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独ZFが米TRWを買収、
日本の部品メーカーへの影響は?


独ZFが米TRWを買収、日本の部品メーカーへの影響は?

 ドイツの部品メーカー、ZF フリードリヒスハーフェン(以下ZF)はアメリカの大手部品メーカー、写真1TRWオートモーティブ(以下TRW)を買収することで合意したと発表した。買収により年間売上高が300億ユーロ(約4兆1千億円)と、ロバート・ボッシュ、デンソーに続く世界第3位の部品メーカーが誕生する。メガサプライヤーの一角を占める2社の統合は先進技術をめぐるサプライヤー同士の競争激化をうかがわせる。
  ZFは1915年に創業し、自動変速機、シャシー部品を主力とする部品メーカー。年間売上高は168億ユーロ(約2兆3千億円)とドイツの部品メーカーとしてはボッシュコンチネンタルに次ぐ第3位の規模がある。最近では世界初の9速ATを開発したことで話題になった。従業員数は7万2600人で、世界26か国に122の事業所を持つ。
  TRWは1901年にエンジンバルブのメーカーとして創業。一時は航空機産業なども含む複合企業になったが、2003年に自動車部門が独立した。車両統合制御、運転支援システム、ブレーキシステム、ステアリングシステムなど車両制御製品に強みを持つ。年間売上高は174億ドル(約2兆4千億円)、従業員数6万5千人で事業拠点を24か国に展開し、事業規模はZFとほぼ同規模だ。
 ZFはTRWを買収・合併することにより世界の2大市場である米国、中国での売上高が倍増する。地域別の売上高比率は欧州50%、北米、アジア太平洋、その他地域が合わせて50%となり、「高級車セグメントと量産車セグメントのバランスのとれたポートフォリオが実現する」(ZF)としている。
  2社の製品を比べると、今回の買収・合併が単なる規模追求や生産地域補完といった目的ではないことが分かる。製品・技術領域を広げ、ボッシュ、コンチネンタル、デンソーのようなシステムサプライヤーになる野望も垣間見える。特に次世代の自動車技術は、事故を起こさない、ドライバーの負担を軽減するといった目的での自動走行技術が進化していく。センサーでものを見てコンピューターが状況を判断し、正確に車を動かす総合的な技術が必要だ。
  世界の大手自動車メーカーが開発にしのぎを削っている自動走行技術だが、サプライヤーとして開発に参画するには、自動車の総合的な技術を持つシステムサプライヤーでなければ難しい。これが可能なのは、今はボッシュ、デンソー、コンチネンタルの3社だけと言われている。TRWは自動走行に必要なセンサーや制御システムを持っている。ZFはTRWを買収することにより、自動走行の関連技術を手中に収めることができる。
  今回の買収は、日本の部品メーカーにとって決して海の向こうの話ではない。両社とも日本の自動車メーカーとの取引があり、合併によってシステムの開発力が高まれば、日本の自動車メーカーにとっての存在感がより高まる可能性があるからだ。
写真2  特にホンダの最近の動きがそれを示唆している。新型「オデッセイ」に採用された電動パワーステアリングとショックアブソーバーは、系列のショーワ製ではなくZF製を採用した。さらに、北米アキュラブランドのコンセプトモデル「アキュラTLX」に搭載される9速ATはZFの技術と見られる。
  ホンダは2020年に向けてメガサプライヤーとの取引を大幅に拡大していく方針を示しており、ZFとの取引拡大もその一環だろう。ホンダは独シェフラーのデュアルクラッチトランスミッション、米ジョンソンコントロールズのシートなど、海外で系列外のサプライヤーとの取引を増やしている。ホンダの系列サプライヤーにとって、強力な海外サプライヤーがまた一つ誕生することの影響は小さくない。
  ZFのTRW買収により、世界の自動車部品メーカー上位5社のうち3社がドイツ勢ということになる。自前主義が強い日本勢も買収を通じて事業内容を早期に拡充し、自動車メーカーのニーズに先回りして応えられる開発体制をとらなければ競争力の低下は免れないだろう。