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政府、カーボンニュートラルの具体策を発表


政府、カーボンニュートラルの具体策を発表

 経済産業省は6月、2050年のカーボンニュートラルに向けた「 グリーン成長戦略 」の具体的な取り組みを発表した。自動車では商用車の電動化スケジュールを示すとともに、車載用電池の国内生産能力を100ギガ瓢まで高める方針を新たに加えた。ユーザーが電動車に転換するための施策を実施するほか、給油所や整備工場が電動化に対応するための業態転換や事業再構築を後押しすることも記した。

 戦略は菅義偉首相が20年10月に宣言した「50年のカーボンニュートラル実現」に向け、経産省が同年12月に初めて公表したもの。今回は、各分野の取り組みを深掘りし具体化した。自動車分野は前回、「乗用車の新車販売を2030年代半までに100%電動車(電気自動車、燃料電池車、ハイブリッド車、
プラグインハイブリッド車)とする」としていたが、今回は「2035年まで」と年限を明確に示した。

 新たに追加した主な項目の一つが、商用車の電動化スケジュールだ。車両総重量8徹焚爾両ν兌屬30年までに新車販売の20〜30%を電動化し、40年までには合成燃料などの脱炭素燃料が適した車両と合わせて100%を目指すとした。同8田兇両ν兌屬任20年代に5千台の先行導入を目指し、30年までに40年の電動車の普及目標を策定するという。電動車の定義は乗用車同様、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)としている。

 電動化を推進するため、充電・水素充填インフラを拡充する。充電インフラについては、給油所への 急速充電器 1万基の整備など、公共用急速充電器3万基を含む15万基を設置し、遅くとも30年までにガソリン車並みの利便性実現を目指す。充電設備の普及が遅れている集合住宅への導入も促進する。水素充填インフラは30年までに1千基程度を人流・物流に考慮しながら整備する。

 電動車の導入・買い替え促進策、税制の抜本的な見直しを行うことも明記した。高速道路利用時のインセンティブなども導入することにより、一般道路から高速道路への交通転換による排出ガス削減や電動車の普及を図る。国立公園などの駐車料金減免も検討する。ただし、軽自動車や商用車は電動車への転換がより難しいことを踏まえ、対策を検討するとした。

 サプライチェーンやバリューチェーンの電動化対応にも取り組む。中小サプライヤー、自動車販売店、整備事業者、給油所など自動車関連産業の電動化対応・業態転換・事業再構築と、それを支えるデジタル開発基盤を構築する。電池やモーター、その材料については一定以上の規模を持つ生産拠点の国内立地を図る。

 具体的には、エンジン部品のサプライヤーが電動車向け部品の製造など新分野に挑戦することや、給油所・整備工場が、地域の新たな人流・物流・サービス拠点・電気自動車(EV)ステーション化することなど「攻めの業態転換・事業再構築」をすることを後押しする。サプライヤーに対しては、技術開発、設備投資、人材確保・活用・育成を支援する。製造プロセスのカーボンニュートラル化や事業転換を支援するための体制構築や企業間連携・再編を含む環境整備を行う。

 自動車販売店や整備事業者については、電動化に伴う車両の構造変化に対応した設備投資・人材育成、整備事業の効率化・生産性向上に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)投資などを後押しする。またMaaS(サービスとしてのモビリティ)などを活用した新たなサービス展開や蓄電池劣化評価の取り組みなどを通じ、中古車市場の魅力を向上する。

 給油所に対しては、EVやFCVへのエネルギー供給や合成燃料の供給も担えるよう、「総合エネルギー拠点化」や経営多角化など事業再構築を後押しする。

 ユーザーによる電動車の選択・利用を促進するため、自動走行・デジタル技術の活用や道路・都市インフラとの連携に取り組む。車内の情報処理量の増加は電動車の走行距離に影響を与えることも指摘されているため、自動走行と電動化を両立するよう、先端半導体などを用いた高度なセンサー・コンピューター類、車載ネットワークシステム、デジタル開発基盤などの研究開発を行うとした。

 燃料のカーボンニュートラル化にも取り組む。大気中の二酸化炭素(CO2)から分離した炭素と、再生可能エネルギーで生成した水素「 グリーン水素 」を合成することにより、製造から使用まで、CO2の排出が実質ゼロとみなせる 合成燃料(eフューエル) の普及を図る。 電気・水素エネルギーへの代替が困難なモビリティ・製品がある限り、液体合成燃料は存在し続けるとし、コストと製造技術の確立に取り組むことにより40年までに自立商用化し、50年にガソリン価格以下のコストが実現を目指すとした。

 新たなエネルギー基盤として位置付けたのが「蓄電池」だ。当面は車載用蓄電池の市場が成長し、再生可能エネルギーの普及につれ定地用蓄電池のニーズも拡大するとして、蓄電池産業の競争力強化の総合的な戦略が必要とした。

 車載用電池の取り組みとしては、電動化時代にも国内自動車製造の安定的な基盤を確保するため、30年までのできるだけ早い時期に、国内の車載用電池生産能力を100ギガ瓢まで高めるとともに、材料を含めた大規模模投資を促すとした。スケール化や技術力向上により、30年代のできるだけ早い時期に、車載用電池パックの価格を1銑瓢当たり1万円以下とし、EVとガソリン車の経済性を同等にするという。

 欧米では7月14日に欧州連合がHVを含む内燃機関車の新車販売を35年に禁止する方針を打ち出し、8月5日には米国のバイデン大統領が30年までに新車販売の半数をEV、PHV、FCVとする方針を示した。どちらも日本メーカーが得意としているHVは電動車の定義から除外し、内燃機関は終わらせていくというメッセージを示した。

 日本のグリーン成長戦略は、軽自動車で搭載が進みつつあるマイルドハイブリッドを含むHVを容認している。航続距離や価格、充電時間、充電インフラの不足といった課題があるEVについては、今後10年で導入を強力に推進するとしているが、実態上はHVが大半を占めるとみられる。

 コスト面で高いハードルがある合成燃料を柱の一つに据えたのも、内燃機関を存続することで自動車の利便性を維持するとともに、部品産業も含めた雇用を維持したいという意図があるためだ。欧米に比べ総花的とも言えるが、「目的はカーボンニュートラルであり、電動化ではない」という、トヨタ自動車をはじめとした自動車業界の主張を色濃く反映した内容だと言える。