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半導体不足が影 6月の新車販売台数が一昨年比で19%減


半導体不足が影 6月の新車販売台数が一昨年比で19%減

6月の新車販売台数はホンダ「 N-BOX(エヌボックス) 」が10カ月ぶりにトヨタ「 ヤリス 」から首位を奪った。ヤリスはSUV調の「ヤリスクロス」も含めて受注は好調だが、半導体不足による生産調整により販売ペースが鈍った。半導体の世界的な供給不足の影響は国内の新車販売にもじわじわと及んでいる。感染対策としてのマイカー見直し機運に乗って、メーカー各社は販売拡大といきたいところだが、部品供給が思わぬ足かせとなっている。

日本自動車販売協会連合会(自販連)全国軽自動車協会連合会(全軽自協) が発表した6月の新車販売台数は、登録車が前年同月比9. 2%増の23万4697台、軽自動車が同1.2%減の13万934台となり、合計で同5.3%増の36万5631台だった。コロナ禍で大きく落ち込んだ20年と比較するとプラスであるものの、コロナ前の19年との比較では18.8%減と2割近いマイナスに。登録車は19.1%減、軽は18.3%減と、いずれも落ち込んだ。

新車販売回復の足かせとなっているのが世界的な半導体不足だ。コロナ禍でリモートワークが進み、パソコンやスマートフォンの需要が急増。自動車生産の回復も相まって世界中で半導体の取り合いになっている。性能進化のスピードが速い半導体産業は、開発・設計と生産の分業化、いわゆる ファブレス 瓩進んでいる。装置産業である半導体は生産設備への投資が大きく、大量生産を追求しなければ、コストで太刀打ちできないからだ。そこで台湾や韓国の受託製造会社に生産を委託する半導体メーカーが増え、世界的な一極集中の状況をつくりだしていた。そこへ需要が急増し、生産能力不足を起こしているという状況だ。

自動車は半導体の奪い合いの中で分が悪いと言われる。それはパソコンやスマートフォンに比べ、使われている半導体の世代が古く、半導体メーカーにとっては利幅が小さいため だ。このため限られた生産能力を 5G(第5世代移動通信システム) 向けなど、より利幅の大きい最新型の半導体向けに振り向けがちとなり、自動車用が後回しになっているという。

半導体を確保できるかどうかは、自動車メーカーの調達力によっても異なり、それが販売実績にも表れている。6月のブランド別新車販売は、ホンダが前年同月比1.4%減、日産自動車が同22.6%減、スズキが同18.8%減と軒並みマイナスとなった一方で、トヨタは16.3%増だった。トヨタはグループにデンソー、アイシン、ジェイテクトなど、規模の大きな部品メーカーを従えている。生産・販売台数も1千万台規模と他メーカーの2倍以上であることから、他メーカーに比べ調達面で有利と考えられる。販売計画を必ず達成する信頼感も部品の安定調達を可能にしている。

 ただ、トヨタも楽観的でばかりはいられない。今年度の生産・販売計画にそれほどの大きな影響はないとみているものの、リスクもないわけではない。7月16日には2度目となる国内工場での稼働停止を発表した。高岡工場を8月2〜6日までの5日間停止する。「カローラ」など9千台の生産に影響が出る。トヨタは6月にもトヨタ自動車東日本の岩手工場を3〜8日間停止し、「ヤリス」「ヤリスクロス」「C−HR」に影響が出た。トヨタホームページによると、ヤリスの納期は4カ月(ハイブリッド車は半年)、ヤリスクロスは5〜6カ月と通常より大幅に伸びている。

ルネサスエレクトロニクス那珂工場(茨城県ひたちなか市)の火災 も自動車向け半導体不足に拍車をかけている。3月19日に起きた火災からの復旧を急いでいた同工場では、6月24日夜に生産水準がようやく火災前に戻った。出荷水準が火災前の水準に戻るのは7月第3週になるとしている。ルネサス火災の影響は米国メーカーに広がっており、正常化後は取り合いになるのが必死だ。

 産業のコメとも言われる半導体。国内での調達を増やすための動きを政治の世界も始めている。自民党は甘利明税制調査会長が会長を務める「半導体戦略推進議員連盟」を5月立ち上げた。安倍晋三前首相と麻生太郎副総理兼財務相が最高顧問につき、半導体分野での日本の存在感を再び高める政策を提言していくという。

 半導体と同じような現象は電動車向けのリチウムイオン電池にも起きかねないと指摘されている。欧州、中国、米国では自動車の電動化が急速に進む見通しであることから、リチウムイオン電池が不足するとみられている。このため、自動車メーカーは電池メーカーの囲い込み競争を繰り広げている。トヨタやホンダも中国の 寧徳時代新能源科技(CATL) と提携。日産は英国工場の隣接地に中国電池メーカーの エンビジョンAESC と共同で電池工場を建設する。

電池をめぐっては、欧州委員会が地球温暖化防止のための計画「 グリーンニューディール政策 」で電池工場に巨額の投資を行う計画を示しており、大規模な電池工場の建設計画が相次いでいる。欧州委はさらに7月14日、温室効果ガスの削減に向けた包括案の中で、ハイブリッド車を含む内燃機関車の新車販売を2035年に禁止する方針を打ち出した。自動車メーカーは電動化、中でも電気自動車(EV)化を一段と推進する必要性に迫られることになる。

 コロナ禍で感染リスクの小さい移動手段として見直されている自動車だが、半導体不足という思わぬ事態が販売の回復を遅らせている。さらには電動化の肝となる電池にも同じような現象が起きる可能性がある。半導体と電池を押さえることがメーカーの重要な調達戦略となりそうだ。