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入場者数130万人、モーターショーは成功したのか?


入場者数130万人、モーターショーは成功したのか?

 2年に1度の東京モーターショー10月24日から 11月4日までの12日間開催され、前回を大幅に上回る130人という入場者記録を達成した。 来場者の落ち込みが続いていたモーターショーだが、開催コンセプトを思い切って変えたことが奏功した形だ。 これからのモーターショーはどのように変わっていくのだろうか。
 「あえて目標を掲げるなら100万人−」。モーターショーを主催する日本自動車工業会(自工会)が9月26日に開いた定例会見で豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は驚くような数字を打ち上げた。 モーターショーといえば近年、入場者数の減少に悩まされている。前回の第45回は「最先端技術を世界に発信するテクノロジーショー」を標榜し、主催者展示にも趣向を凝らしたが、入場者数は77万1千人と80万人に届かなかった。 それにも関わらず、今回100万人という大きな数字を掲げたのは、豊田会長のモーターショーへの思いがある。
 豊田氏は100万人という目標の意味について、「箱根駅伝や甲子園、よさこい、阿波踊りと、誰もが知っているイベントの目安が100万人」であると説明。 さらに 東京ディズニーランドの入場者数が日当たり9万人であることを挙げ、「テーマパークと言われるようになるには1日9万人の入場者数が必要」とし、歴史ある東京モーターショーを国民の誰もが知るイベントにもう一度していきたいという思いを語った。
 今回のモーターショーは準備開始当初より苦難続きだった。 まず、東京オリンピック・パラリンピックを20年に控え、東京ビッグサイトのメーン会場である東館は丸々使えなかった。 さらに、外国メーカーの参加はダイムラールノーのみと、何とも寂しい顔ぶれに。 出展料の高さを敬遠し、常連の部品メーカーの中にも出展を見送る企業があった。 会場は東京ビッグサイトの西館と新設の南館、そしてお台場地区と分散開催を余儀なくされたうえ、外国メーカーが出ない穴埋めとして、新たな出展者を探さねばならなかった。
 モーターショーを何としてでも成功させようと奔走したのはトヨタ自動車だ。 失敗したらボスである豊田氏の顔をつぶすことになる。
 自工会主催というよりも、トヨタ主催といってもいいような内容だったのが、お台場地区だ。 「今のモーターショーでは70万人が限界。あと30万人をどういう機軸でもってくるか―」(豊田会長)。 それが「オープンフューチャー」という主催者企画と、「こども」というキーワードだった。
 オープンフューチャーでは超小型モビリティやキックボードの体験や、未来の生活を感じてもらう企画展示「フューチャーエキスポ」を開催した。 こども向けには「キッザニア」が出展し、自動車関係の職業体験をしてもらう企画に初めて取り組んだ。 特にフューチャーエキスポは豊田氏自身が産業界に呼び掛けて実現したという。 パナソニックは家電見本市「シーテック」への出展を見送った一方で、このフューチャーエキスポに出展したことが注目された。
 ドローンや空飛ぶ車、次世代通信技術を活用したスポーツ観戦、eスポーツの大会開催など、狭い会場に雑多に詰め込んだ会場は「まるで文化際のよう」という印象を持たれたものの、異業種を巻き込んだ新たなモーターショーとして注目された。
トヨタ自身のブースも異質だった。 メガウェブ横に新設された南棟のトヨタブースは市販予定の車の展示を一切行わず、未来のモビリティや生活を表現した。 豊田社長の「車ではなく人が主役」という考えを反映したものだったという。 モーターショーを敬遠してきた家族連れやこどもが楽しめるように、ハードルを下げた格好だ。
 実は「ヤリス」などの市販車はガウェブの隣の商業施設、ヴィーナスフォートに並べていた。 控えめ過ぎて、見つけられなかったクルマファンもいたようだ。
蓋を開けてみれば、100万人という目標を大幅に上回る130万人を動員したモーターショー。 その裏にはトヨタがグループを挙げて入場者を動員したという事実もある。 トヨタのみならず、グループ各社が大量の入場券を購入した。 宣伝にもお金をかけた。 マツコ・デラックス氏を起用したテレビコマーシャルを放映し、多くの人にアピールした。
 さらに、メガウェブのフューチャーエキスポは入場料が無料で、これで入場者数が大きく膨らんだとみられる。 自工会は「入場者数のカウントが複雑」だとして、従来行っていた毎日の入場者数の発表を行わなかったという裏話もある。
 TVコマーシャルによる宣伝効果も大きかった。 西川廣人・前日産自動車社長が自工会会長として臨んだ前回、宣伝はSNSに頼り、コマーシャルもポスターもなかった。 おそらくはモーターショーが行われていることすら知らない人が多かったのではないか。 さらに悪いことに、自社の完成検査問題が直前に発覚し、モーターショー会期中は豊田氏に会長代行を依頼する破目になった。 一般公開前にはスバルの完成検査問題も発覚し、2年に1度の祭典に水を差した。
 いずれにしても今回のモーターショーに関しては、トヨタがその資金力と機動力をフルに発揮して、豊田氏の体面を保ったショーだった。 しかしながら、欧米メディアの少なさを見ても、世界への情報発信力の面での低落傾向は変わっていない。 収支を含めて成功だったといえるのかどうかは、豊田氏の次の会見での発言を待たねばならない。
 面白いのは、豊田氏が異例の自工会会長続投となることで、次回も豊田自工会のもとでの開催となることだ。 世界のモーターショーは中国を除き、どこも低調で、米のデトロイトショーはCES(家電見本市)に押されて来場者が見込めないとして、20年は1月から6月開催に変更になるほどだ。 東京が世界に先んじて新しいモーターショーの形を示すことができれば、再び世界の目が東京に注がれる可能性もあるが前途多難であることは間違いない。