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日産が不適正な完成検査。再発防止策も現場に届かず


日産が不適正な完成検査。再発防止策も現場に届かず

 新車の完成検査で日産の不手際が続いている。国内全6工場で社内資格を持たない作業者が完成検査を行っていたことが明るみに出たのに続き、実施されていたはずの対策が4工場で行われていなかったことが判明した。経営の指示をなぜ現場は実行できないのか。原因の徹底した究明が必要だ。
 「日産の再発防止策を信頼して頂いた皆さまにお詫びする」。日産の西川廣人社長兼CEOは10月19日に本社で開いた緊急記者会見で、こう言って頭を下げた。栃木、追浜、日産自動車九州、日産車体湘南の4工場で、不適切な完成検査が続いていたことが判明したためだ。
 日産では社内で認定した完成検査員以外の作業者が完成検査を行っていたことが9月に判明し、完成検査員以外が完成検査を行ってはならないとする指示を各工場に徹底していたはずだった。しかし、4工場では引き続き、無資格の作業者が完成検査を行っていたことが10月17日夜に社内調査で判明。完成検査が完成検査ラインとは異なる商品性検査ラインやオフライン検査で行われていたことも分かった。
 完成検査工程を変更した場合は30日以内に国交省に届け出なくてはならないのに、追浜ではそれもしていなかった。西川社長は「私としても残念。対策の不徹底としか言いようがない」と釈明した。
 経営が指示した対策が現場で実行されていた理由について、西川社長は「(完成検査員の)判子の貸し借りや完成検査工程と他の工程の混在、その中で資格を持っていない作業員による作業が長年、常態化していた。ダメと言われた時に、ダメと分かっていても手が出なかったことが散見される」と説明した。
 その上で、「長年の癖を抜くために、ハード面も含めたがんじがらめの対策を行う」とし、全6工場の完成検査ラインの集約と完成検査員以外が立ち入れない仕組みを導入することを明らかにした。 工事は順次、生産を止めて行い、全体として完了するのは2週間程度としている。
 この間、国内向けの生産と出荷が止まることになり、販売にも影響が出ることが確実だ。特に社運をかけた電気自動車(EV)、新型「リーフ」を発売したばかりだけに打撃は大きい。国交省の監査を受けて再稼働するため、国内向けの生産が正常化するのは2週間以上かかる可能性もある。
 4工場で不適正な完成検査を行った新車は合計3万4千台。このうち在庫車3万台は日産販売店の指定工場で再点検する。購入者に納車済みの4千台については点検のためのリコール届出を検討する。
 日産の問題が発覚し、国交省は他の自動車メーカーやインポーターにも同様の事例がないか確認するよう指示を出している。この中で、スバルも完成検査員ではない作業者が完成検査を行っていたことが判明した。 国交省に提出している完成検査要領には完成検査員が完成検査を行うと記載していたが、業務規定では現場経験を認定の条件としていたため、異なる運用となっていた。すでに10月3日時点で修正したが、初回車検を迎える前の25万5千台について、点検のためのリコールを届け出る。
 スバルの吉永泰之社長は「30年以上続けてきた。悪意はなかった」と釈明したが、結果的にルール違反だったことに「経営者として責任を感じている」と陳謝した。トヨタ自動車などその他の乗用車メーカーは社内調査の結果、問題がなかったとしている。
 日産でなぜ、再発防止策が徹底できていなかったのか。西川氏は「製造現場を運営する係長とその上の課長の間のコミュニケーションに想定以上のギャップがあった。ここに大きな落とし穴があったのではないか」と説明する。現場の要望が上に伝わらないという組織的な問題が不適正な行為につながった可能性がある。
 日産の完成検査員は300人だが、日産と同規模の国内生産台数のメーカーでは2倍の人員がいるメーカーもあり、人員不足だった可能性がある。西川氏は「完成検査員を増やしていく。人数が足りないところは生産スピードを下げ、作業の負荷を下げて運営していくことも考えていきたい」という。現場の状況を課長や部長、そして工場長が認識しないまま、工場が運営されてきた実態は信じがたい。
 日産は1999年のリバイバルプラン以降、カルロス・ゴーン社長(現会長)の陣頭指揮で再生した。完成検査の不正は、現場に関心を持たない官僚主義の日産の悪しき体質がいまだに変わっていない証左ではないか、との指摘も業界内にはある。
 折しも、自動車業界では神戸製鋼所の品質データ改ざん問題でも対応に追われている。 アルミ板については各社が安全性への問題がないと確認したものの、銅製品や鉄鋼製品についてはまだ調査中だ。日産は国交省に第三者を含む調査チームによる原因調査の結果を報告することにしている。日産もスバルもブランドの信用低下は免れず、今後の販売への影響が懸念されている。