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自動車業界の勢力図に異変 苦戦する日米欧メーカー コロナ禍を経て自動車業界の勢力図に変動が起きている。世界最大の自動車市場である中国で日米欧自動車メーカーが苦戦。欧州では伸びが鈍化している電気自動車(EV)への投資が足かせになり始めた。日本では 日産自動車 の業績が今期、急激に悪化。今春策定したばかりの中期経営計画を早くも修正する事態に追い込まれている。 2020~23年まで続いた新型コロナウイルスの世界的な蔓延では、自動車産業にも大きな影響が及んだ。半導体不足が長引き、自動車メーカーは、需要はあるのに供給できない、という状態に追い込まれた。半面、自動車の希少価値が上がり、中古車の価格が異常に高騰。メーカーはディーラーでの値引き原資となる販売奨励金を積まずとも、車が売れる状態になった。この現象によりメーカーの採算は図らずも改善し、コロナ禍2年目以降は、意外にも好決算をたたき出したメーカーが少なくなかった。 日産もその一社だった。日産の業績はコロナ禍前の19、20年度は赤字だったが、コロナ禍真っ最中の21年度に黒字化。22年度は営業利益率3.6%、23年度は4.5%にまで回復した。
ところが今年度は状況が一変。24年4~9月期の営業利益率は0.5%に急落した。年間予想でも営業利益率は1.1%と、前年度の4分の1に低下する。 たまらず日産は、リストラ策を発表。 世界の人員を9千人削減するほか、余剰となっている生産能力を20%削減するリストラ策を発表した。 日産の業績を急降下させたのにはいくつか原因がある。その最も大きなものは、コロナ禍が終わり、新車の供給が正常化したことだ。自動車の価値は通常に戻り、売るためのインセンティブが復活。米国ではメーカー各社とも1台当たりインセンティブが増加している。日産も同様で、これが収益悪化の一因になっている。 日産の主力市場である中国での販売台数も急減している。悪いことに、中国車の輸出も増加。その行先は、東南アジアや中南米、中近東といった日本車の強かった市場で、中国車が日本車のシェアを奪い始めている。日産はその格好のターゲットとなり、影響を受け始めている。 さらに日産を追い詰めているのは、米国でハイブリッド車(HV)を販売していないことだ。米国では急速にHVのシェアが上昇している。トヨタ自動車やホンダといったHVの強いメーカーは台数が伸びているが、ここでも日産は不利な状況となっている。日産はカルロス・ゴーン時代に商品への投資に消極的だったほか、電動化はEVに傾注し、HVを軽視してきた。そのツケが回ってきた形だ。 苦境にあるのは日産だけではない。世界に目を転じると、欧州の自動車業界も厳しい。世界販売台数でトヨタに次ぐ2位のフォルクスワーゲン(VW) は、欧州でのEVの販売低迷に加え、中国でのシェア低下を背景に、ドイツ国内での工場閉鎖と人員削減を計画しており、労働組合が反発している。 VWの不振により、ドイツのメガサプライヤーも相次ぎリストラを発表した。ロバート・ボッシュはソフトウエア部門の3500人を含む5500人の削減を発表。シェフラーは4700人、ゼットエフは最大1万4000人を削減する。コンチネンタルは自動車部門の分社化を検討しているほか、タイヤのミシュラン は低価格の中国製・韓国製タイヤとの競争激化を背景に、フランス国内の2工場を閉鎖すると発表、1250人に影響が出るという。 日産とVWの業績悪化に共通するのは、中国車の台頭だ。 日産の場合は米国でHVを品ぞろえしていないこと、VWの場合は欧州でのEVシフトの鈍化が加わった。日産はシリーズハイブリッドシステム「 eパワー 」を搭載した車を米国にも投入するとしているが、 このシステムは米国の大型モデルには向かないとの指摘もあり、即、商品競争力の向上につながるのかは不透明だ。VWは政府のEV支援終了が原因とはいえ、ディーゼル排ガス不正に端を発した急速なEVシフトが裏目に出た形だ。 日産以外の日本勢も中国では苦戦している。今年1~11月までの累計では、トヨタが前年同期比2.0%減の172万2100台、日産が同20.7%減の69万4895台、ホンダが同13.5%減の106万8383台と全社が前年同期を下回っている。ホンダは中国合弁会社での生産能力削減と人員削減を計画している。中国では自動車の電動化・知能化が進み、BYDをはじめとした新興メーカーが多数生まれており、中国で日本車が再び競争力を高められるかは微妙だ。中国市場で起きていることが世界に広がれば、日本車のシェアはグローバルに低下する恐れが指摘されている。 ただ、見方を変えれば、EVが踊り場にある今こそ、日本メーカーが強みを持つHVでシェアを死守するチャンスと言える。米国ではトランプ次期政権下でEVシフトはさらに鈍化するとの見通しがある。その間に、電動化・知能化の技術でどれだけ中国勢にキャッチアップできるのか。それが将来の日本車の動向を左右するカギになる。 |
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