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トヨタやホンダでも型式認証不正 制度の行方は?


トヨタやホンダでも型式認証不正 制度の行方は?

 国土交通省は6月3日、トヨタ自動車ホンダマツダなど自動車メーカー5社で、型式認証制度における不正行為があったと発表した。ダイハツ工業の認証不正を踏まえ、同省が社内調査を指示していた。とどまることのない不正の発覚に、自動車業界の信頼がまたも揺らいでいる。

 国交省は、日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機のトヨタグループ企業で相次いだ認証不正を踏まえ、2024年1月末、型式指定を取得している自動車メーカーなど85社に、過去10年分についての調査と報告を指示した。

 発表によると、85社中、これまでにトヨタ、ホンダ、マツダ、スズキヤマハ発動機の5社・36車種で不正が確認された。不正な検査が行われていたのは、乗員保護・歩行者保護、騒音、エンジン出力などの検査で、型式認証制度で定められた方法と異なる方法で検査していたというものだ。

 不正な手段で認証を取得し販売された車の台数は、現行車種・生産終了車種合わせ、トヨタが165万7千台、ホンダが325万台、マツダが14万9千台、スズキが2万5千台、ヤマハ発が7400台に上る。いずれも、保安基準は満たしており、安全性に問題はないとしている。

 トヨタ、マツダ、ヤマハ発では、現行生産車6車種も含まれている。  トヨタは「カローラ フィールダー」「カローラ アクシオ」「ヤリスクロス」、マツダは「ロードスターRF」「マツダ2」、ヤマハ発は「YZF-R1」が該当し、国交省が、これらの車種の出荷・販売停止を命じた。

   

特にヤリスクロスは、20年7月の発売からこれまでに累計36万台を販売した人気車種で、出荷・販売停止の影響が大きい。どの車種も国交省は職員立ち合いの下、改めて型式認証試験を行う予定だが、出荷・販売再開の許可がいつになるのかは未定で、サプライヤー、ディーラー、ユーザーが影響を被る。

 自動車業界では、16年に三菱自動車、スズキの燃費不正、17年には日産自動車スバルの完成検査問題と不正問題が相次いだ。業界の信頼を揺るがす問題が明らかになりながら、22年3月に日野、23年3月に豊田自動織機でエンジン認証不正がそれぞれ発覚。ダイハツの認証不正も明らかにになった。今回、トヨタなど5社でも、同様の不正が判明したことにより、自動車業界の自浄作用の無さ、順法意識の低さが指摘されている。

 3日にそれぞれ会見したトヨタ、ホンダ、マツダの首脳からは、謝罪の弁が相次いだ。トヨタの豊田章男会長は「認証制度の根幹を揺るがす。やってはいけないことをしてしまった」と深々と頭を下げた。ホンダの三部敏弘は、「ホンダは数十年前から、開発・生産分野から独立した『認証法規部』で認証試験を行ってきたのに、本来、こういうことがあってはならない」と、再発防止を徹底する考えを示した。マツダの毛籠勝弘社長も「経営として重く受け止める。信頼を裏切ることは痛恨」と、沈痛な面持ちで陳謝した。

 3社は、いずれも基準より厳しい条件で試験しており、隠蔽や改ざんといった悪質性はなかったとしている。しかし、そうであっても、本来は定められた方法・条件で行った試験の結果をもって申請をしなくてはならない。それを怠ったことは事実であり、いくら厳しい条件で試験したからといっても、言い訳にしかならない。

 ホンダの三部社長は、「ワースト(最も厳しい)ケースで保証すれば問題はないという考えが、現場の判断でまかり通っていた」と話す。ダイハツのように認証現場に過度なプレッシャーがあったという見方は否定しながらも、「認証業務を効率化したい、できるだけ再テストをしたくない、という意識もあったと思う」とし、コスト意識が認証部門にもあった可能性を示唆した。

 会見では、型式認証制度自体の見直し議論を誘導するような質問も出た。トヨタの豊田会長は、「私が今ここで言うべきことではないが」と前置きしながらも、「認証制度は内容があいまで、担当者により解釈が異なる。仕向け地ごとにやり方やルールも異なる。日本で認可された車が世界で最も厳しい認証を通っているという形になれば最もシンプル」と持論を展開した。その上で、「今回の件を自工会内で共有し、当局と議論するきっかけにできるといい」との考えを示した。  豊田氏の言い分には一理あるとはいえ、このタイミングでのこの発言は、ルールを守れないから守れるように変えてくれというように聞こえる。

 国交省は型式指定制度での不正行為を無くすための方策を議論する官民での検討会を4月に開始し、今夏にも結論を得るという。今回の不正発覚が議論にどう影響するのか、国交省が出す方針が注目される。







 




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