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2050年カーボンニュートラル 対応を迫られる自動車メーカー


2050年カーボンニュートラル 対応を迫られる自動車メーカー

 政府が2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出を実質的にゼロにする “カーボンニュートラル” 政策を打ち出した。自動車では「30年代半ばまでに乗用車の新車販売のすべてを電動車にする」と明示した。しかし、ガソリン車はいまだに新車市場の6割を占める。あと十数年で、どう電動車に置き換えていくのか。

菅政権の 50年カーボンニュートラル方針 を踏まえ、経済産業省は12月25日、「 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 」を公表した。発電、産業、民生の各部門での取り組み、あるいはカーボンリサイクルなどの多岐にわたる政策によって、50年に日本のCO2排出量を実質的にゼロとする内容だ。


この中で、自動車については、「遅くとも30年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう、包括的な措置を講じる」ことが示された。ここで言う電動車は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)、マイルドHVで、欧州や中国が電動車から除外しているHVやマイルドHVも認められた。

HV、マイルドHVも電動車と定義されたことで、自動車業界では、ほっと胸をなでおろしたところだが、事はそう簡単ではない。新車の販売動向をみると、「ガソリン車ゼロ」が、いかにハードルが高いかが分かる。

日本自動車販売協会連合会(自販連)が毎月まとめている「燃料別販売台数」によると、20年の電動車販売台数は137万7641台(前年比8.9%減)で、乗用車の販売全体に占める割合は36.2%。残る63.8%はガソリンやディーゼルといった内燃機関車となっている。マイルドHVの設定車種が増えた軽自動車は32.1%と6.8ポイント上回ったが、登録車は38.8%と2.0ポイント低下し、頭打ち感が出てきている。数多くのHVを品揃えするトヨタ自動車でさえ、電動車の割合は35.9%で、6割超はガソリン車という状況だ。

トヨタが世界初の量産ハイブリッド乗用車「 プリウス 」を1997年に発売してから24年。HVの車種も拡大してきたが、いまだにガソリン車が市場の半分以上 を占めているのは、ガソリン車の方が、価格が安いからだ。HVにはエンジンに加え、電池とモーターが搭載されていて、その分、価格が高い。一方、燃費については、ガソリン車も相応の進化をしている。価格と燃費のバランスを考えると、ガソリン車を選ぶ方が合理的だ。新車市場の6割超がガソリン車である実態を踏まえると、HVやマイルドHVが認められたとはいえ、「電動車100%」は簡単なことではない。

 日本は 省エネ法 に基づく 燃費基準 によって、自動車の燃費性能を向上してきた。ガソリン車であっても、一定の燃費性能を達成すれば、エコカー減税などの優遇措置の対象としてきた。ところが、今回のカーボンニュートラル政策でのガソリン車の扱いは、電動化ありきで方針がつくられた感が否めない。ガソリン車は英国やフランスが将来的な新車販売の禁止を打ち出している。日本政府の方針はこれらの国々に対抗した国際的なアピールとしか思えない。

 グリーン成長戦略では、EVの強化も打ち出した。「この10年はEVの導入を強力に進める」とし、「電池をはじめ、世界をリードする産業サプライチェーンとモビリティ社会を構築する」方針だ。特に軽自動車や商用車などでEVや燃料電池車(FCV)への転換に向けた対策を講じていくとしている。ただ、世界ではテスラにみられるように、高級車でEV化が進んでいる。コストが高いEVを経済性が重要な軽自動車とどう組み合わせていくのか、まだ具体的な道筋は見えてこない。

EVに関しては、日本は太陽光などの再生可能エネルギーが主要電源化しつつある欧州に比べ分が悪い。発電の77%を火力発電が占め、いくら車をEVにしても、CO2排出はトータルで見るとゼロにはならない。政府は風力、太陽光などの再エネよる発電を現在の17%(18年度)から50年に50〜60%にするとしたが、これはあくまで「今後の議論の参考」として示したものだ。エネルギー政策の転換とセットでなければ、車をいくらEV化しても、カーボンニュートラルへの貢献は低い。

ただ、脱炭素の動きは不可逆的とみられ、自動車メーカーはガソリン車をHVなどの電動車にしていくためのコストダウンを迫られる。特に電池は中国や欧州で需要が急増しており、自動車メーカー間で争奪戦になっている。いかに安く、安定的に電池を確保していくか、カーボンニュートラルへ向け、各社の調達戦略も問われることになる。




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