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トヨタとスズキ、提携へ


トヨタとスズキ、提携へ

トヨタ自動車スズキが12日、提携に向けた交渉を始めることで合意したと発表した。スズキはゼネラルモーターズ(GM)との資本提携を2008年に解消し、フォルクスワーゲン(VW)との資本業務提携にも失敗して新たな後ろ盾を求めていた。一方、トヨタは8月にスズキのライバルであるダイハツ工業を完全子会社化した。お膳立ては整い、日本自動車産業で最後の大きな提携が実現する。 TOYOTA SUZUKI
 両社が発表したプレスリリースにはスズキの鈴木修会長のコメントとして「豊田章一郎名誉会長にまず相談させて頂き、豊田章男社長にも協業に関心を示してもらった」と提携合意の経緯が記されていた。トヨタ東京本社で開いた会見でも修会長は「自動車をめぐる技術競争は急速に変化している。伝統的な技術を磨いていくだけでは将来が危ういことを理解している。悩みを時々、豊田章一郎名誉会長に聞いてもらっていた」と打ち明けた。
 修会長が具体的に動いたのは9月に入ってからだという。「具体的にトヨタさんのご協力を得られないか、思い切って名誉会長に相談したところ、協力に向けた協議だけはしても良いのではないか、と言って頂いた」(修会長)。その後、「先週、豊田章男社長とも相談する機会があり、スズキとの協業に関心を示して頂いた」(同)と経緯を説明した。
 章男社長が修会長にこの件で会ったのは「稼働日にして2日前」(章男社長)。父親の章一郎氏からは事前に「修さんに会ったよ、という一言だけ」を聞かされていたという。提携交渉入りの合意は、事実上、章一郎・修という自動車業界の重鎮2人の間の阿吽の呼吸で決まった。 トヨタFCV ミライ
 トヨタはスズキとの提携の背景について技術の標準化などでの「仲間づくり」が必要だとしている。「自動車の技術をめぐる環境は大きく変化している。1社のみの技術開発では限界がある」(章男社長)と、VWやGMと世界一を競うトヨタでさえ、単独では激変の波を超えられないと見ている。
 ただ、提携の意味合いがより大きいのは、スズキの側だろう。スズキには2008年までの27年間、GMという後ろ盾があった。GMとはカナダでの合弁事業や湖西工場での「シボレークルーズ」の生産などの協業も行ってきた。「車づくりはGMから教えてもらった」(修会長)というように、子弟といっていいほどの関係にあった。
 ところが2000年代の前半にGMの経営が怪しくなるとスズキに保有株式を売り、さらに08年9月のリーマンショックを契機にした経営破綻によって、スズキ株全株を手放した。GMはスズキにとって将来技術を共有してもらえる頼れる後ろ盾だった。GMもスズキを支配しようとはせず、両社の関係は良好だっただけに、資本関係の消滅はスズキの足元を揺るがした。
 そこに食指を伸ばしたのがVWだった。09年12月に電撃的な提携発表が東京で行われたが、覇権主義のVWと経営の独立を主張するスズキとの相性が合わないことは、当初から懸念されていた。案の定、両社の関係は国際仲裁裁判所に裁定を委ねるまでにこじれた末に、15年に白紙に戻った。
 スズキ株を最後まで手放そうとしなかったVWの呪縛を解き、ようやく自由の身になったスズキにとって、残された合理的な提携先としての選択肢はトヨタしかなかった。修会長は「お兄さんのような存在」という章一郎氏には悩みを打ち明けることができた。
 トヨタ側にしてみても、ダイハツ工業を8月に完全子会社化した後だけに、修氏の提案を受け入れやすかった。グループにダイハツを持つ以上、そのライバルであるスズキと提携する意味合いを株主などのステークホルダーに問われかねないところだが、完全子会社化した上でダイハツに、「新興国向け小型車戦略の中核」という新たな役割を与えた。
 トヨタとスズキがどのような業務提携を行うのか、あるいは資本提携にまで発展するのかは、これからの協議次第だと修会長、章男社長は口を揃える。ダイハツとスズキを合わせて6割という軽自動車市場でのシェアが独占禁止法上、どのように問題になるのかも不明で、全ては「これからゆっくり考える」(修会長、章男社長)という。 トヨタ ピクシス
 軽自動車がどうなるのかも注視される。修会長は「軽の規格と提携交渉とは関係がない」と言い、章男社長も「日本の道に合った規格であればそれはそれであってもいいのではないか」という。しかし、トヨタがダイハツ、スズキという2大軽メーカーを手中に収めることになれば、“軽自動車嫌い”のトヨタが軽自動車の戦略にも関われるようになる。国内市場で何がこれから起きるのかを注視していく必要があるだろう。





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