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円安効果で過去最高


円安効果で過去最高

 自動車メーカーの2014年度業績は、円安の進行により、ほとんどの企業で増収増益を確保しそうだ。多くのメーカーが売上高や利益見通しを上方修正し、トヨタ自動車では売上高、利益ともに過去最高を更新するとともに、営業利益率は10%に達する見通しだ。ただ、売り上げ台数見通しはトヨタのほか、日産自動車、ホンダなどが下方修正した。日本での販売回復の遅れと中国市場の減速が影響すると見られる。
 上場メーカー8社(ダイハツ工業と日野自動車はトヨタ自動車に含む)の2014年4〜12月決算は、ホンダといすゞ自動車を除く6社が増収・営業増益となった。このうち、トヨタ自動車、スズキ、マツダ、富士重工業、三菱自動車は営業利益が過去最高に。世界売り上げ台数の増加に加え、前年同期に比べ、ドルやユーロに対する円安が進んだことに伴い、為替換算差がプラスに働いた。
表1   一方、トヨタグループのダイハツ工業や日野自動車が減収・減益となったほか、ホンダやいすゞ自動車では利益が減少した。ダイハツは軽自動車市場での競争激化に加え、インドネシア市場の減速が響いた。日野自動車も海外やトヨタ向けの販売台数が減少した。ホンダは品質再点検による新車投入スケジュールの遅れや、軽市場での競争激化が影響し営業減益。いすゞはタイ市場の低迷で営業利益、当期純利益が減少した。
 通期の業績見通しでは円安効果がさらに鮮明になる。多くの企業が1〜3月の為替の前提を1ドル=115円としたことで、通期の売上高、利益の見通しを上方修正した。トヨタ(ダイハツ・日野を含む)は売上高を前年同期比5.1%増の27兆円、営業利益は同17.8%増の2兆7千億円、当期純利益は同16.8%増の2兆1300億円にそれぞれ上方修正し、いずれも過去最高を更新する。
 トヨタは営業利益予想を中間決算発表時点に比べ2000億円引き上げたが、このうち1750億円は円安によるものだ。通期の為替の前提を中間決算発表時点の1ドル=104円から109円、1ユーロ=135円から139円に円安方向に見直したことで利益が膨らむ。ホンダ、日産、マツダ、富士重工業も売上高を上方修正し、日産、富士重は営業利益も上方修正した。
 トヨタは好業績を踏まえ、サプライヤーに対する半期に一度の部品価格の値下げ要請を、14年度の下期に続き、15年度上期も見送る方針だ。デフレ脱却、経済の好循環を目指す安倍政権に配慮し、サプライヤーよりも先に、首相官邸に方針を伝えた。円安による大企業の好業績を日本の隅々にまで行き渡らせたいとする政権の経済政策に沿ったものだ。しかし、海外に進出できない中小企業は、そもそも国内生産の減少によって厳しい経営環境にある。一時的に部品価格の値下げを見送ったからといって、中小が給与のベースアップなどを行えるか不透明だ。 表2
 今期は円安によるプラス効果を見込む一方で、売上台数見通しでは、やや陰りが見られる。トヨタ、日産、ホンダなど6社が通期の売り上げ台数見通し(日産は販売台数)を下方修正。トヨタは900万台(前期比1.3%減)、日産は530万台(同2.2%増)、ホンダは365万台(同2.5%増)、マツダは140万台(同5.2%増)、富士重は90万6千台(同9.8%増)、三菱自は129万8千台(同3.2%増)にそれぞれ引き下げた。トヨタは前年同期の実績も下回る見通しだ。
 台数見通しの下方修正は、主に、日本と中国の見通し修正によるものだ。日本では14年4月の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減からの回復が遅れている。中でもホンダは、新型「フィット」シリーズの度重なるリコールに伴い、品質の再点検を実施。新車投入スケジュールがそれぞれ半年程度遅れていることや、それによる来店数の減少で、既存車の販売にも影響が出ている。
 一方、中国では、経済成長の減速を背景に、自動車市場の成長率が鈍化している。特に日本車の販売が減速しており、欧米メーカー車にブランド力の差がついているとも見られている。中国事業を戦略的に強化しているホンダや日産では、中国市場での競争力向上、ブランド力強化に向けた施策が急務と言えそうだ。
 世界の自動車市場で唯一好調なのは米国だ。原油安によって大型のピックアップトラックやSUVなども売れ始めている。その他の地域では、タイ、インドネシアの低迷、中国の減速に加え、ブラジルやロシアといったBRICSの一角が不振で、15年度も米国頼みの状態が続く可能性が高い。