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VWのディーゼル排ガス不正
業界への影響は?


フォルクスワーゲンのディーゼル排ガス不正、影響はどこまで?

フォルクスワーゲン  独フォルクスワーゲン(VW)がディーゼル車の排ガス検査で不正を働いていたことが発覚した。VWは信頼の失墜を免れず、すでに欧米では販売への影響が出始めている。各国はディーゼル車の排ガス検査を強化するとし、国土交通省も審査の方法の見直しを検討するとしている。一つのメーカーの不祥事が自動車業界全体に波及し始めている。
  VWが行っていた不正は、走行中に排ガス浄化レベルを引き下げる「ディフィート(無効化)プログラム」を電子制御装置のソフトウエアに搭載していたことだ。このプログラムは欧米では使用が禁止されているが、VWはこのプログラムを使って排ガス試験を不正にパスしていた。
  問題が発覚したのは米国だが、VWは不正プログラムを搭載した車両を欧州を中心に世界で1100万台販売していた。最も台数が多いのがドイツで280万台。次いで英国、フランス、スペイン、スイスなど欧州全域に広がっている。不正プログラムは欧州の一つ前の排出ガス規制「ユーロ5」(2009 〜14年)対応エンジン「EA189」型を搭載した「ゴルフ」「ビートル」「アウディA3 」「パサート」に適用され、2009年〜15年に発売された。シュコダ、セアトといったVWの他のブランド車も該当する。問題を受けてスイスなどが該当車両の販売を停止する措置に動き出している。
  ディフィートプログラムは日本でもいすゞ自動車が排ガス浄化フィルターの保護を目的に導入していたことで改善対策を迫られたことがある。VWは現行の欧州排出ガス規制「ユーロ6」は適正に規制をクリアしているとしており、なぜ、ユーロ5で不正を行ったのか原因はまだはっきりしていない。しかし、トヨタ自動車と世界首位を競うVWの不正行為は、自動車業界全体に不信の種を蒔いてしまったと言える。
 日米欧の規制当局では早速、検査手法の見直しの検討に入った。シャシーダイナモ上での台上検査だけでなく、路上走行中の排ガスも測定しようというものだ。日本でも太田昭宏国交相が9月29日に審査の見直しに言及した。DPFイメージ図ディーゼル車は排ガス浄化が難しく、DPF(ディーゼル微粒子除去装置)や窒素酸化物(NOx)後処理装置など、排ガス浄化装置の導入だけでもコスト増となっている。審査が強化されるとその分の費用が増えることになり、ユーザーの負担増は必死だ。
 今回の問題でVWの失速は免れない。同社は日米の自動車メーカーが世界金融危機による販売台数減に喘いでいた08〜09年、世界販売台数を18年に1000万台に拡大すると表明した。ゼネラルモーターズとの資本提携を解消したスズキとの提携発表もちょうどこの頃、09年12月のことだ。その後、VWは中国を中心に台数規模を拡大し、1000万台の目標を4年も早い14年に達成してしまった。この急激な拡大志向が不正の温床になったと指摘されている。
  VWにはリコールや民事訴訟などで2兆円もの巨額の費用負担がのしかかると言われている。すでに欧米では新車販売台数に影響が出始めており、覇権を世界に広げようと拡大路線をひた走ったことの代償は大きい。
ガソリン車とディーゼル車のCO2排出量   今回の問題は厳しい排ガス規制が背景にあるだけに、ディーゼル車や排ガス規制そのものへの信用が失墜する恐れも否定できない。ディーゼル車はガソリン車に比べエネルギー効率が高く、地球温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)の排出が少ない。原油からガソリンを生成する際に必ず出てくる軽油を燃料としており、日本のエネルギー政策上でも有効だ。このため、最大の欠点である排ガスの削減に向けて規制が強化され、自動車メーカーはこれをクリアするために知恵を絞ってきた。
  最近は日本でも日産自動車、マツダ、三菱自動車、トヨタ自動車がディーゼル乗用車を投入し始めており、東京都が1999年に始めた「ディーゼル車ノー作戦」以降のディーゼル離れから、ようやく復活し始めたところだ。VWの不正のために、ディーゼルはクリーンではないのではないか、という不信がユーザーの間に広がると販売に影響が出かねない。
 VWは10月30日から一般公開が始まる「第44回東京モーターショー」に来年発売予定のディーゼル車の出展を見送ることを決めた。VWの"自滅"によって、ダイムラーやBMWといった競合他社は自社のディーゼル車を売り込むチャンスと見ているが、ユーザーの志向が再びガソリン車やハイブリッド車に傾く可能性もある。





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