなどの機械的な結合がなく、モーターを使用しているため、従来の4WDシステムに比べてレスポススがよく、きめ細かな制御やフリクションロスの低減を実現しています。また前後輪の駆動力制御と左右輪のブレーキ制御を組み合わせてドライバーの操作に忠実なハンドリングと走行安定性を実現する車両運動統合制御システムS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)を採用しています。これは通常使用時のNORMALと走破性を高めるLOCKの2モードをスイッチで切り換えられるようになっています。
 ⑦回生ブレーキ機能:減速時はモーターを発電機として働かせることで回収した電気を駆動用バッテリに充電します。ブレーキペダルを踏み込むと回生ブレーキを強くする制御も採用して積極的に減速エネルギーを回収します。なお回生ブレーキの強弱をセレクタレバーで3段階、ステアリングホイールに装着したパドル式回生レベルセレクタでは6段階に調節できます。カーブ手前や山道の下り坂など状況に応じて回生レベルを選択でき、スポーティなドライビングの際も思いどおりに減速効果を調節できます。

●PHEVの作動
 充電電力使用時の走行距離60.2㎞(JC08モード)を達成しているので、日常生活はほとんどEVとして使用でき、エンジン車と同等の航続可能距離(JC08モードで897㎞)を確保しているので長距離移動やアウトドアレジャーなどSUV本来の用途にも使用できます。
 低燃費かつ快適な走行を実現するため、走行状況やバッテリ残量に応じて最適な走行モードを自動で選択します。また外部充電による電力の積極的な活用、効率の高い領域でのエンジン運転、減速時のエネルギー回収などによってガソリンの消費を極力抑えてプラグインハイブリッド燃料消費率(複合燃料消費率)67.0㎞/ℓ(JC08モード)、ハイブリッド燃料消費率18.6㎞/ℓ(JC08モード)を達成しています。
 [注]複合燃料消費率とは、プラグイン走行時(外部充電による電力を用いての走行)の燃費(プラグイン燃料消費率)とハイブリッド走行時の燃費(ハイブリッド燃料消費率)に国土交通省が定めたプラグイン走行の貢献割合(ユーティリティファクタ)を用いて複合した代表燃費値です。
図2 アウトランダーPHEVのEV走行モード作動図。
図3 アウトランダーPHEVのシリーズ走行モードの作動図。
図4 アウトランダーPHEVのパラレル走行モードの作動図。

 ①EV走行モード:バッテリに蓄えた電力のみを使用し、モーターで走行します(図2)。走行中のガソリン消費やCO2排出はゼロで、静かでクリーンかつモーター特有の力強い走行が楽しめます。
 ②シリーズ走行モード:エンジンを発電専用として動かし、その電力も使ってモーターで走行します(図3)。バッテリの電力量が低下した場合や急加速や登坂など、さらに力強い走りが必要な場合に作動します。
 ③パラレル走行モード:高速走行時は効率のよいエンジンの駆動力を主体に走行します(図4)。加速・登坂などさらに力強い走りが必要な場合にはモーターの駆動力がアシストします。

●大容量バッテリ搭載によるユニークな機能
 100V AC電源(1500W)は、車載コンセント(車内2個所に設置)から交流100Vを最大1500Wまで出力することができ、アウトドアレジャーや非常時において、各種家電製品へ電力を供給することができます。目安として、バッテリのみで一般家庭の電力消費量の約1日分相当(試算値)で、エンジン発電を含めると最大で約10日分相当の電力供給ができます(メーカーオプション)。
 スイッチ操作によりエンジンで発電し、停車中・走行中に電力を蓄えることができる「バッテリチャージモード」(停車中の場合は約40分で約80%まで充電できる)や蓄えた電力を保持したまま走行する「バッテリセーブモード」を採用しています。蓄えた電力は、移動先でのEV走行モードで使用したり、給電機能で活用できます。