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トヨタが「eフューエル」に注目 その狙いは?


トヨタが「eフューエル」に注目 その狙いは?

トヨタ自動車が自動車の二酸化炭素(CO2)削減の一つの方法として合成燃料「 eフューエル 」に注目している。燃やせば二酸化炭素(CO2)が出るものの、大気中のCO2から分離する炭素を使うことによりCO2の排出を実質ゼロとみなすことができるという。世界が電動化に舵を切る中、トヨタがeフューエルに注目する理由はどこにあるのか。

合成燃料とは水素と炭素を化学反応させてつくる燃料のこと。メタノールやガソリン、軽油をつくることができる。製法は古くから存在するが、現代では材料の炭素を大気中のCO2から得ることで地球温暖化防止につながる燃料として注目されている。合成燃料のうちeフューエルと呼ばれるものは、水素もCO2を出さない製法でつくるというものを指す。

eフューエルは欧米では盛んに研究されており、日本でも2050年のCO2実質排出ゼロを目指す 「グリーン成長戦略」(経済産業省発表) に、50年までに「ガソリン価格以下のコストを実現する」ことが明記された。主に大型車での利用が想定されるが、既存の内燃機関や燃料供給インフラを活用できるため、普及可能なコストを実現できれば、乗用車での利用も十分想定される。

トヨタは豊田章男社長が水素エンジン を搭載した 「カローラ」で24時間耐久レース(富士スピードウエイで5月23、24日に開催) に参戦するなど、狠Ε┘鵐献鶚瓩寮こεな流れとは一線を画す動きを見せている。 eフューエルもその一つ。豊田氏は自身が会長を務める日本自動車工業会の会見でeフューエルに言及し、「目的は電動化ではなくカーボンニュートラルだ」と主張。「日本の複合技術(エンジン+モーター)にカーボンニュートラル燃料を組み合わせれば、 大幅なCO2削減という新しい世界が見えてくる」と訴えた。さらに車の代替には15年はかかるとし、既販車のCO2削減のためにもeフューエルが有効だと強調した。

5月に行った決算会見でトヨタは自工会会長としての豊田氏の発言をそのまま踏襲した。豊田氏は出席しなかったものの、長田准執行役員が「トヨタの方針は豊田社長が自工会会長会見で言ったことと全く同じ」と、 水素やeフューエルを含めたカーボンニュートラル燃料にチャレンジしていく方針 を強調した。

もっとも、トヨタも電気自動車(EV)に全く取り組んでいないわけではない。2020年はレクサスのEV「UX300e」を国内外で発売したほか、2030年にEVと燃料電池車(FCV)を 合わせたゼロエミッション車の世界販売を200万台に増やす方針を示した。

その一方、内燃機関を存続させる考えも明確だ。30年に世界で800万台とした電動車販売計画によると、600万台はハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)といった内燃機関搭載車となる。全ての四輪車をゼロエミッション車にする方針を打ち出したホンダとは対照的だ。

トヨタには内燃機関を存続させたい理由がある。それは自動車産業(=トヨタ)が日本の経済を背負って立っているという強烈な自負心だ。内燃機関が無くなれば、3万点と言われる自動車部品の半分が不要になると言われている。豊田氏が「日本の車が全てEVになったら雇用が100万人失われる」と言っているように、EV化の雇用への影響が小さくない。

トヨタの雇用への考え方は30年の電動化目標でも明確だ。日本では30年の電動化率を95%としているが、このうちEV、FCVは10%と地域別で最も低く、85%はHVやPHVとする方針だ。このことからも技術開発の拠点でありサプライヤーの集積地でもある日本の雇用維持を重視していることがうかがえる。

加えて、EVにすれば温暖化問題は解消するという単純な議論への反発もある。CO2の排出は製造から廃棄までのライフサイクル全体で見るべきという考え方がすでに欧州では主流になり始めている。EV、FCVは走行段階でのCO2排出はゼロだが、現状ではどの国でも発電や水素製造の段階でCO2を排出している。

eフューエルや水素にも課題はある。 経済産業省の合成燃料研究会 の試算によると、eフューエルは現状の試算で1氾たり700円というコストがかかり、今のところ商業化できる水準にはない。要因はCO2を出さない製法で作られるCO2フリー水素の価格だ。合成燃料研究会では水素のコストダウンがeフューエルを商業化する上での鍵になるとしている。

水素にはコストに加え、その特性上の課題もある。常温で気体かつ最も軽い気体であるため、運搬・充填が難しく、エネルギー密度も低い。水素を利用するなら、むしろ燃料電池に分があるとも言われている。

EV化に舵を切ることにより、欧州では主要な自動車メーカーがエンジン部品工場などでのリストラを 相次いで実施している。ゼロエミッションを急激に進めれば、日本でもサプライヤーを含め、雇用問題の発生は避けられない。eフューエルや水素には課題が多いことはトヨタも十分承知している。それでもこれらの技術に可能性があるとアピールしているのは、雇用維持なしのカーボンニュートラルはあり得ないという政府への主張だと言える。