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トヨタ、ホンダが新たな電動化戦略を発表、その狙いは?


トヨタ、ホンダが新たな電動化戦略を発表、その狙いは?

 トヨタ自動車ホンダが新たな電動化戦略を相次いで発表した。トヨタは 電動化技術に関わる特許を無償開放し、ホンダは2モーターハイブリッドシステムを小型車にも展開していくと発表した。欧米や中国をはじめ、車は電気自動車(EV)への移行が潮流になっている。両社の戦略の背景や狙いはどこにあるのだろうか。
 トヨタは4月3日、電動化に関わる特許約2万3740件を2030年末まで無償で解放すると発表した。1997年発売の初代「プリウス」以来、ハイブリッド車(HV)の開発で培ったモーター、パワーコントロールユニット、エンジン、トランスアクスルなどの技術特許を無償で提供する。(記者会見動画
 トヨタは燃料電池車(FCV)「ミライ」を発売した15年、FCVの特許を20年末まで無償開放すると発表している。 今回はFCVの無償開放の期限を30年末に延ばすとともに、電池を除く電動化技術について、幅広く無償で提供する。発表後、トヨタには数十件の問い合わせが寄せられているといい、業界がトヨタの発表に高い関心を寄せている。
 一方、ホンダは5月8日の決算会見に八郷隆弘社長が出席し、今後の事業方針を説明した。この中で今後の電動化について、中・大型車に搭載している2モーター式のハイブリッドシステム「i-MMD」を小型車にも広げていくと発表した。 小型車用に専用開発したシステムを、まず今秋の東京モーターショーで世界初公開する次期「フィット」に搭載し、順次世界に展開する。その後、他の小型車にも広げる。
 ホンダはこれまで、フィットなどの小型車には、一つのモーターを駆動と充電に使い分ける1モーター式のハイブリッドシステム「i-DCD」を搭載してきた。しかし、トヨタは「アクア」などの小型車にもプリウスと同じ2モーター式を搭載している。ホンダは2モーターハイブリッドシステムを「アコード」「オデッセイ」「ステップワゴン」「CR-V」などに搭載している。同システムを搭載することで、小型車でも走行性能と効率性をさらに高い次元で両立し、競争力を高める。搭載モデルを増やすことで、同システムのコストを22年までに18年比で25%低減する計画だという。
 トヨタとホンダは、燃費向上技術としてハイブリッドに力を入れてきた。しかし、このところ世界では、各国政府の主導により、HVを飛び越え、電気自動車(EV)に移行する機運が高まっている。中国は新エネルギー車(NEV)を一定割合生産することをメーカーに義務付ける制度を19年に始めた。米ではカリフォルニア州などがZEV(ゼロエミッションビークル)規制を強化している。いずれもHVは電動車とみなされず、トヨタやホンダには逆風が吹いている。
 こうした中でトヨタの特許無償開放やホンダのハイブリッド戦略の狙いはどこにあるのか。背景にはEVやFCVがいまだに発展途上の技術であると言う現実がある。EVは、その性能の鍵を握る電池や制御システムをさらに進化させることが必要。FCVは水素供給インフラがまだまだ足りない。そして、一般に普及するにはどちらもまだコストが高すぎる。
 トヨタの寺師茂樹副社長は、「モーターショーなどでマイルドハイブリッド車など、いろいろな電動化技術をやっていく、という各社のアナウンスが増えている。電動化に移っていく現実的な解はハイブリッドであるということを皆さんが理解している」と会見で述べた。トヨタへの問い合わせが増えており、特許を無償開放するタイミングだと判断したという。
 ホンダもEVやFCVはあくまでも規制対応のためと位置付ける。米ではゼネラルモーターズとEVのための電池コンポーネントの共同開発を行い、中国ではNEV対応目的でEVを投入する。欧州では英・仏両政府が40年にエンジン車を全廃する方針を示しており、これに対応するためのEVを日本で生産し、欧州と日本で発売する計画だ。
 ただ、トヨタの方針には懐疑的な見方もある。ハイブリッド技術はトヨタの競争力そのもの。特許無償開放が30年末までと期限もついている。何か裏の狙いがあるのでは、と勘繰られても無理はない。しかし、寺師氏は「期限を設けなくても良かったが、その頃には技術がまた進化しているかもしれず、その時に考えればいい。まずはトヨタのハイブリッド技術を使ってもらうことが目的であり、無償開放は入口に過ぎない」とこうした見方を一蹴する。
 トヨタはこれまでもハイブリッド技術を有償で提供してきた。しかし、「欲しければどうぞ。多少はお手伝いしますよ、ということだった」(寺師氏)という。今回は積極的に技術と部品を提供しようと考えており本気度が違う。寺師氏は「ハイブリッド技術を使ってもらうためのシステムサプライヤーとして、トヨタは部品や技術を提供する会社になっていく」と明言し、これまでとは異なるスタンスであることを強調した。
 車の電動化は規制によって簡単に進むものではない。フォルクスワーゲンのディーゼル排ガス不正に端を発した欧州の極端なEVへの傾倒、そして中国の産業政策としてのEV化。一方で、EVの普及は水力発電が多いノルウェーなどに限られている。EVやFCVがいつ、どれだけ普及するのか不透明な中で、着実に増えていくのはHVなのかもしれない。