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ビッグモーターの保険金詐取問題、業界への影響は?


ビッグモーターの保険金詐取問題、業界への影響は?

中古車販売大手のビッグモーターが保険金を不正請求していた問題は、一線を越えた信じがたい問題行為が明るみに出て、複数の省庁が調査に乗り出す事態に発展している。1社の不祥事にとどまらず、中古車販売や修理・整備といった業界全体のイメージを落としかねない状況だ。

社員の内部告発と外部調査委員会の報告書で明らかになったビッグモーターの驚くような問題行為の実態。それまでは一部の経済誌や通信社、業界紙が報道していたが、7月上旬に報告書の全文が明らかになると、報道は一気に拡大した。ゴルフボールで顧客の車体を傷つける、ヘッドライトを割るなど、修理売上を増やすためにエスカレートした行為の実態が伝わり、民放もあの有名なCMを打ち切って報道に加わった。急速な事態の展開により国土交通省が聞き取り調査をする方針を固めたことで、同社はついに記者会見を開く事態に追い込まれた。

7月25日に行われた会見は、兼重宏行社長の世間離れした感覚と、ずさんな組織運営を露呈する形となり、不正は起こるべくして起こったという印象をぬぐえないものだった。同社は会見の場で兼重社長と、長男で副社長の宏一氏の辞任を発表したものの、兼重家が所有する資産管理会社による100%出資という形は変わらない。これで本当に会社が変わるのかという疑念は残ったままだ。

報道の拡大に伴い、損保会社の責任を問う声も大きくなっている。保険金を請求される側の損保が、水増し請求に気付かないはずはないという疑念からだ。実際、同社と取引があった損保各社は、損害保険ジャパンの37人を筆頭に、ビッグモーターに出向者を派遣してきた。車体に傷を付けられる、保険等級が下がるなど、保険契約者が不利益を被る行為に厳しく対処できなかったのは、ビッグモーターが中古車の買い取り・販売の最大手で、自賠責保険や自動車保険を大量に売ってくれる重要な代理店であったからだと指摘されている。ビッグモーターの行為は、損保との歪んだ相互依存関係がもたらした保険金詐取であり、社会的な批判は免れない。

ビッグモーターの問題は複数の省庁にまたがって影響が広がっている。国交省は同社への聞き取り調査の2日後、道路運送車両法上の問題がないかを確認するため、全国34の店舗に立ち入り調査を行った。金融庁は損保7社に法律に基づく報告を求める報告徴求命令を出し、契約者保護の観点から問題がなかったかを調べる。消費者庁は、現場社員による通報を黙殺したことを問題視し、ビッグモーターに報告を求めている。

国民生活センターには、ビッグモーターに関するトラブルが22年度に1491件と13年度の5.7倍の 件数が寄せられていたことも明らかになった。報告書や会見で明らかになった内部統制・企業統治能力の欠如、 コンプライアンス軽視、現場無視といった経営実態からみて、板金塗装部門以外でも問題が出てくることは容易に予想される。

有識者などからは、自動車販売店が保険を売れないようにする法改正が必要ではないかとの声が出始めた。損保会社と保険代理店の相互依存関係が、保険契約者にとっては不利益になる可能性があるからだ。保険販売は中古車、車検、整備、部用品販売と並んで、車両販売会社の重要な収益源だ。自動車販売店が保険代理店を兼務できなくなれば、中古車、保険、部品・用品で利益を上げてきた新車ディーラーにも大きな影響が及ぶ。

さらに懸念されるのは、業界全体のイメージダウンだ。あれだけ大々的にCMを展開しておきながら、自動車ユーザーの信頼を裏切る行為が平然と行われていた実態が明らかになり、中古車や修理、整備業界全体への印象が悪化しかねない。将来の業界の担い手である人材の獲得にも影響する恐れがあり、人材不足が懸念されている整備業界にとって大きな痛手だ。

不正が明るみに出てから、同社の販売、買い取り台数は半減しているという。新規出店の計画も停止し、収益は今後、急激に悪化するとみられる。それに伴う取引先への影響も懸念される。帝国データバンクによると、同社の取引先は410社あり、自動車部品・付属品卸業、店舗建設に関わる建設業が上位を占める。ビッグモーターとの取引による売上高は合計224億円に上り、同社の資金繰りが悪化すれば、これらの企業にも影響が出る。

ビッグモーターは非上場会社のため、情報開示には消極的で、広報担当も存在せず、メディアの取材にもほとんど応じてこなかった。そうした態度が回りまわって今回の事態を招いたとも言える。もっと問題なのは、自動車ユーザーに広く影響を及ぼす保険という仕組みの中で行われた詐欺的行為がこれまで放置されてきたという事実だ。内部通報ももみ消され、多くのユーザーが被害に遭ってきたとみられる。今後も同じようなことが起こらないとも限らず、消費者保護と業界の信頼回復の観点から、二度とこのようなことが起きないよう行政や業界を挙げた仕組みの見直しが求められる。

 




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