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トヨタ、日産が残価設定型ローンを強化


 自動車メーカーが残価設定型ローン(残価型ローン)を強化している。3年後、5年後のその車の残価を設定し、これを車両販売価格から差し引いた額でローンを組むという残価設定型ローン。通常のローンに比べ、月々の返済負担が軽くなるというメリットがある。新車の売れ行き不振に手こずるメーカー、販売店の間で、残価設定型ローンが販売回復の一助になるとの期待感が広がっている。

 残価型ローンは『車は欲しいが経済的な余裕がない』などの理由で、車の購入をあきらめているユーザーに適した購入方法といえる。ライフスタイルの変化に応じ、車のタイプを変えていきたい、というユーザーにも適している。3年、5年といったローン期間終了後は、新車への乗り換えのほか、残価部分の支払いを継続してそのまま乗り続けることができる。あるいは、車が不要になれば、ディーラーに返却することができる。

 残価型ローンは、輸入車ディーラーでよく使われるが、国産ディーラーでは、一部のディーラーをのぞいて、ほとんど浸透していなかった。中古車になった途端、価値が大幅に下落する国産車の場合、輸入車のように高い残価率を設定することが通常は難しいからだ。設定した残価に対し、実際の価値が下回ってしまった場合は、その差額分はディーラーの負担になってしまい、ディーラーにとってリスクが高い。逆にリスクを回避するため、設定する残価率が保守的になりすぎると、ユーザーのメリットが薄くなるなど、残価設定の難しさがあった。

 登録車の市場が昨年2年連続マイナスになり、シェアトップのトヨタでさえも、昨年9月以降、7月まで前年比マイナスが続いている。トヨタはマイナスが続く市場の現状を深刻にとらえ、残価型ローンの本格導入に動き始めている。新聞などでの広告宣伝を行い、残価設定型ローンの認知向上、利用拡大に向けた取り組みを本格化し始めた。

 さらに、グループの販売金融会社、トヨタファイナンスと共同で「新残価システム」を開発し、トヨタ販売店への展開を始めた。同システムは、自動車リース会社向けに自動車の残価データを蓄積・提供する専門会社と共同開発したもの。実際の中古車相場をもとに残価率を割り出すもので、新残価システムでは、これまで設定していた残価率に比べ、全車種の平均で10%程度高い残価率を設定できるという。トヨタ車の販売に占める残価設定型ローンの利用率は昨年で約5%。トヨタは、これを09年には10%まで引き上げる計画という。トヨタファイナンスでは、すべてのトヨタ車を対象に新残価システムによる残価率を設定し、ディーラーの要請に対応していく方針だ。

 日産自動車も残価設定型ローンの拡大に乗り出している。適用車種を従来の15車種から27車種に拡大し、より幅広い車種で同ローンを利用できるようにした。新たに「ティーダ」「ノート」「キューブ」「マーチ」などのコンパクトカーに適用し、販売台数の多いボリューム層で利用拡大を図る。

 日産は「エルグランド」「セレナ」などのミニバン、「フェアレディZ」「デュアリス」などのスポーツ・SUV系、「モコ」「オッティ」「ピノ」など軽自動車にも残価設定型ローンを設定している。新聞などでの広告宣伝も、トヨタ同様に積極化しており、ユーザーへの認知向上を図っている。

 残価設定型ローンはディーラーにとってもメリットがある。自社で売った車は、3年後、5年後といったローン期間終了後、必ず自社に戻ってくるからだ。中古車の買い取りは専業者が強いうえ、代替期間の延長で、ディーラーには、自分が売った車が戻ってきにくいという状況になっている。このため、中古車の品揃え不足を訴えるディーラーが多いという。

 メーカーも中古車の買い取りに参入したものの、専業者の脅威になるほどの実績が上がっていない、というのが実情だ。残価型ローンなら、新車を売った時点で数年後には自社に戻ってくることが保証されるようなもの。バリューチェーンの強化による収益機会の拡大が一段と必要なディーラーにとって、残価型ローンの貢献は小さくないといえそうだ。ただ、いかに利便性の良いローンがあっても商品がなくては意味がなく、メーカーには、魅力ある新商品の投入が一段と求められていくことになりそうだ。

                                                  (図を、クリックすると大きくなります。)