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燃料電池車は普及するか


燃料電池車の普及はいつ?

写真-1  「究極のエコカー」と称される燃料電池車がいよいよ手の届く価格で市場に投入される。トヨタ自動車が2014年度中にセダン型の燃料電池車を車両価格700万円で発売すると発表。国が200〜300万円の購入補助を出す方針を示しており、購入者の負担は500万円程度で済む見通しだ。1台1億円と言われた燃料電池車が、高額とはいえ、常識的な価格で購入できるようになるが、普及には課題が多そうだ。
  トヨタが発売する燃料電池車は、航続距離が700km以上、最高速度は時速170辧エネルギーとなる水素の充填の時間も3分と、車としての性能や利便性に申し分ない。最大の特徴が排出ガスゼロ、二酸化炭素排出ゼロという環境性能であり、これが究極のエコカーと言われるゆえんだ。
  トヨタは20年以上前から水素と酸素を反応させて作り出す電気を動力源とする燃料電池車の開発を進めてきた。量産化への最大の開発課題は、水素と酸素を反応させて電気を作り出す燃料電池本体のコスト。触媒にプラチナを使っていることがコスト高の原因だ。高圧水素タンクの搭載場所も確保しなければならない。トヨタは燃料電池、水素タンクともに自社開発し、大幅な低コスト化を実現した。700万円という価格での販売を可能にしたことで、今後は普及に向けた課題を官民挙げてクリアしていく段階に入る。
  直近の課題は水素供給インフラの構築だ。政府と自動車メーカーでは、2015年に国内100カ所に水素ステーションを整備する方針だ。その後は車両の普及とともに商業ベースに乗り、自律的にステーションが増えていくことを想定している。
  水素ステーションの普及は簡単ではない。常温で気体、しかも最も軽い元素の水素を封じ込めておくには水素を冷却し、圧縮した状態で貯蔵しておく必要がある。

水蒸気改質型の水素供給設備(JHFC 横浜・大黒水素ステーション)

写真2 小さな隙間でも通り抜けてしまうので、貯蔵しておくタンクも密閉度の高い高価なものが必要だ。こうした設備を揃えるとステーションの設置コストは数億円に上る。ガソリンスタンドの経営はガソリン需要の減少でただでさえ厳しく、水素ステーションへの投資は負担が重い。燃料電池車がいつ、どれくらい普及するのかという明確な見通しも今のところないなかでの投資は、一層ハードルが高い。ただ、インフラがなければ車は売れないという現実もある。まさに、「卵が先か鶏が先か」という問題に突き当たる。
 水素を車のエネルギーとして利用することが適当なのかという、根本的な問題も指摘される。水素を作り出すのに大きなエネルギーが必要なことや、運びやすいよう液化するにはマイナス252℃という超低温にする必要があるなど輸送にコストがかかる。本格的に普及させるには車両価格をもっと引き下げなくてはならず、プラチナを使わない燃料電池を開発する必要があるとの指摘もある。プラチナの使用量は引き下げても、使用量ゼロという燃料電池はまだ開発されていない。究極のエコカーというだけあって、それなりに克服すべき課題もまだ多いということだ。
写真-3   トヨタは14年度中に初の量産燃料電池車を日本で発売し、15年夏には欧米市場にも投入する。日本ではトヨタ店、トヨペット店で販売するが、生産・販売台数は明言していない。普及期は2020年とし、年間数万台という規模を想定している。ハイブリッド車と違い、インフラを一から作らなければならない燃料電池車の普及には、相当の時間がかかるとトヨタも見ている。
  世界の自動車の市場を見ると、新興国の台頭により、価格の安い内燃機関の時代がまだ長く続くと見られている。エンジンの熱効率の向上の可能性が改めて見直されているほか、欧州メーカーが先行する過給ダウンサイジングエンジンも広がりを見せている。このような中で燃料電池車が本当に売れるのだろうかとの疑問も出てくる。
  だが、環境負荷低減は自動車の変わらぬ課題であり、自動車メーカー各社が開発を続けている。15年にはホンダ、17年には日産自動車が量産価格での燃料電池車を発売する予定だ。欧米の自動車メーカーも、ダイムラーとフォードモーターが日産と、ゼネラルモーターズがホンダと、BMWがトヨタと連合を組んで燃料電池車の開発に取り組んでおり、グローバルメーカーの究極のエコカーへの開発意欲は衰えていない。数々の制約を乗り越え、自動車業界に燃料電池車ブームが訪れるのはいつだろうか。