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VWとスズキが包括提携



独フォルクスワーゲン(VW)とスズキが9日、包括提携することで合意したと発表した。VWがスズキに発行済み株式の19.9%出資する。VWから提携を提案してきたもので、インドで5割のシェアを持つスズキと提携することで、VWは成長が見込まれるインドでの販売拡大に向けた基盤強化を狙う。スズキは経営再建中のゼネラルモーターズ(GM)との提携を解消したばかりで、環境技術などで協力できる新たなパートナーとの提携が必要だった。
リーマンショックの痛手が比較的小さかったVW、低コスト体質が定着しているスズキはいずれも財務基盤が健全。両社のニーズははっきりしており、提携はおおむね好感を持って受け止められている。
両社は提携により、ハイブリッド車や電気自動車などの環境対応車、部品共通化による低コスト化、新興国戦略などで相互補完を図っていく方針。スズキの鈴木修会長兼社長は「やるべきことはたくさんある」としており、今後の両者の話し合いで優先順位をつけて取り組んでいく。来年80歳を迎える鈴木会長にとってGMに代わるパートナーをこの時期に得られた意味は大きい。
VWは約2000億円を出資しスズキが自社で保有する金庫株を2010年1月に取得する。出資比率を20%とせず19.9%としたことで、スズキの経営上の独立は保たれる。スズキは自主独立を強調するため、自らもVW株を取得する。VWが出資する半分の額(1000億円)を拠出する予定で、VWへの出資比率は2.5%程度になる。一部報道でVWはスズキを子会社化するとの情報もあったが、鈴木会長、来日したVWのヴィンターコーン取締役会会長ともにこれを否定した。
スズキは、提携先だったGMの経営悪化のあおりを受け、一時は20%の出資を受けていたGMとの資本関係が2008年末までに解消された。09年12月4日には、カナダのGM合弁会社、カミ・オートモーティブ(オンタリオ州)の保有株全株をGMカナダに譲渡。VWとの提携は、GMとの関係を完全に清算した直後に発表された形だ。VWは欧州最大の自動車メーカーだが、中国やブラジルといった新興国でも高いシェアを持っている。次に攻略すべき市場はインドであり、リーマンショック後に先進国の需要が大幅に落ち込んだのを契機に、スズキに目をつけたと見られる。
スズキは1982年にインド政府と四輪車の合弁生産で基本合意し83年に合弁会社、マルチ・ウドヨグ社で生産を開始した。その後、2002年に子会社化し、現在はマルチ・スズキ社として小型乗用車・商用車を生産している。マルチ・スズキのインドでのシェアは50%を超えており、欧米や日系他メーカーが追随できない圧倒的な強さを誇る。VWはこれまで欧州メーカーを傘下に加えることでグループの規模を拡大してきた。日本メーカーと資本関係を結ぶのは初めてで、アジアや新興国が自動車メーカーにとり重要な戦略市場になってきたことを物語っている。
自動車が発明されてから一貫して自動車需要の中心だった先進国ではリーマンショック後に需要が激減、新興国への需要シフトが予想以上に早まった。新興国向け車は一段と低コスト化することが必要。一方、地球温暖化やエネルギー問題に対応するための環境技術開発は自動車メーカーにとって避けられない課題となっている。スズキとVWの提携は、リーマンショックを境に、自動車メーカーの提携の構図が、新興国戦略や環境対応といった軸で変わっていくことを象徴している。