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10月の消費増税、需要の動向は?


10月の消費増税、需要の動向は?

 10月に予定されている消費税率引き上げまで残すところ、あと4カ月を切った。前回2014年4月の引き上げ時の状況を踏まえると自動車にも少なからぬ影響があることが懸念されている。ただ、今のところ、明らかな駆け込み需要の兆候は見えていない。このまま無風で過ぎるのだろうか。
 自動車業界は過去の消費税導入や税率引き上げの度に需要減少に直面してきた。日本自動車工業会(自工会)によると、1997年に行われた3%から5%への引き上げでは年間101万台、2014年の5%から8%への引き上げでは同75万台の需要が失われ、その後、以前の水準には戻らなかったという。同工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は昨年9月の定例会見で、8%から10%に引き上げられると約30万台の需要を押し下げるとの見通しを明らかにし、「経済効果で約2兆円減、雇用で約9万人減の影響がある」との予測を示した。500万台レベルに需要が縮小している国内市場で30万台の需要がなくなる影響は大きい。
 一方、その後に決定した2019年度税制改正大綱では、自動車関係諸税の大幅な変更が入った。自動車税の恒久減税(10月1日以降の新規登録車が対象)や、消費税引き上げと同時に廃止される自動車取得税に代わる「環境性能割」の軽減措置(20年9月までの1年間)が盛り込まれた。
 自動車関係諸税の負担軽減措置によって、消費税引き上げによる影響には一定の歯止めがかかるとみられている。19年度税制改正を踏まえて自工会が3月に発表した19年度需要見通しは522万3400台と、18年度(3月時点の見通し=532万6千台)に比べ10万4600台のマイナスにとどまる。18年度実績は525万9587台(前年度比1.2%増)だったため、これと比較すると、消費税引き上げがあっても前年度に比べ3万6千台しか需要が減らないことになる。
 過去の経験を踏まえると、消費税引き上げの前には必ず駆け込み需要がある。当然ながら、税率が低い時に購入した方が、購入者の経済的負担が軽くなるためだ。前回14年4月の時も、1〜3月には駆け込み需要があった。しかし、今回の場合、消費増税まで4カ月を切った6月初旬でも、販売現場に特に変化は見られない。5月の新車販売台数は前年比6.5%増の39万6120台と増加したが、新元号で登録・届出をしたいユーザーの購入がずれ込んだもの、と自販連などでは見ている。
 新車販売台数に連動する中古車市場でも大きな変化は今のところない。中古車販売会社は「なぜだか分からないが、駆け込みの兆候はみられない」と話す。「14年4月の増税時は1〜3月に駆け込みがあった。今回も2%も上がるのだから影響がないはずはない」とみる。無反応の市場に「車だけでなく、全体的に買い控えが起きるのではないか」と、消費増税によって景気が後退するのではないかと不安を募らせる。
 実際に内閣府が6月7日に発表した景気動向指数は2カ月連続で基調判断を「悪化」とした。耐久消費財や鉱工業生産は上向いたが、米中貿易摩擦による世界貿易の見通しの不透明さが影響している。このまま米中が報復関税の掛け合いを続けると、世界経済への影響が長引き、日本でも景気悪化に転じるとの懸念がある。高額の耐久消費財である自動車は真っ先に影響を受ける。
 今回は自動車の需要期から外れた10月に税率が引き上げられる、ということも考慮する必要がありそうだ。ボーナス商戦という言葉は死語に近いが、年度末の2〜3月が最需要期であることは変わらない。「今回は増税のタイミングが自動車の需要が盛り上がる時期を外れているため、明らかな駆け込みという形では影響が表れないのではないか」(前述の中古車店)ともみられる。

 自動車は消費税が1%上がっただけでも、ユーザーの大きな負担増になる。それだけに、これまでの増税の際は駆け込み需要が起き、その後、市場規模の縮小という事態を招いた。今回は駆け込み需要とその後の需要落ち込みを発生させないよう、政府が自動車税の恒久減税、環境性能割の軽減、さらにはエコカー減税の見直しと、自動車関係諸税の中で巧妙な仕掛けをつくった。平準化策が奏功しているとみるか、景気後退の予兆とみるか、判断はまだつきそうにない。