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合成燃料の官民協議会が発足


合成燃料の官民協議会が発足

  合成燃料 の実用化に向けた官民協議会が9月16日に発足した。2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)に向け、政府が掲げた取り組みの一つであり、協議会には石油、船舶、自動車の各業界団体と関係官庁が参加する。合成燃料はエンジンをそのまま使えることから、電動化と並ぶ脱炭素の切り札として自動車業界でも期待が高まっている。一方、実用化には高いハードルがある。

 合成燃料とは炭素と水素を化学反応させてつくる炭化水素を指す。経済産業省の「 合成燃料研究会 中間取りまとめ 」によれば、その種類は大きく気体(メタン)と液体に分かれ、液体はメタノール合成によってつくられるメタノールと、フィッシャー・トロプシュ(FT)法によってつくられるガソリンや軽油などの混合物に分かれる。

  FT法 は1933年にドイツで発明されたもので、実際に第二次世界大戦中、燃料不足のさなかに自動車用ガソリンの製造に使われた。合成燃料は燃やせば化石燃料と同様、二酸化炭素(CO2)が発生する。しかし、大気からCO2を回収し、そのCO2から炭素を取り出すことにより、燃焼時の排出分を相殺できる。欧州で研究が進んでおり、 一部で実用化もされている。日本で行われているレースの スーパー耐久シリーズ では、トヨタ自動車が欧州製の合成燃料を使って走行した。

 自動車業界にとって合成燃料の一番の良さは、今使っているエンジンをそのまま活用できることだ。EVシフトが進むとエンジンが不要になり、エンジンやその周辺の部品をつくる部品メーカーの存続に関わる。雇用問題にもなりかねないため、日本や欧州の自動車業界では、EV一辺倒の温暖化対策に異を唱えている。

 同じ非化石燃料の水素と比較してもメリットは多い。常温で液体のため扱いやすいうえ、エネルギー密度が高い。エンジンを生かしながら、脱炭素化できる夢のような燃料と言える。

 だが、事はそう簡単ではない。今回の研究会の名称は「 合成燃料(eフューエル )の導入促進に向けた官民協議会」とある。この「eフューエル」というのは、合成燃料の中でも、温室効果ガスを出さずに製造された水素、いわゆる「グリーン水素」を用いたものを指す。太陽光などの再生可能エネルギー由来の電気で水を分解してできる水素がグリーン水素だ。

 この水素のコストがeフューエル実用化の大きな課題と言われている。合成燃料研究会によれば、国内の水素を活用して製造する場合、価格は1氾たり700円にもなる。再エネ価格が安い海外でつくった場合はその半分の350円だが、それでも現在のガソリン価格に比べれば大幅に高い。実用化に向けては、この水素コストをいかに下げられるかが鍵になる。

 大気中のCO2を回収・分離する技術も従来技術ではコストが高いため、技術革新が必要だ。工場から排出されるCO2は比較的濃度が高いため、回収技術は実用化されているが、大気中のCO2は濃度が低いため、効率的に回収する技術を開発する必要がある。

 50年のカーボンニュートラルを達成するために政府が策定した「 グリーン成長戦略 」では、eフューエルの価格を「50年にガソリン価格以下」にすることを目標に掲げている。その前段として、「大規模かつ高効率な製造技術を30年までに確立」し、「40年までの自立商用化を目指す」としている。日本自動車工業会はEVだけでなく、多様な技術を探るべきとして、エンジンの存続に道を開く政府の方針に賛同している。

 eフューエルが本当に自動車用燃料として商用化できるかどうかについては懐疑的な見方も多い。あまりにもコストがかかりすぎるからだ。そんなことに時間を費やすよりも、さっさとEVにしてしまえば走行中CO2は即、ゼロにできる。メルセデス・ベンツ、 アウディ、ゼネラル・モーターズ、ホンダなどはEV専業メーカーになることを早々と宣言した。

 とはいえ、EVにも一長一短があり、普及にはまだまだ時間がかかる。電池材料に使う資源の問題もあり、コストも上昇している。一方で気候変動はすでに現実化しており、温暖化の問題をEVだけで解決することはできない。当面は古い車を燃費の良い最新のガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車に置き換えていくといった現実的な対策が必要だ。

 eフューエルはエンジンを脱炭素化するための技術であり、実用化されれば実効性の高い温暖化対策になる。ハードルは高いが、実現に向けて、取り組みを進めていく意義は大きい。