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国際仲裁裁判所が裁定、
VWにスズキ株を手放すよう指示


国際仲裁裁判所が裁定、VWにスズキ株を手放すよう指示

スズキ、フォルクスワーゲンスズキフォルクスワーゲン(VW)の提携に関わるいざこざがようやく決着した。8月29日に国際商業会議所国際仲裁裁判所(英ロンドン)による裁定が出て、スズキの求め通りスズキ株を手放すようVWに命じた。2009年12月に東京で華々しく業務・資本提携を発表した両社だが、その直後から両社の関係はぎくしゃくし始め、スズキ側が資本関係の解消を申し入れていた。
 スズキとVWが提携を発表したのは、08年9月のリーマンショックの影響から自動車業界がようやく立ち直ろうとしていた頃だ。VWが世界一を目指して拡大路線を掲げる一方、スズキはゼネラルモーターズ(GM)との資本提携を解消したばかりだった。スズキの次の提携先が注目されるなかで、日本メーカーとして初めてVWとの提携に踏み切り大きな話題を呼んだ。
 しかし、ボタンの掛け違いはすでに提携当初から始まっていたようだ。スズキはVWの連結対象とならないよう出資受け入れを発行済み株式数の19.9%にとどめ、イコールパートナーであることを強調し、VWもこれに同意していた。ところがVWは11年3月に公表した決算報告書で、スズキを「財務的にも経営方針的にも重要な影響を与える関連会社」と位置づけた。徐々に支配色が強まってきたことにスズキが警戒感を示し始めたのはこの頃だ。
 業務の面でも両社の認識の食い違いが露呈し始めていた。その一つがディーゼルエンジンの扱いだ。スズキはディーゼルエンジンをルノーフィアットから調達してきた。しかし、提携に基づいてVW製に切り替えると、そのエンジンを搭載したモデルを他社にOEM(相手先ブランドによる生産)供給できなくなるという制約がかけられた。提携がスズキのビジネスの足かせになるとして、スズキは11年6月にフィアットから新たに1.6リットルディーゼルエンジンを調達すると発表。VWは「契約違反だ」と非難した。
 次第に両社の対立関係は深まり、スズキはついに11年9月にVWとの提携を解消すると発表。19.9%の保有全株を手放すようVWに申し入れた。しかしVWは「スズキは魅力的な投資先である」として徹底して応じず、しびれを切らしたスズキが同年11月に国際仲裁裁判所に仲裁の申し立てを行った。約4年を経てようやく出た裁定の内容は、VWにスズキ株全株を手放すことを命じスズキの主張を認めたが、一方でディーゼルエンジンに関しては、スズキに契約違反があったと、VWの主張を認める内容だった。いずれにしても今回の裁定を受け、名実ともにスズキ・VWの提携関係は解消されることになる。
 スズキはGMに次ぐ後ろ盾を得ようとVWを選んだが、結果的に相手先の選定に結果的に失敗した。GMとのゆるやかな提携を長年経験してきたスズキにとって、強いものが支配するというVWのやり方をよく理解していなかった面があったことは否定できない。株を取り戻すための費用は4千億円以上。さらにディーゼルエンジンに関する契約違反を指摘された件については違約金の支払いが発生する可能性もあり授業料というには代償は大きい。
 ただ、スズキはVWと提携した理由である環境対応技術について、軽自動車や小型車に合った電動化技術を自ら開発し始めている。軽自動車では制動時の回生エネルギーをリチウムイオン電池に貯め、エンジンの駆動力をモーターでアシストする「Sエネチャージ」を開発して「アルト」などに搭載。

【Sエネチャージの仕組み】
Sエネチャージの仕組み

さらにこのシステムをマイルドハイブリッドシステムとして新型「ソリオ」に搭載した。当面の燃費向上技術を自ら手中に収めている。マニュアルトランスミッションの変速操作を自動化した「オートギアシフト」や、ディーゼルエンジンも排気量800ccの2気筒エンジンを開発しインド市場に投入した。
 それでもスズキには提携先が必要だとの指摘がある。それば電動化や自動運転といった、より高度な技術競争がこれからの自動車メーカーには求められるからだ。とはいえ、新しい技術や装備は時間が経てば価格は下がり、採用しやすくなる。スズキは提携に懲りたのか、当面、自主自立路線を志向するとしている。この方針を貫くためには、自ら技術開発力を磨き、したたかに生き残っていくことが必要だ。




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