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新型肺炎の感染が拡大 自動車産業への影響は?


新型肺炎の感染が拡大 自動車産業への影響は?

  中国湖北省武漢市から広がった新型コロナウイルスによる肺炎の感染者が増え続けている。 確認された感染者数は2月1日時点で中国本土だけで1万4380人を超え、死者は304人に達した。 原因不明の肺炎が武漢市で初めて確認されたと言われる12月8日から2カ月弱という期間ですでに SARS(重症急性呼吸器症候群、2002~03年、発生源:中国広東省)の感染者数を超えた。 感染の拡大は自動車産業にも影響を及ぼし始めている。

 新型肺炎は武漢市の海鮮市場で売られていた野生動物から人に感染したのが始まりだと言われている。 新型ウイルスは唾液などの飛沫の中に存在し、くしゃみや咳、会話中に飛ぶ唾などが口や鼻、目に入り感染する。 潜伏期間が長く、症状が出ない期間が長いことが特徴で、中国での急激な感染拡大は、 感染していることを知らずに歩き回って人にうつしているためと考えられている。

 新型肺炎の感染は武漢から中国全土に広がったうえ、日本など18カ国でも症例が確認されている。 日本では武漢市からの観光客を乗せたバスの運転手とバスガイド、そして日本政府のチャーター便で 武漢市から帰国した人の中にも感染していた人がいたことが確認された。 フィリピンでは2月1日、武漢市から訪れていた44歳中国人男性が死亡した。 中国国外での死亡が確認されたのは初めてという。

 中国政府による初動対応の失敗も指摘されている。SARSの時より情報公開は早かったとはいえ、 発生源となった武漢市の市民1100万人のうち半分は、1月24日の春節(旧正月)前に中国を出国していた。 感染が急速に広がり中国政府は慌てて武漢市を封鎖したものの、対応が後手に回ったと指摘されている。

 世界保健機関(WHO)の対応にも疑問符がついている。中国国内での感染者が急増し始めた1月24日時点で、 緊急事態宣言を見送ったことが批判されている。WHOは移動や渡航の制限は推奨しないとしているが、 各国では、日本政府が湖北省に滞在していた外国人の入国を拒否すると安倍晋三首相が表明するなど、 独自の対策に動き出している。

 感染が広がったことで、産業や経済への影響が懸念される事態になってきた。 各省はそれぞれ春節休暇の延期を決定。企業活動の再開時期を湖北省は2月14 日以降に、 広東省は10日以降にするなど、自動車産業が集中する省が春節休暇の延期を決めている。 自動車メーカーはこれに沿って春節明けの稼働再開時期の延期を決定。 トヨタ自動車は中国国内の全ての完成車工場(天津市、広東省)と部品工場の稼働再開時期を 10日以降にすると発表した。ホンダは武漢市の工場の春節休暇を13日まで、 広東省の工場の休暇を9日までそれぞれ延期する。マツダ江蘇省南京市の工場の稼働を10日以降に延期する。

 中国に進出している部品メーカーにも影響が出始めている。ホンダ系のケーヒン、ショーワ、 エイチワン、エフテック、ジーテクトは武漢市の工場を13日まで停止することを決めた。

 稼働休止が長引くと、中国から海外に輸出している部品への影響も出てくる。 トヨタグループのアイシン精機は日本などでの代替生産を検討していることを明らかにした。 中国国内での稼働停止が世界のサプライチェーン全体に影響を及ぼしかねない。

 中国の経済活動が停滞することによって、同国の新車販売台数にも影響が出ることが懸念される。 中国は09年に米国を抜いて世界一の市場になった。近いうちに3千万台まで拡大するというのが自動車業界の見方だ。 ただ、このところ息切れも見えてきている。19年の新車販売台数は前年比8.2%減の2576万9千台と 2年連続で前年を下回った。米中対立による経済への影響や、電気自動車などの新エネルギー車(NEV)と 呼ばれる車の販売が補助金の終了で伸びなかった。そこへきて、新型肺炎の問題が暗い影を落とす。 生産休止が長期化すれば、新車販売台数にも影響が生じる。

 中国はトヨタ、日産、ホンダだけでなく、三菱自動車やマツダといった中堅メーカーにとっても米国と 並ぶ重要な市場として存在感が増している。いすゞ自動車日野自動車といった大型車メーカーに とっても戦略的な市場であり、新型肺炎の影響は国内メーカー全体に及ぶ。

 自動車メーカーの19年度の業績はそうでなくても低調だ。米トランプ政権が発足して以降の米中対立に よる世界経済の停滞が、東南アジアなどにも広がってきたからだ。いつ終息するか分からない新型肺炎は、 自動車業界にとって新たなリスクとなる恐れが強まっている。